【連載・視点】19歳はリフト代タダ!業界を動かしたビジネスモデル
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ところがバブル崩壊に伴い、スノーアクティビティ人口は減少傾向に。100程度のスキー場をかかえる長野県も地域的な打撃をうける。スキー場のまわりにはホテルだけでなくペンションや民宿など簡易宿泊施設に分類される宿が多数あり、長野県はこれら宿泊施設の数が日本で最も多い。しかし、その一方で簡易宿泊施設の倒産件数1位の県にもなってしまった。
スキー場の商売は季節商売なので、春から秋にかけて農業に従事していた人が冬はスキー場で働くなど、年間を通して出稼ぎにでずに済む状態ではあったが、閉鎖するスキー場が増えると、冬季は都市部に出稼ぎにいかねばならず、1年を通して家族が一緒に暮らせないなど、地域の雇用維持という別の問題も生まれてきた。
リクルートライフスタイル じゃらんリサーチセンターの主席研究員である加藤史子氏のところに、長野県から相談があったのは数年前のことだ。なんとかスキー場にお客さんを呼び戻し、地域を活性化したいと県の担当者は考えていた。
■19歳を無料にする意味
これに対して加藤氏が打ち出したのが、19歳の人であれば誰でもシーズン中リフト券が無料になるという施策。「雪マジ!19」と名付けられるプロジェクトだ。利用者は公式サイトで登録を行えば、会員証メールが送られてくる。スキー場では、このメールと写真付き身分証明書を提示すればリフト代がタダになる。なお、4季目となる2014年冬からは会員証機能をアプリに移行予定とのこと。
何故、19歳なのか?加藤氏はまず、インターネット調査によって人々がどのタイミングでスキー場のアクティビティに参加するか、エントリーポイントと言われるものを探ることからはじめた。当然、長野県もすでに様々な手を打っていた。修学旅行を増やす、子供に無料でリフト券を配布するなどの対策は行っていたが、加藤氏が調査するうちに「ほかにも鍵となるタイミングがあるのではないか」と気づいていく。つまり小学校の時に家族旅行、修学旅行、研修、スキースクールなどでスキー場に行くことはあるが、そこはその人のスキー場来訪率を高めることには寄与していないことがわかったのだ。思春期に仲間同士でスノーボードをはじめたかどうかというのが、その後の人生におけるスキー場のリピートに寄与していることがわかった。ここがトリッキーだったという。大きく寄与するのは高校卒業後から社会人になるまでだった。
とすると、19歳を頂点とした世代にどういう仕掛けを打っていくかということになる。「19歳というのは、多くの人が高校を卒業した直後の年。レジャーに出かけるのも家族旅行から同年代の仲間に代わり、お金の負担も自分にのしかかってバイト代から捻出しなければいけない時期」「スキーをそこそこ滑れる子でも、スキー場でスノーボードを経験すると最初はうまく滑れず、つらい思いをする」「この誘われないと行かない、お金がないと行かない、しかも1回行って痛い思いをするとやめてしまうという、この状況を超えて潜在需要を掘り起こすには、相当インパクトが強いものではないとダメだなと思いました」。
この世代は皆スマートフォンを持っており、SNSを活用するので横のつながりも強い。加藤氏は、「彼らの会話のなかで2秒で説明できるものでなくてはいけなかった」と強調する。「俺ら、いくらスキー場に行っても今年無料らしいよ、みたいな。ここに19日は無料とか、夕方は無料とか条件をつけると、とたんに伝わらなくなってしまう。なので細かな条件を排除し、スキー場で何万回滑っても無料としました」。
19歳で多くの人が脱落して、一生ゲレンデとは縁がなくなるという人が増えている。このタイミングで無料で何度も来ることができれば、比較的時間に余裕があるため上手くなって楽しくなっていく。そしてハマった時には有料でもスキー場に行くようになって、いずれファミリーになったら再来訪してもらえる。
実は日本人のなかでスキー場に来ているのは、子供が幼稚園から中学生以下のファミリー層だという。この層はスキー場来訪率が20%もあり、他の世代と比較してももっとも多い層。この世代は現在40~50歳の団塊ジュニア世代でバブル期に20~25歳だった人たち。「私をスキーに連れてって」に影響されてスキー場へ出かけていた世代でもある。また、ファミリー層で復活している人は7割が中上級者だ。若い時にさんざん滑り、ある程度の技術レベルに上達することがいかに大事かがわかる。
《RBB TODAY》
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