●関西の雑居ビルで5名からスタート
同社がスタートしたころはBtoB市場でマーケットプレイスが台頭し、Amazonも徐々に頭角を現してきていた時期。創業者である瀬戸欣哉氏と現在の代表執行役社長の鈴木雅哉氏は、まだ住友商事の社員だった。2年目の鈴木氏は鉄鋼部門にいながら、商社の仲介機能がマーケットプレイスに置き換えられていく姿を目の当たりにしていた。社内のどんな部門にもEコマースチームができていた。
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インターネットでビジネスをするときにどんなものが有効か?創業者と鈴木氏は、膨大な商品の中から検索しなければいけないものが事業の成功のカギになるだろうと考えた。企業の生産計画にも入らず、いつ何が必要であるということが明確になっていない間接材料は、いざ必要となると探すのに非常に手間がかかる。「工具屋さんだとか金物屋さん、自動車の部品商という人がエンドユーザーを訪問し、必要な商品をセールスしていた世界。そこをインターネットに置き換えられるのではないかというのがスタートだった」と鈴木氏は振り返る。
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もともとチームは東京にあったが、間接資材の問屋は大阪に多い。そこで、仕入を考えた時に大阪に拠点があったほうがいいということになり、テストマーケティングのために1年間大阪に移動した。雑居ビルのなかにある会議室2つぶんくらいのスペースを借り、5人でスタートしたという。
当初ターゲットにしたのは製造業だ。「BtoBにおいては価格交渉が当り前ですから、我々のようにインターネットでワンプライスで取引しようなんてありえない世界ですよ。たかだか10年前の話ですが」(鈴木氏)。また製品情報といっても当時は紙のカタログしかなかったため、学生を30人くらい集め、2000ページ以上のカタログから半年くらいかけて根気強く入力。型番と価格しか情報がない問屋・メーカーの情報に加え、紙のカタログに記載されている長さ、色、サイズなどの特徴を書き出してEカタログを作っていった。
実は当時やっていたことは今でも変わらない部分がある。仕入先を作って顧客にダイレクトメールを送るという作業だ。当初ターゲットにした製造業のなかでも、ダイレクトメールを出して非常に反応が良かったのが鉄鋼所と機械加工の組立工場だった。食品工場も出したが、レスポンスがよかったところにチラシを発送した。
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「我々がやってることは、その業界にフォーカスして何を使っているか調べ上げ、その商品を増やすということです。そうすると、同じような商品を使う、違う業種の人たちが見えてきます。例えば鉄工所とかでやる仕事と、配管のような仕事をする人と同じような作業工具を使う場合があります。それを理解したうえで、配管、溶接、などカテゴリーを増やしていきます」(鈴木氏)。実際、同社で作成している間接資材総合カタログは全16ジャンル。ネジ・ボルト・釘・ビス編、FA・メカニカル部品編から、最近ではバイク・自転車用品編、農業資材・園芸用品編までと幅広い。それでも鈴木氏はまだまだジャンルを広げたいと話している。
ほとんどの客が商品検索からモノタロウを知る。商品検索からサイトへ行き、値段、リードタイムが登場し、登録すれば簡単に注文できそうなので一回使ってみるかという人が新たな客になる。この人たちに前述のようなカタログを発送することで、他のジャンルも扱っていることをアピールしている。
●従来の商習慣ではカバーできない
ある時、社内で工事用品を買っている人はどんな人なのかという話をしていた。「トイレとかキッチンまわりとか、もともとのターゲットは工務店でした。しかし、実際その人たちの数が増えない。いったい誰が購入してるのかという話をしていたら、例えばマンションとかアパートの大家さんが買ってるということがわかりました。自分たちでメンテナンスする人が多かったんです」。鈴木氏は、こういうところは普通のセールスマンでは気が付かないところで、商品営業の空白みたいなところが必ずできると強調する。ある特定の営業マンの気づきのをナレッジとして共有するしくみはできつつはあるが、それでもうもれてるものはたくさんある。こんなことをあるんだよということは、なかなかうまくシェアできない。「(従来の商習慣のなかで働いている)セールスマンであれば60社ー100社くらいのお客様を担当し、毎日朝からお客さんを訪問して夕方オフィスに帰って来て注文を通します。その人自身は優秀で、商品の最適化が社内でされていくのかもしれませんが、いっても60社とか100差の最適化です。我々は登録されているお客様は146万人がいて、実際に20万くらいのお客さんが購入する。そこを分析してどんな商品を扱うべきか、このお客さんに対してはどんな商品を勧めるべきなのかを考えることができます」。
同社の強みはデータマイニングだ。客が最初にどんな商品を購入し、あるいはチェックし、その人がどんな仕事をしているのか?といったビッグデータは大量に集まる。それを活用すれば各カテゴリーに対して、どれくらいの確立でどれくらいの金額を買う可能性があるのか計算できる。これら相関性を計算し、ユーザーにリアルタイムで最適なものを勧めていく。
モノタロウで商品を購入する人は大量買いというケースは少ない。現在一人当たりの注文金額は2万円程度。月の売上げ約40億円なので、20万ユーザーが毎月購入している形になる。
間接資材のネット通販では同社は独り勝ち状態と言ってもいいかもしれないが、鈴木氏は満足していない。「日本の間接資材のマーケット規模は5兆円から10兆円くらい。ほとんどはオフラインで取引されてます。そこからシェアを取り続けているわけですね。売り上げが500億になったとしても1%です」「自動車、バイク、農業だったり、いろいんなジャンルを広げていけば、そもそも裾野としてのマーケットはもっと大きいはず。まだまだ自分達の知名度だったり、提供できているサービスだったりっていうのはぜんぜんです」。
目標は2020年までに売上1000億円にすること。サービスの質を上げるとともに客の数を増やすことが重要だという。