【楽しい100人 Vol.7】「札幌に和の文化を広めたい」……はぎれ・リサイクル着物 まめぐら店主 長谷川美穂氏
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長谷川さんは意外にも着物とは縁遠い家に育ったという。1990年、「着物という日本の素晴らしい文化を絶やしたくない、誰かに覚えて欲しい」という友人の母の友人のすすめで和裁を始めた。初めて仕立てたのは肌襦袢だった。「不器用だったので針で指を何度も刺し、真っ白な生地が血染めになった」と写真を見せながら長谷川さんは笑う。そして着物のつくりの合理性や美しさに魅了されていった。
1996年、たまたま新聞広告で見つけた築70年の古民家を借り「はぎれ・リサイクル着物 まめぐら」を札幌にオープンした。当時は古民家で商売をすることも、中古の着物を扱うことも珍しく、テレビやラジオにも取り上げられた。リサイクル着物が浸透していくにつれ、着物は洋服と違ってわからない事があまりにも多いことに気がつく。「昔は近所のおばあちゃん、おばさん、お母さんに聞くことができたが、残念ながら着物の知識はなくなりつつある。売りっぱなしではなく、アフターケアもきちんしなければ」と、着付けを学び、履物のゴムの張り替えや鼻緒の差し替えは職人に依頼、襦袢や羽織、帯の仕立て直しにも対応できるようにした。「おばあちゃんの着物を着たいけれどサイズがあわない、何とか着たいという方の力になりたいと、着物の事を何でも相談できる近所のおばさんを目指した」。そうしていくうちに相談が増え、力を入れきてよかったと思えた。
ある時、美容師でもある着付けの先生との出会いがあった。昔の花嫁衣裳の黒振袖の着付けをしてもらったときにその美しさと、全く苦しさがないことに衝撃を受けた。師事を願ったが、美容師でないことを理由に断られる。諦められない長谷川さんは2年にわたり先生を説得、美容師になることを条件に師事することができた。美容師免許は、コツコツ資金をため、美容学校の通信教育とスクーリングを受け、着付けのコンテストにも出場し、10年をかけて取得したという。その間、次の構想のため店は現住所に移転した。
近年は店内に「髪結処ふくまめ」をオープン、撮影スタジオも完成し、新品・中古品の販売、レンタル、仕立て、お直し、着付け、撮影と、上から下まで着物の全てをプロデュースすることができるようになった。「成人式や結婚式の写真撮りは1日1組限定。美容師2人がついて髪型、髪飾り、帯結び、小物、履物を何度も変え4~10時間かかる」と徹底的に取り組む。そこには大変な疲労も伴うが、着物の良さを広めたいという長谷川さんの思いは強い。
「つくづく思うのは、私は好きでやっているんだなと。着物という文化に私は助けられてきた。人生の相棒。着物にお返しの意味で狸寄席の手伝いをしている」。この狸寄席というのは、「狸小路に常設演芸場をつくる会」が定期的に開催する寄席で、会場では飲食も楽しめ、着物の来場者には飲み物のサービスがある。長谷川さんは会の発起人の一人だ。ほかにも着物で街を歩くイベント「着物でジャック」や、船や市電を貸し切ってお酒を楽しむ着物イベントなどにも積極的に関わり、店舗では和裁や着付け、落語教室も開催している。
「着物を一度も着たことがない人はこれからの季節、ビアガーデンや花火大会に浴衣を着てみてはいかがでしょう?男性は2割増しでカッコよく見える。なんでも相談できる着物屋さんをもつのもおすすめ。着物の文化は日本人の誇りにつながっていると思う」。
最後に、中高生への着付け授業など、若い世代への伝承にも力を入れたいと思いを語った。
《RBB TODAY》
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