石破大臣「地方が消えると日本が消える」……地方創生の取り組み
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そして弘兼氏に「地方創生によって日本はどんな形になりますか」と聞かれた石破大臣は「50年先、100年先、持続可能な社会。これからの5年、10年がその先を変える。日本人が幸せに生きていけることが地方創生」と答えた。
続いて産業界・地方自治体などによる居住推進活動のVTRが上映され、舞台には熊本県のゆるキャラくまモンが現れ、特産のスイカを石破大臣に渡した。
●地方移住で地方活性、4つの成功例と課題
第二部はパネル・ディスカッションで、テーマは「地方居住で始まる新しい未来」。地方移住を実現している4名のパネリストを招へいし、それぞれの移住に対する経験や思いを語った。モデレーターは内閣府の平副大臣。
農家民宿えづらファーム(北海道紋別郡遠軽町)江面陽子代表は、結婚を機に夫婦で東京から移住、東京ドーム9個分の農地を持つ大規模農家だ。東京での仕事は充実していたが、家族の時間を持てるようにと転職、農業経営敬称制度を利用して新規就農した。小麦、ジャガイモなどの原料作物を大量生産・大量出荷して生活基盤を安定させ、通販や“ファームインボラバイト”(=宿泊しながら農作業の手伝い)を試みる。若い人が常に街を訪れるようになり、地元の住民との交流が生まれた。
地域活性化をになう高校作りをめざす島前高校魅力化プロジェクトを解説したのは、島根県海士町役場/隠岐島前高校魅力化コーディネーターの奥田麻依子さん。教育による地方創生は、商品企画のように効果短期間で現れるものと、地域の作り手の育成といった中長期持続可能な地方創生に大別される。地域に高校がなくなると、子どもを遠隔地に通わせるのがたいへんなので、家族全体が転出する。逆に、移住を受け入れられる条件として学校は重要。学校の魅力化により、都市部からの移住もあり、高校生が増えた。
小松洋介さんが代表理事を務めるNPO法人アスヘノキボウ(宮城県女川町)は、復興ボランティアの宿としてトレーラーハウスを用意したことから始まる。女川の地元商店が復興してもボランティアは仙台に帰ってしまうので、地元で買い物しない。ボランティアにとっても移動は負担。復興のための区画整理が決定していないので、恒常的な建築は出来なかったのでトレーラーハウスとなった。現在は、公民連携のプロジェクトをさらに町外連携させるコーディネーターを務める。
NPO法人グリーンバレー(徳島県神山町)の大南信也理事長は、インターネット中継で現地から登場した。グリーンバレーは“創造的過疎”を謳い、過疎地をビジネスの場にする「神山プロジェクト」を運営する。ITなど場所を選ばない企業を誘致し、ワークインレジデンスを推進する。最近は地元の農作物を用いたビストロが開業、オーガニック・ローカルフード指向者の集積とサービス雇用創出が始まった。移住者に旧住民が影響され、希望を感じ始めた。新旧住民のコラボで地方創生できる。
平副大臣の「地方がどうなれば移住しやすいか」という問いには。「地域のしきたりを教えてくれるカウンセラーがいるといい。私たちの場合農業研修の農家がそれを教えてくれた」(江面)、「地域の中の人で、外と中をつなぐ人」(奥田)、「移住者たけでなく、旧住民も変化を」(大南)。
これから地方移住しようかという人へのメッセージとして「『仕事はあるんですか』と聞かれたら『どんな仕事をしたいのですか』と私は聞き返す。やりたいこと、あたらしいことの集積が地方創生」(小松)、「自分の目的にこだわりすぎないで。地域の人と一緒にやっていけるか検討する。移住する前にいろいろな人に会ってみる」(奥田)、「出来ない理由より出来る方法を探しましょう。言い続ける、行動し続ける」(大南)。
《高木啓》
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