【NHK技研公開 2015】2016年の8K試験放送を想定、広帯域衛星伝送のデモを実施 | RBB TODAY

【NHK技研公開 2015】2016年の8K試験放送を想定、広帯域衛星伝送のデモを実施

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8K衛星放送実験システムの構成図
8K衛星放送実験システムの構成図 全 17 枚
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 日本放送協会(NHK)は28日より31日まで、NHK放送技術研究所にて「第69回 技研公開」(技研公開2015)を開催している。

 総務省のロードマップでは、2016年には衛星による8K試験放送がスタートし、2018年までに実用放送が開始される予定だ。そのため間近に迫った8K放送を実用すべく、今回の展示はNHKが本格的に取り組んでいることをうかがわせる内容となった。

 実際に1階メイン会場では、番組制作から、符号化・多重化、衛星経由での送信・受信、表示まで、8K衛星放送に必要な機器が一堂に集まり、それらを接続した広帯域衛星伝送のデモが実施された。ここでは会場内で撮影した8K映像を、放送局側から衛星放送経由で家庭(会場)の8Kテレビに放映するまでの一連のデモについて紹介したい。

 まず制作機器として展示されていたのが、8K撮影を行う小型カメラと、高画質デモザイキング装置による実用的な8Kカメラシステムだ。デモザイキング装置とは、8Kカメラから出力される疑似的な8K映像のフォーマット(4K表示の素子4枚、緑2枚、赤・青各1枚のうち、緑2枚の画素をずらして表示することで8K相当に映像を表示する方式)を、放送フォーマットのフル解像度に変換する装置だ。

 8Kカメラシステムで撮影された8K映像は、ハイビジョンの約100倍のデータ容量となるフルスペック8K映像信号(約144Gbps)をケーブル1本で伝送できる専用インターフェース「U-SDI」を経由し、22.2マルチチャネル音声多重装置に送られる。ここで番組制作に求められる映像と音声の信号が多重化され、8K制作のスタジオシステムへ送られることになる。

 次に、多重化された映像・音声信号が、8K符号化・復号化装置へと伝送され、品質を損なわずに信号を圧縮。今回の8K符号化・復号化装置は、国内外の標準規格(ARIB STD-B32 3.1版)に準拠した方式で、映像と音声を圧縮して伝送できるものだ。この符号化装置によって、8K映像をHEVC/H.265、22.2ch音響をMPEG-4 AACで圧縮し、その後にMMTで束ねて出力する。

 ちなみにMMT(MPEG Media Transport)とは、多様な伝送路に対応する国際標準のメディア伝送方式のことだ。たとえば、BS放送、CATV放送、光回線、移動体通信というように、さまざまな伝送路で、放送と通信を連携させることが可能だ。放送でも通信でも番組を同じ仕組みで伝送できるため、異なる伝送路での情報をディスプレイ上で同期して表示させることも容易だ。

 その後、このMMTで束ねられた8K映像信号は、コンテンツの権利保護とアクセス制御を可能にする「次世代CAS技術」(Conditional Access System)技術で、MMT対応スクランブル装置からリアルタイムにスクランブル処理が施される。

 スクランブル処理が終わった8K映像信号は、NHK放送技研の会場からダイレクトに衛星に伝送できない。そのため、まずは送信装置で渋谷のNHK放送センターに映像データをアップする。そしてNHK放送センターを経由して、現在、空き電波となっているBS17ch(放送衛星)に、8K映像信号を伝送。このときの衛星放送の搬送波として、16通りの振幅・位相差を与える「16APSK」という変調方式を採用し、現在より大容量のデータ伝送を可能にしている。

 再び、NHK放送技研に設置されたパラボラアンテナでBS17chから電波を受け、受信装置で8K映像信号に復調。さらにスクランブルを解き、会場にあるMMT多重分離装置によって、MMT出力を8K映像と22.2ch音響に分離する。そのあとで映像に字幕などを付け、8Kディスプレイや専用スピーカーに出力するという流れだ。

 会場内の家庭用8Kディスプレイは、8Kの22.2ch音響を活かすために、枠の部分に複数台のスピーカーを配置し臨場感を得る仕組みだ。さらにダイヤログリモコンで、バックグラウンドの音声と、会話の音声を別々にコントロールすることもできる。

 ちなみに今回は、お台場に設置された8Kカメラからの映像も衛星に飛ばし、リアルタイムで会場内で放送するデモも実施。また8K試験放送をCATVで再放送するシステムも展示していた。

《井上猛雄》

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