【浅羽としやのICT徒然】第11回 2014年はSDNのリアル元年に | RBB TODAY

【浅羽としやのICT徒然】第11回 2014年はSDNのリアル元年に

エンタープライズ ソフトウェア・サービス
基調講演を行うNTTコミュニケーションズの田中基夫氏(SDN Japan 2013)
基調講演を行うNTTコミュニケーションズの田中基夫氏(SDN Japan 2013) 全 1 枚
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 新年あけましておめでとうございます。

 2014年はICT業界にとって一体どんな一年になるでしょうか。

 私にとって一番関心が高いのは、もちろんSDNの普及が今年どれだけ進むのか、に尽きます。実は2013年はSDN元年になると言われていました。それは、IDC社が2012年末に発行した「ICT産業に関する2013年の予測レポート」がベースになっていました。このレポートで、2013年はSDNが大々的な宣伝段階から現実のものへと移行し、ネットワーク仮想化、OpenFlow、SDNアプリケーションにとっての最初の1年となる、とされていたのです。

 実際、ソフトウェア/ハードウェアメーカ各社の提供するプロダクトを見ると、確実にSDNの考え方で制御可能なネットワーク領域が広がってきていることが解ります。一昨年までは、OpenFlow対応スイッチはデータセンターのコアに使われる製品が主流でしたが、昨年は光伝送装置メーカーのOpenFlow対応等も進み、キャリアネットワークでの取り組みが始まる一方、オフィスのフロアスイッチへのOpenFlow導入や、無線APでの対応を始めるメーカーも現れ、2013年はSDNで制御可能なネットワーク領域の多様化と多層化が確実に進みました。また、Cisco社やIBM社などの大手メーカー各社共同でスタートさせた、SDNのオープンソースでのソフトウェアプラットフォームを作ることを目標としたOpenDaylightプロジェクトも注目を集めています。また日本国内でも、NTTや国内通信メーカが共同で進めている総務省の委託研究プロジェクト「O3プロジェクト」も、昨年末には10Gbpsのワイヤレートを実現するSDN対応ソフトウェアスイッチの開発に成功したと発表するなど、ソフトウェア面でも多様な成果が出始めています。

 一方、私が実行委員会代表を務めさせて頂き2013年9月に開催したSDN JapanというSDN関連コンファレンスでは、スポンサー数が一昨年の15社から25社と1.5倍以上に増え、また参加人数も一昨年の553名から1019名とおよそ2倍に広がる大イベントとなり、業界も大いに盛り上がっているように感じられました。

 さらに、一般社団法人沖縄オープンラボラトリ主催で、12月12日、13日の二日間、沖縄県那覇市で開催された「OKINAWA Open Days 2013」というイベントでは、初日は「OpenStack Day」、翌日は「SDN Japan」と、二つの注目技術に関するフォーラムを連日開催し、500人近くの来場者を集め、これまで別々に議論されていたOpenStack、および、SDNの両方の技術や関連テーマに関する講演や議論が活発に行われました。

 このようなコミュニティの動きも含めて、2013年はSDNに関する多様な領域での動きが活発だった一年でした。2014年を迎えた今、さまざまなネットワークインフラでのSDNの導入に関して、具体的な検討に入る準備ができて来ていると言えるでしょう。

 先のIDCのレポートでは、世界のSDN市場は2016年までに37億ドル規模に達し、データセンター向けイーサネットスイッチング全体の35%を占めるまでになると予測しています。しかし、2013年を振り返ってみると、具体的なビジネスの状況としてはまだまだメーカーやSIerなどの提供者側の盛り上がりが目立ち、コミュニティも後半に向かって盛り上がって来てはいましたが、マーケット自体の立ち上がり、いわゆるSDN元年の到来は2014年に持ち越しになった印象です。

 ガートナー社が2013年9月に発表した「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2013年」というチャートを見ると、SDNは今まさにハイプサイクルの最初の山に差し掛かっており、「過度な期待」のピーク期に入ったとされています。また、主流の採用までに要する年数は「2~5年」とされています。つまりガートナー社は、SDNはこの後一旦ピークを過ぎて幻滅期に入り、再び這い上がってくるまでに最低2年は必要と見ているようです。

 このような状況を引き受け、将来の大きな発展に繋げるための2014年の取り組みの方向性は、SDNが実現する夢の世界は引き続き念頭に置きながらも、その夢の世界に至る過程で、現状の課題をSDNがどう解決し得るのか、ユースケースをひとつひとつ積み上げて行く必要があると考えています。

 私が代表を務めていますストラトスフィア社の取り組みと致しましても、現時点で製品として完成形を目指すのではなく、これまで作って来た技術や製品をパーツとして、データセンタ/Cloud、WAN、オフィスネットワーク、モバイルネットワーク等、既存のユーザネットワークの様々な課題を解決するために、それらがどのように活用できるのか、お客様と一緒になってソフトウェアを成長させていければと考えております。2014年はそんな地に足の着いた活動を通じて、将来の更なる成長を目指して進んで行くためのリアル元年としたいと思います。

■筆者:浅羽としや/IIJで、1エンジニアとしてバックボーンNWの構築や経路制御などを担当し、CWCで、技術担当役員として広域LANサービスの企画・開発に従事。現在、ストラトスフィアで、社長としてSDNの基盤ソフトウェアのビジネスを推進中。

《浅羽としや》

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