企業が地域社会の防犯活動で担えること……全国防犯CSR推進会議・藤井氏インタビュー | RBB TODAY

企業が地域社会の防犯活動で担えること……全国防犯CSR推進会議・藤井氏インタビュー

エンタープライズ セキュリティ
全国防犯CSR推進会議の座長を務める上智大学環境大学院教授・藤井良広氏(撮影:編集部)
全国防犯CSR推進会議の座長を務める上智大学環境大学院教授・藤井良広氏(撮影:編集部) 全 2 枚
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 昨今、「CSR」という言葉を各企業の取り組みの中で見聞きするようになった。企業にまつわる言葉には、「コンプライアンス(企業の法令遵守)」や「メセナ事業(文化、芸術活動に対する企業による資金的な支援)」など、耳慣れない言葉も多い中で、「CSRとは、どういう意味?」と気になっている方もいると思う。

 言葉の意味から説明していくと、CSRとは、「Corporate Social Responsibility」の略で、企業が社会の一員としてさまざまな責任を果たしていくというものになる。

 そんななか、CSRに「防犯」を加えた「防犯CSR」活動の推進や支援を行う全国組織「全国防犯CSR推進会議」が今年4月に発足した。

 「防犯CSR」という考え方は、全国の警察本部を中心に日本では広められてきたもので、防犯面において「企業の立場、強み、特性を生かして、地域の防犯活動において何らかの形で貢献する」という意味になるという。

 そこで今回は、「全国防犯CSR推進会議」で座長を務める上智大学環境大学院教授・藤井良広氏に、「防犯CSR」の概念や意義、そして発足から約3ヶ月経った同団体の現状や今後の展望について伺った。

●CSR活動は慈善活動ではなく経済活動の1つ

 まずは防犯CSR活動について、もう少し詳しく説明する必要がある。地域貢献というと、いわゆる「慈善活動」という印象を受けるが、理念としては少し異なる。企業が経済活動を行っていくには、地域との連携が不可欠。地域住民の雇用を行ったり、社屋や工場を構える際の地域住民からの理解、業務を推進していくうえでの地域自治体、地域の取引先との連携など、積極的に企業や団体が地域社会に参加することで、より効果的な経済活動にもつなげようというのが「防犯CSR活動」なのだ。

 では、具体的に「防犯CSR活動」とはどんなことを指すのか? 基本スタンスとしては、その企業のアイデア次第。例えば、地域で行われるイベントに、防犯を啓蒙するための標語や防犯上の注意点をまとめたうちわを企業のロゴ入りで配る。これも立派な「防犯CSR」活動となる。

 また、地域の防犯パトロールへの経済的な支援を行うことも当てはまる。なかには、落語が得意な社員に防犯に絡めた落語を作ってもらい、地域住民向けに定期的に「防犯落語」として発表している企業や、自社の製品パッケージに防犯を啓発するようなデザインにしたバージョンを作り、配布する企業もある。

 企業の規模、特色、強みを活かし、果たしたいと思う防犯面での地域貢献の取り組みならば、取り組みの大小に関係なく、「防犯CSR活動」となるのだ。

 では、なぜこうした団体を作る必要があったのだろうか? 座長を務める藤井良広氏は次のように語る。

 「まず“社会の安定あっての企業活動”という考え方があります。企業が社会、特に企業活動の基盤となる地域社会に対して社会的な責任を果たしていくことで、コミュニティとしての力が高まり、さまざまなリスク対策にもつながると、私たちは考えます。そして防犯CSR活動を続けていくことで、社業に邁進するだけでは得ることができない“信頼できる企業”としての認知を得られたり、従業員が自社に対してより誇りと責任を持ってもらえるという好循環を作ることができるというのがベースとなる考え方です。しかし、防犯CSR活動は、各企業がひっそりとしているだけでは、取り組みが認知されず埋没したり、せっかく培ったノウハウも蓄積されません。そこで『全国防犯CSR推進会議』のような全国組織を作り、賛同者に集まってもらうことで、各企業が取り組んでいる防犯CSR活動を、世の中に広く発信し、知ってもらうことで、より効果を高め、持続可能な取り組みにしていこうというのが本推進会議の狙いです」

 企業がこうした防犯CSR活動を行う上で壁となるのが、「会社に利益をもたらすことができるのか? また利益をもたらすのはいつなのか?」という経営的な側面だ。

 社員がボランティア的に防犯CSR活動をしていたとしても、多少のコストは必要で、継続的な取り組みをしていけば、経営者はかけたコストの回収を気にするのは当然のこと。同団体が「防犯CSR」活動の認知や普及を行うため、さまざまな企業に働きかけをしてくるなかでも、その点を指摘されることもあったという。

●長期的な視野で見ることが大切な防犯CSR活動

 しかし、藤井氏は次のようにも語る。

 「1年や2年といった期間では、確かに“コスト”という指摘は当てはまります。しかし、10年、20年というスパンで見ていったときには、“防犯に対して積極的に地域貢献してくれる企業”という認識を地域住民が持ち、一過性ではない信頼を獲得することができます。そうした企業の姿勢を示すことで、従業員たちの誇りに繋がったり、地域住民の中から優秀な人材が、その企業を目指すようになったり、わが街を支えてくれるあの企業を応援したいという地域との強い結びつきができるので、長期的な視点で見ればコストではなく、投資だということができます」

 現在、本推進会議は発足間も無いため、まだまだ認知は低いが、Webサイトでは「防犯CSR推進宣言」といった形で、既に防犯CSRに取り組んでいる企業に、自社の取り組みを紹介してもらうよう募っている。

 宣言をすること自体は無料で、企業名、担当者、取り組み内容などを書き込めば規模の大小、取り組みの内容に関わらず、公開されるようになっている(社会通念上問題がある場合は除く)。また、本推進会議の理念に賛同し、運営に参加する企業や団体も随時募集している。入会する場合は、年会費3万円。

 今後はWebサイトを中心に、防犯CSR活動の事例を紹介したり、各都道府県警が推進している防犯CSR活動と連動したり、表彰制度を設けて、より効果が高められるサポートを進めていく予定とのこと。

《防犯システム取材班/小菅篤》

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