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【木暮祐一のモバイルウォッチ】第52回 外国人観光客向け無料Wi-Fi提供の障壁になっているもの

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【図1】外国人観光客が日本での滞在中に、どのような情報が求められているか(観光庁)
【図1】外国人観光客が日本での滞在中に、どのような情報が求められているか(観光庁) 全 4 枚
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■外国人観光客に最も求められているのが公衆無線LAN

 観光庁が行った調査によれば、外国人観光客が日本での滞在中に、どのような情報を求めているかという調査で、筆頭に上がったのが無料Wi-Fi(公衆無線LAN)の利用に対するニーズであった(図1)。

 わが国でも順調にWi-Fiスポットの整備が行われているが、いずれのアクセスポイントも登録が必要で、しかもその大半が有料サービスとなっている。海外では屋外の様々な場所でWi-Fiが無料で利用できるケースが多いが、わが国でWi-Fiを開放しているのは宿泊先ホテルや公的施設などごく一部だけであり、多くの外国人観光客にとって日本で不便を感じさせるウィークポイントとなっていた。

 神戸市では、まずこの「KOBE Free Wi-Fiカード」を30,000枚用意する。不足すれば追加発行も検討する。「KOBE Free Wi-Fiカード」の配布は、神戸市総合インフォメーションセンター(ポートライナー三宮駅)、新神戸駅観光案内所(JR新神戸駅構内)、北野観光案内所(北野風見鶏の館前)からスタートし、順次拡大予定としている。これらの場所で外国人観光客はパスポートなど観光を目的として一時的に来日した外国人であることを確認できる証明書を提示することで、この「KOBE Free Wi-Fiカード」を入手できる。カードに記載されているアクセスIDとパスワードを用いて、「Wi2」「Wi2premium」「wifi_square」などのアクセスポイントを通じてインターネット利用が可能となる。カードの有効期限はログイン時から1週間となっている。

 神戸市から委託を受けたWi2は、神戸市内だけで対応するアクセスポイントが3,000箇所以上あり、自治体として外国人観光客向けに提供する公衆無線LANの規模としては全国でも最大級のものになる。外国人観光客が多い観光地を抱える自治体は、こうした来日客向けに公衆無線LANのアクセスポイントをどのように提供するかを検討しているところが多いと思われるが、中には独自に設備を設置するケースも見受けられるものの、それには限界がある。限られた自治体の予算で有効に外国人観光客向けに公衆無線LANを提供する事例として、今回の神戸市のように既存の公衆無線LAN事業者に委託して事業を行うという手法も今後注目されていきそうだ。後述するが、インフラを既存公衆無線LAN事業者に委託することで、自治体が抱えるもう一つの課題である「技適問題」に対しても逃げ道となる。

 なお、神戸市では単に通信費用を負担するだけでなく、これを利用して外国人観光客の利用動向分析も実施するとしている。これはWi2のWi-Fiネットワークが保持する位置情報や利用者の接続時間などを、個人が特定されない統計情報として加工した形で神戸市にフィードバックさせ、これにより街頭調査やWEB調査などで得られなかった外国人観光客の動線や滞在時間の把握など、新たな観光周遊行動の調査データとして、新たな観光振興に向けた取り組みにつなげていこうというものである。

 またカード配布方式とは別に、神戸市では外国人観光客受け入れ拠点に独自に公衆無線LANを設置し運用も行っている。所定の場所で神戸市独自にSSIDを選択し、ブラウザから簡単な登録手続きをして利用できる。独自整備拠点は、神戸市総合インフォメーションセンター、北野観光案内所、新神戸駅観光案内所、神戸空港ターミナル、神戸ポートターミナル、中突堤旅客ターミナル、神戸市役所24階展望ロビー、神戸ポートタワー・神戸海洋博物館、神戸国際展示場、有馬温泉観光案内所、海上アクセスターミナルの計11カ所となっている。
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《木暮祐一》

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