【インタビュー】「M3 - ソノ黒キ鋼 -」オニグンソウさん前編……漫画家にいたる道
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いつ、誰が死ぬとも知れないダークな世界の中で、不穏さを一身に受け止めるのが主人公・鷺沼アカシをはじめとした少年少女。そのキャラクター原案を担当したのは漫画家・イラストレーターのオニグンソウ先生だ。シャープな線やスタイリッシュなデザインに定評のあるオニグンソウ先生の漫画家としてのルーツから、この大型プロジェクトにどのような経緯で関わることになったのか、キャラクター原案での参加まで、様々なお話をうかがった。
[取材・構成:細川洋平]
□オニグンソウ
和歌山県出身。漫画家・イラストレーター。『―ヒトガタナ―』にて連載デビュー。現在も『月刊コミックブレイド』(マッグガーデン刊)で連載中。2014年6月3日に最新作『―ヒトガタナ―』第9巻発売予定。
[取材・構成:細川洋平]
■ 漫画家にいたる道
―アニメ!アニメ!(以下、AA)
絵を始められたきっかけから、教えていただいてもいいでしょうか。
―オニグンソウ(以下、グンソウ)
絵を描くことに興味を持ち始めたのが5歳くらいです。絵を描くとみんなが誉めてくれるとか、きっかけはそんな感じだったと思います。
姉と妹がいるんですが、全員落書きが好きだったんです。よく姉が友だちを連れて来て一緒にお絵かき会とかやったりしていたので、その時に絵を描いて楽しいと思っていました。漫画家を目指し始めたのは小学校4年生の時でした。
―AA
その時期に何かあったのでしょうか。
―グンソウ
4年生の誕生日に両親から画材一色が詰まった“漫画家初心者セット”をもらったんです。当時クラスのみんなを登場人物にした漫画を鉛筆で描いていて、クラスで回し読みをしていました。みんながちやほやしてくれるから描いていたのですけど(笑)、両親はそれも知っていたんです。「この子は漫画を描くのが好きなんだろう」とプレゼントしてくれました。そこで初めて触れてみて「漫画家になるしかない!」と決意しました(笑)。
セットって言っても「これがスクリーントーンか!」って貼って遊んでる感じですね。それからはずっと漫画家になりたいなと思いながらも社会人まで普通の生活を送っていました。
―AA
転機は、社会人の頃に訪れるわけですね。
―グンソウ
そうですね。大学を出る頃に『pixiv』が出てきたんです。絵はそこで趣味として描いてました。社会人になった直後ぐらいにpixivのイラストを見た出版社のマッグガーデンさんから声がかかったんです。pixivより前からブログで二次創作漫画も描いていて、知っていたらしいんですが、そこからある作品のコミカライズの話をいただきました。コミカライズなら、原作があり、そこから絵にしていくので兼業しながらでも出来るのでないか?ということです。
元々漫画家志望ということもあってやれるだけやってみようと思ったのですが、この話が様々な都合でストップして。その後に「じゃあ、オリジナルを描きましょう」って言われました(笑)。
―AA
すごい流れですね。
―グンソウ
オリジナルを描くとなったら会社は難しい。どうにか兼業できないかなと思っていたんですが、ちょうどその頃に会社で大失敗をして新人にも関わらず社長に呼び出されたんです。この時「どこでもいいから逃げたい!」という思いが生まれ、「本腰入れて漫画を描こう! 会社辞めます!」という事になりました(笑)。
■「これを描きたい!」というモチベーション
―AA
絵を描く際に、特に大事にしていることはありますか。
―グンソウ
自分は描きたいものがあって描くのがやはり原動力になるので、そこを持つようにしています。可愛い女の子が描きたいとか、かっこいい男の子が描きたいとか、服の皺を描きたいとかピンポイントなところででもです。描きたいものを持つのが一番大事なモチベーションかなと思います。
―AA
たとえばモチベーションがさがってしまった時に、それをあげるにはどうされているんでしょうか。
―グンソウ
一旦放り投げて、だらーっとします。そうすると締め切りが迫ってきて、描かないと大変なことになる。そこで「描きたいものは何だ!?」と自分から探して「今回このキャラクターのこの表情頑張ろう」みたいな感じです。最後はギリギリになって見つけたりしています。根性論みたいになってしまいますけど(笑)。
あとは感化されやすいタイプですので、描くものがなくてだらっとしている時は、テレビドラマや映画、YouTubeのMV、映画の予告編を見て自分の中でストーリーをふくらませるとかいろいろ刺激を受けます。それで描いてみようという気持ちに持っていきますね。
―AA
お話を伺っていると小学生の頃から描き溜めてきた技術の蓄積が大きく影響しているような気がします。そうした実感はありますか。
―グンソウ
描き溜めていたものが、自分の中でどれだけ実を結んでいるのかはまだ実感できていないです。特にプロになる前の作業がどれだけ身についたのかはまだわかりません。
原稿を締め切りまでに描いて収入を得る仕事は、やはり意識が違ってきます。落書きだったら時間をいつまででも取れるのを、締め切りの決まった期間の中でクオリティの高いものを描かなくてはいけない。となると効率とクオリティアップを同時に突き詰める。それで伸びていくと思うんです。
プロの漫画家になって、ひとつの制約の中であえて過剰なこだわりを諦めるといった割り切り方は学んで来たと思います。納期や締め切りを守るのは絵を描く時に大切にしています。
■ 線の中に宿るルーツ
―AA
先生の絵は、線のキレや繊細さが特徴です。これに何かルーツはあるのでしょうか。
―グンソウ
影響を受けた作家さんはたくさんいます。その中でも、子どもの頃から影響を受けた漫画家の上山徹郎先生や、今の自分のスタイリッシュな絵柄の基になっている三輪士郎先生の影響は特に大きいですね。
線がシャープになったのは中学・高校時代です。漫画家の線と比べて自分の描いているペン先の線が汚く思えたんです。それからしばらく綺麗に引けるようにと、延々線を引く練習をしました。後にプロの漫画家の線は原稿が縮小されることで綺麗になるからと知ったんですけど(笑)。
―AA
実際に描いた原稿を雑誌サイズにする際に、83%で縮小されるという原理ですね。
―グンソウ
そうです(笑)。だからその分、自分の線が縮小されてさらにソリッドな印象にはなってしまいましたね。
―AA
影の感じもこだわられている印象を受けたのですが。
―グンソウ
映画が好きなので、特に洋画のイメージがあるんだと思います。洋画のようなパッキリしたコントラストが好きなんです。
―AA
他に影響を受けられた作家さんはいますか?
―グンソウ
みつみ美里先生です。僕、高校ぐらいまではずっと筋肉ムキムキの硬派な男性を描いていたんですよ。そんな時にみつみ美里先生が描かれているゲームのトレーディングカードを見つけたんです。その瞬間恋に落ちて、スターターパックをレジに持っていきました(笑)。そこからはひたすら模写しました。
女の子キャラをきっちり描こうとしたきっかけとして、みつみ美里先生の影響がすごく強かった。女の子ってこんなに可愛いんだって気づかされました。
―AA
今のテイストにはみつみ先生の影響があまり感じられないので面白いですね。
―グンソウ
今でもみつみ美里先生のテイストを描かせたら、仲間内ではかなり上の方ですよ(笑)。
後編に続く
「M3―ソノ黒キ鋼―」オニグンソウさん(キャラクター原案)インタビュー前編 -漫画家にいたる道-
《animeanime》
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