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【木暮祐一のモバイルウォッチ】第71回 いよいよPepper販売開始!ソフトバンクのロボット戦略

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Pepperと筆者
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 これまでに無かったものを創りあげるというのは、決して容易なことではない。Pepperを製造するアルデバランロボティクス社は、すでに先行してヒューマノイド・ロボット「Nao」を販売している。身長は58cmの二足歩行可能なロボットで、その価格はおよそ100万円。しかし、この価格では一般家庭に普及させるのは困難なことが目に見えている。

 このためPepperはNaoの足を省略することで製造原価を多少抑えたほかに、タッチパネルディスプレイを備え、アプリケーションの開発環境もオープンにした。これによりアプリ次第でPepperを様々な用途に活用できる環境を整えたほか、このアプリマーケットを含めた一体的なサービスとして提供する仕組みをソフトバンクが創りあげたのである。

 一般の家庭にこうしたロボットが受け入れられるようになるには、まだまだ時間がかかると思われる。現在Pepperの導入を検討しているのは企業や福祉施設などの法人が主体だ。店頭での受付や案内係として、あるいは高齢者等の話し相手として想定されているのであろう。

 実は、こうした「これまでに無かった製品」が登場した事例として、筆者として自動車電話・携帯電話の登場時の光景が目に浮かぶ。固定電話しかなかった時代に「場所を問わず通話ができる」電話サービスが登場。しかし、大半の人たちは「そんなもの、何が便利なのか?」という疑問しか感じていなかったはずだ。一般の消費者でも契約できる移動通信サービスが始まったのは1979年12月、自動車電話からのスタートだった。当時のこのサービスの利用料金は年間約50万円と、非常に高価だった。したがって、大企業の社長車や、政治家の公用車に取り付けられていた程度で、一般庶民には無縁のものだった。しかしながら、利用者の拡大により利用料金は引き下げられていき、「お買い上げ制度」とも呼ばれた規制緩和のあった1994年以降は一気に携帯電話が大衆化し、その後10年ほどで1人1台利用されるまでに普及していった。その端末価格も利用料金も、ご存知のとおり個人で利用できるレベルまで引き下げられていった。

 Pepperの登場にわきつつも、その価格と利用料金に戸惑う現在の状況が、こうした携帯電話普及の歴史とついつい被って見えてしまうのである。Pepperの本体価格198,000円はどう考えても原価割れのはずである。それを補うべく「Pepper基本プラン」が設定されており、また初めて世の中に登場する機器であるからこそ、どんなトラブル(故障等)に見舞われるかもわからず、そのための「Pepper保険パック」がある。3年利用で総計1,093,400円(税別)というと非常に高価な買い物に思えるが、黎明期の自動車電話、携帯電話の価格とそれほど変わるわけではない。ソフトバンクはまずこの最初の一歩を踏み出し、10年後、20年後を見据えながら、まずは赤字でも良いのでロボットが寄り添う便利な社会を広く社会に認知させ、ユーザーの増加と共に今後の端末(ロボット)製造のコストや、基本使用料の引き下げに挑戦していこうということなのだろう。
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《木暮祐一》

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