【Interop 2014 Vol.5 座談会】「目玉はインタークラウド&VXLAN」(データセンタ編) 2ページ目 | RBB TODAY

【Interop 2014 Vol.5 座談会】「目玉はインタークラウド&VXLAN」(データセンタ編)

エンタープライズ ソフトウェア・サービス
データセンタ運用担当のNOCメンバー
データセンタ運用担当のNOCメンバー 全 5 枚
拡大写真
■データセンタにおけるOpenStack、およびCloudStack の現状

関谷:では、ストレージについてはどうでしょうか? サーバやネットワークの仮想化や分散が進んできたことで、ストレージに新たな課題が出てきていませんか?

織:先ほどボトルネックの変化という話も出ましたが、CPUやメモリのパフォーマンスが向上し仮想化が進むとストレージへのアクセスも増えることになりますので、ストレージのパフォーマンスをどのように確保するかが課題になってきています。最近ではNANDフラッシュのストレージも登場しています。ただ、NANDフラッシュは高価なので、ハードディスクとNANDフラッシュを組み合わせて、頻繁にアクセスするホットデータにNANDフラッシュを利用し、NANDフラッシュとハードディスクとの間のデータ移動はコントローラ側で透過的に行うようなストレージも登場しています。

関谷:データセンタを運用する上での最近課題はありますか?

大久保:サーバやストレージの故障を想定したFT(Fault Tolerance)構成をどうするか悩むときがあります。ネットワークスイッチなどL2の冗長化にはいろいろな製品が出ており、比較的しっかりと構成できるのですが、仮想化環境ではFT 構成に制限があるなど、設定で苦労することがあります。

関谷: では、データセンタにおけるOpenStackやCloudStack【★脚注2】の現状はどうでしょう。

織:OpenStack 対CloudStackという観点では、早くから商用のクラウドサービスを提供している場合は、CloudStackをベースにしているところが多い印象があります。ただ最近はOpenStackの実装やサービスも増えており、どちらかというとOpenStackが話題として目立つようになってきました。

奥澤:確かにOpenStackで構築した環境をフルマネージドで提供してほしいという要望は増えていますね。

大久保:クラウド事業者でOpenStackを導入してサービスを展開しているところが出始めています。APIが共通化されているという点はユーザーにとってメリットなので、これらの動向は注視しています。

明石:我々の大学はCloudStack ベースの基盤がありますが、まだ誰もが活用している状態ではなく、使い慣れた仮想化環境を構築する人が多いようです・・・。OpenStack やCloudStackで構築するとAPIが標準化されているので、インタークラウドなどを考えたとき便利ですね。

大久保:今回のShowNetでは、ビットアイル、IDCフロンティア、さくらインターネットの3社がインタークラウドの実験に参加します。ビットアイルがOpenStack ベース、IDCフロンティアがCloudStackベース、さくらインターネットが独自クラウドと、3社とも異なるクラウド基盤なんですね。これらをいかに連携させるか、今回チャレンジの1つでもあります。

関谷:標準化という意味では、クラウド界ではデファクトスタンダードともいえるであろうAmazonの影響はどうでしょうか。

奥澤:影響は少なからずあると感じています。AWS (Amazon Web Service)と競合した場合、転職するときAWSの知見があると転職しやすいといった理由で、AWSでの構築を選択されるユーザーがいるくらいです(笑)。

大久保:確かにAWSエンジニアが就職や転職に有利という話は聞きます。また、現実にはAWS互換のAPIは重視されますね。AWSのアーキテクチャに引きずられることになりますが、プラットフォームが変わってもAWSのノウハウが活かせるという意味で重宝されるようです。

織:一方で OpenStackでは、特定のベンダーに依存したアーキテクチャにならないように多くのベンダーや事業者が参加し、よりオープンに取り組んでいるようです。

関谷: ファシリティ編ではOCP(Open Compute Project)の話があり、シャーシの奥行サイズ、エアフローの向き、配線の位置などを統一してほしいという意見が出ました。同様の議論はありますか?

