【浅羽としやのICT徒然】第15回 最近話題のNFVについて考える
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2013年末から今年にかけて、NFV(Network Functions Virtualization)という言葉を良く耳にするようになりました。これまで解説してきたSDNやOpenFlowは、どちらかというとネットワーク自体を仮想化してソフトウェア制御しようという考え方や技術を指していましたが、NFVはそれよりも少しレイヤの高いサービス、例えば、ファイアウォールとか、ロードバランサとか、DPIなどの、ネットワークを効率的かつ安心安全に活用するために必要となる機能の仮想化に焦点が置かれたものです。従来このような機能は専用のハードウェアをネットワークに繋いで利用するイメージでしたが、NFVでは、それらを実装しているソフトウェア全てを、仮想化された汎用サーバ上で動作させよう、という考え方です。
NFVは、ヨーロッパでの電気通信関連の標準化団体であるETSI(the EuropeanTelecommunications Standards Institute)の元に、2012年11月にNFV ISG(Industry Specification Group)が設置され、規格化が進められてきました。NVF ISGへの参加団体は、テレフォニカ(西)、ベライゾン(米)、BT(英)、NTT(日)、KDDI(日)など各国の大手通信事業者が中心となっています。その点ではGoogleやFacebookなどのネットサービス事業者が中心にSDNの規格化を進めているONF(Open Networking Foundation)とは少し様子が違っています。
このところSDNよりもむしろNFVのほうが話題に上ることが多くなったのは、2013年の10月にNFV ISGからNFVに関する4つの公式文書が公開されたのがきっかけです。その中には基本アーキテクチャやユースケースなども盛り込まれています。また、それらに基づいたコンセプト実証も始まり、各通信事業者での検討や実証実験、ソリューションを提供する大手機器ベンダーがこぞって具体的な製品化を始めたということでしょう。
図1にNFVの上位レベルのアーキテクチャを示します。VNFというサービスを実装するソフトウェアが、NFVIというそれらのソフトウェアを動作させるための仮想化基盤上で動作するイメージです。そしてそれらの管理と機能の編成(オーケストレーション)を行う制御基盤が全体を制御します。サービスを構成するためには、ユーザの送ったパケットを、仮想化基盤上で動作しているどのVNFをどの順番で経由させるかを、ネットワーク仮想化の仕組みも組み合わせて制御することになります。(図2)(図は、ETSI GS NFV 002 V1.1.1 (2013-10) “Network Functions Virtualisation (NFV); Architectural Framework”の図を参照)
●NFVの背景
NFVが実現されれば、コンピュータの仮想化の時と同様に、これまで別々のハードウェアが必要だった多様なネットワーク機能が全てコモディティハードウェア+仮想化基盤上で動作するソフトウェアで実現される形になり、個々のハードウェアのコストを下げ、かつ、機能が集約されることでハードウェアの稼働率を上げることもできますので、全体の設備投資コストを格段に下げられる、ということになります。
これを受けて、機器ベンダーは縮小するハードウェアビジネスを補完し、いち早く新たなビジネス領域に参入するために、こぞって対応を開始しました。多くのベンダーが2014年後半から2015年にかけてNFVの製品化を公言し始めています。
通信事業者がNFVの実装に力を入れるのは、彼らの設備の中でサービスを構成するための装置への投資やその運用コストが重荷になっているということです。特に携帯事業者は厳しいサービス競争を勝ち抜いて行くためのコスト削減を継続しつつ、新しいサービスを投入し続ける必要があります。特に、スマホ等の登場によりインターネット系アプリケーションが増えたことで、従来よりもトラフィックの変動や制御信号の集中などによるサービス用機器の過負荷状態も起こりやすくなっているため、負荷に応じたスケールアウト/スケールインを大規模な設備投資を行うこと無く実現できるNFVの考え方に大きな期待を寄せています。また、多様できめ細かなサービスを迅速かつ低コストで投入できることも大きなメリットになるでしょう。
つまり、これまでは通信を主体にサービスを組み上げていた通信事業者は、通信だけではビジネスがこれ以上延びなくなってきたため、より上位のサービスレイヤにビジネス領域を拡張することを狙って、多様なサービスを安価かつ、迅速に実装するための基盤として、NFVに期待をしているということでしょう。
《浅羽としや》
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