開発者に聞く、固定ネットワーク「Beyond 100G」に向けたファーウェイの取り組み 3ページ目

■同軸ケーブルによる高速ネットワークの技術にも参入

　ファーウェイでは今後もギガビットを超えるアクセスを広く提供するため、光ファイバーの技術に止まらず、銅線による電気通信、同軸ケーブル伝送、ワイヤレス伝送の各方面に最先端の技術革新を追求している。

　「光ファイバーであれば簡単にギガビットクラスの通信を実現できるのですが、日本ほど光ファイバー網が普及している地域は世界ではかなりレアなケースです。またそんな日本でも今後すべての環境が光ファイバー化できるわけではなく、例えば集合住宅までは光ファイバーが来ているけど、中は同軸ケーブルやVDSLなど電話線を使った通信環境とハイブリッドになっている場合もあります。そこでは当社の“Beyond 100G”を実現するためのアクセス技術が真価を発揮します」。

　テレコム系の技術は元々ファーウェイが得意とする分野だが、ここでは銅線によるギガビットクラスの高速伝送を実現するための新たな技術規格である「G.fast」に力を入れている。50mほどの距離であれば、双方向1Gbpsの伝送スピードが既存の電話線で実現できるというもので、1件の集合住宅に引き回すために必要な250mほどの距離であっても、双方向で400Mbpsほどのスピードが確保できる点が特徴だ。「4K/8Kの映像伝送となれば、現在のVDSLではベストエフォートでも100Mbps前後となるので若干厳しいところがあります。余裕を持って8Kクラスの映像データが送れるようになるということでG.fastの普及に関心が集まっています」と滝広氏は語る。現在「G.fast」は規格標準化の最終段階にあり、ファーウェイでも2015年後半から2016年に製品化を予定している。

　ケーブルテレビのインターネット接続に使われている同軸ケーブルによる100G超えの技術に関しては、Cable Labsが認定・試験を実施する同軸ケーブルによる通信サービスの国際規格「DOCSIS」の最新バージョン3.1の標準化が完了しており、ファーウェイでは2015年以降の製品化に向けて開発を進めている。ケーブル技術はファーウェイが新規に参入する領域だが、今後は積極的に製品開発に取り組んでいくと滝広氏は語る。「DOCSIS 3.1以降はネットワーク全体のアーキテクチャが大きく変わる可能性が高いとみています。現在はIP信号をDOCSISの形式であるRF信号に変換する工程をセンター施設で行っていますが、次世代のDOCSIS 3.1になると信号がノイズに弱くなるので、従来の設備では信号の安定伝送が難しくなります。当社ではユーザーの家庭により近いところまでIPで持ってきてから、小型の『D-CMTS（Distributed Cable Modem Termination System）』を使ってRF信号に変換することで、ノイズに強く安定性の高い伝送を実現できる技術を持っています。新しい技術への転換時期はファーウェイにとって一つの大きな参入機会だと考えています」。

　もう一つは高層建築の間や、河川が横たわる地域など光ファイバーの敷設が難しい環境でギガビットクラスの高速伝送を実現するためのワイヤレス技術だ。ファーウェイでは1～2kmの距離間でギガビットクラスの高速伝送を実現する小型の屋外用E-band（80GHz帯）・V-band（60GHz帯）の高速無線通信装置の開発にも力を注いでいる。

　国内では今秋からNTTぷららが「ひかりTV 4K」のサービスをスタートさせ、4K映像配信への注目が日増しに高まりつつある。モバイル通信も5Gの世代に突入すればスモールセルが街中の至る所に配置され、様々な場所でギガビット通信が利用できる環境が広がることが期待されている。今後はさらに安定した高速伝送対応のインターネットバックボーンを確立するための技術に、今以上の注目が集まるだろう。次世代のBeyond 100Gを視野に入れながら、End to Endでトータルの技術開発に取り組むファーウェイの先進的な技術と製品が市場をリードしていくはずだ。