札幌から「地の利」を生かしたデータ処理事業を展開する恵和ビジネス……地元のキーパーソン | RBB TODAY

札幌から「地の利」を生かしたデータ処理事業を展開する恵和ビジネス……地元のキーパーソン

エンタープライズ その他
恵和ビジネス 代表取締役社長 渡辺淳也氏
恵和ビジネス 代表取締役社長 渡辺淳也氏 全 6 枚
拡大写真
 今回取り上げるのは札幌市を拠点とする恵和ビジネス 代表取締役社長 渡辺淳也氏。印刷業の枠にとどまらず、「データ」社会と顧客のニーズを結びつけ、アウトソーシング、ダイレクトマーケティング、システム開発までも行う。どんなに小さな会社にも存在し、身近となった「データ」をどう捉えているのか。

■印刷業としてスタート、いまや北海道で最大規模の情報処理サービスを提供
 恵和ビジネスは1959年に「北海道カーボン印刷」として札幌市で創業、2代目の社長に就任した祖父、父に継ぎ、4代目の社長が渡辺淳也氏だ。創業当時は北海道にまだなかったというカーボン印刷、ビジネスフォーム印刷を請け負った。札幌市をはじめとした自治体や地元の大企業に大型のコンピューターが導入され始めた時期でもあり、帳票の出力の需要が伸びたという。その後、父の代になり、総務・経理・電算室などで発生する顧客のニーズに合わせ、データの入力業務、システム開発の部門を拡大し、情報系の事業も手がけるようになる。

 現在はダイレクトマーケティングのほか、事務処理のアウトソーシングに力を入れ、年金定期便、クレジットカードの請求書、健康診断の結果通知書、税金の納付書、年末調整などの細かな出力物も取り扱う。このような行政関連や、規模の大きい業務を一手に引き受けることができるシステムをそろえた会社は、北海道内にはないという。「業種は?とよく聞かれるのですが、『情報処理サービス』と答えています。お客様の帳票の設計からデータ入力、印刷までの事務処理を提供することで、納期もコストも下がる。トータルで提案できるのが強みです。お客様のニーズをよく聞いてきたからこそ、できることです」。

■充実した札幌市のインフラ機能…通勤15分、就業後はスキー
 札幌市は1972年の札幌オリンピックの開催を機に、地下鉄や道路の交通インフラの整備、地下街の開業など一気に近代化が進み、政令指定都市となった。190万人以上が住む都市でありながら、年間6mもの雪が降る街でもある。しかし、この札幌に拠点があることは会社にとってもプラスに働いているという。

「震災の影響もあり、一極集中ではなく、事務処理を分散させたいというお客様が増え、北海道に拠点を移す企業も増えてきました。札幌市が誘致に積極的なこともあり、相談が少しずつ増えています。これだけの人口で、インフラが整い、教育水準も低くない。これは国内でも稀な地域だと思います。事務処理など、人手がかかるものを取り扱うにはとても恵まれ、労働集約的な業務にはとてもいい。何より、雪が降っても、お年寄りが歩いて買い物に行ける。この交通インフラの充実はとても重要だと思います。ただ、札幌にずっと住んでいるとそれが当たり前だと思ってしまうんですよね。東京で働いていた経験がある社員からは、通勤は車で15分、就業後はナイターでスキーもできる。年収が下がっても札幌がいい、という声を多く聞きます」。

 住環境、労働環境のバランスの良さをもつ、札幌の街に拠点があることもメリットになっているようだ。

■今後のデータ社会の変化と人口の減少にも、自社ノウハウを活かす道がある
 現在の恵和ビジネスの営業拠点は札幌市と東京都にあり、事務処理の拠点は愛知県のほか、沖縄県、東北にも展開を予定しているという。時代の変化と地元のニーズにあわせて歩んできた恵和ビジネスだが、今後の社会の変化をどうとらえているのだろう。

「扱われるデータの量はどんどん増えていくでしょう。クラウド、SaaSなどで扱われるデータのフォーマットも共通のものが出てくるので、それをどう効率よく大量に処理するか。その反面、人がどんどん少なくなり、事務処理にコストをかけられなくなってくると思います。そこに当社が拡大していく余地もあると思っているので、社内のスキルは上げていかなくてはいけません」。

 一方で、業界の課題も語る。「データベースに強い社員が多いというのも強みの一つですが、IT技術者が減っている時代なので、北海道IT推進協会副会長としても、ブラックな業界ではない事をアピールしていかなくては」。

■「面白いことが好き」。札幌を盛り上げるキーパーソンのひとり
 社長業の顔を持つ渡辺氏だが、地元の社長たちの仕事風景や集まる様子をネット配信したりと、面白い取り組みを企画、発信する一人でもある。2012年からは「北海道の楽しい100人」と題し、多ジャンルの職業、年齢の4人の登壇者が1人15分の持ち時間で活動や経歴をスピーチするイベントの主催メンバーの一人だ。

 現在の登壇者は80人を超え、100人に達成すると終了する予定。Facebookだけの呼びかけで毎回200人前後が観覧し、懇親会も人気だ。このイベントは、北海道内では十勝(とかち)、遠くは広島県にも広がり、各地で「楽しい100人」が開催されている。会場には学生の観覧者も多く、社会の先輩たちに質問や交流ができる貴重な機会となっているようだ。

 最後に、渡辺氏はどのような種類のデータが好きかを聞いた。「自動運転など、混沌としたデータから法則性を見い出し、一つの答えに行きつく仕組みにカタルシスを感じますね(笑)」。顧客の持つ断片的なデータを形にし、整理する。まさに、恵和ビジネスが提供するサービスに相通ずるものがあった。

【地元から日本を盛り上げるキーパーソン】札幌から「地の利」を生かしたデータ処理事業を展開する恵和ビジネス

《牧野絵里》

特集

【注目記事】
【注目の記事】[PR]

この記事の写真

/

関連ニュース