奥澤:日本の場合、電気代が高いということもあり、どちらかというと消費電力削減の方に感心が高いかもしれませんね。

大久保:ラックや配線方法などの統一は、小さい規模だと実現しやすく、またGoogleやFacebookといった規模の巨大データセンタではスケールメリットを出しやすくなります。しかし国内の多くのデータセンタ事業者のような中間規模の場合は、スケールメリットを出しにくいのでまだこれからではないでしょうか。

■レガシーシステムのクラウドマイグレーション、コンテナ技術、SDNの共通API などに注目

関谷:最後になりますが、今後1、2 年を考えたとき、データセンタの向かうべき方向と、そのためにはどんな課題を克服すべきか、という点について意見を聞かせてください。

奥澤:課題の部分になりますが、やはり24時間365日で稼働させるシステムが多いので、レガシーシステムのクラウドマイグレーションではないでしょうか。レガシーシステムではSTP【★脚注3】やVRRP【★脚注4】を簡単にやめられないし、最新クラウド基盤にレガシーサービスを移植するのは簡単ではない部分もあります。考え方としてデータセンタ毎マイグレーションするくらいの作業にもなるので、技術的な問題だけではなく時間も必要です。

織:コンテナ技術は最近注目されてきましたね。特に開発環境としてコンテナで一式を構築するというリクエストは増えています。

明石:大学では、学生の実験環境の仮想化、クラウド化はどんどん進んでいます。しかし実験や開発の計測や評価をする際に物理環境でも構築することがあります(笑)。仮想環境から物理環境への移行やその逆を簡単に実現できるような技術が増えてくるとよいですね。

大久保:クラウド事業者としてもオンプレミスやレガシーシステムは無視できません。マイグレーションの技術も必要ですが、クラウドとオンプレミスのレガシーシステムとを接続する技術は必要だと思います。また、急速に伸びるモバイル、特にスマートホンからのアクセスを、インターネット越しにではなくてセキュアに堅牢に接続できるような環境も今後は必要になってくると思います。あとは、IoTですね。あらゆるモノがインターネット越しに繋がるようになると、そのコンピューティングをクラウドで行うようになるかもしれません。例えば、カメラなどのデバイスがクラウドに直接データを送ってクラウド上で解析するようなケースです。今後はそういったものをサポートする技術が必要になってくるでしょう。

関谷:運用面での課題や変化は?

奥澤:サーバの設定についてはかなり自動化が進んでいますし、よいツールもあるのでセットアップは楽になったと思います。

織:そうですね。ただ、仮想マシンイメージは簡単にコピーできるし、AWSでも簡単にインスタンスを作れるので、監視対象がどんどん増えてしまって、運用管理自体はむしろ前より大変になってきているような気がします。

大久保:仮想化によって、運用で大変になる部分が変わってきているということでしょうね。例えば、昔はお客様からリブートの依頼を電話でうけて現地に駆け付けて、作業するというオペレーションをやっていました。今はもう、全部オンラインでいつでもユーザーが自由にできるようになってきたので、物理的な部分の大変さっていうのはかなり軽減されていると思います。一方、仮想化により故障している原因の切り分けが難しくなり、その復旧方法も単純な交換はできないなど、現場でのより高度な判断が必要になってきています。また、物理サーバでは起きなかった問題も現れています。Programmable Datacenter やSDDC(Software-Defined Datacenter)とも言われますが、物理的な部分も仮想的な部分も全部まとめてラップしてAPIで管理できるような技術が生まれるといいですね。

奥澤:データセンタを抽象レベルで管理できるような、共通化されたAPIが必要ですね。インスタンスの使い捨てができるようなデータセンタというのも実現できるかもしれません。

関谷:ネットワーク編でもSDNの共通APIは重要であり、まだ抽象化、標準化が足りないといった意見が出ていました。まだパーツが揃った段階で、全体統合やオーケストレーションはこれからかもしれませんが、データセ
ンタももう1段階スクラッチ&リビルドが必要なのかもしれません。本日はありがとうございました。

【★脚注1】
VXLAN:Virtual eXtensible Local Area Network の略。L2のマルチテナント環境を実現できる。最近、対応製品が多く発表されており、今後の普及が期待されている。

【★脚注2】
OpenStack と CloudStack: オープンソースのクラウド基盤ソフトウェア。

【★脚注3】
STP:Spanning Tree Protocol。複数経路があった場合に、パケットのループを防ぐほか、ネットワークの耐障害性を高められる。

【★脚注4】
VRRP:Virtual Router Redundancy Protocol。複数ルータを1台の仮想ルータとして扱い、冗長化を実現するプロトコル。
  1. «
  2. 1
  3. 2

《RBB TODAY》

特集

【注目記事】
【注目の記事】[PR]

この記事の写真

/

関連ニュース