錯覚を利用して歩行者を誘導する技術……防災時の活用も 大阪大学
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
医療、エネルギー、情報通信、福祉など、さまざまな産業分野での活用を想定した多種多様な研究技術が展示されだが、今回、ご紹介するのは、視覚的な錯覚を利用して歩行者を誘導することができる「敷くだけで片側通行を実現する完全無電源の歩行誘導シート」(大阪大学大学院情報科学研究科 助教・古川正紘氏/共同研究者:電気通信大学 准教授・梶本裕之氏、准教授・野嶋琢也氏)という研究だ。
大人数の往来がある公共スペースでは、各々が自由に歩くと思わぬ混雑を招いてしまう可能性がある。それを防ぐために混雑の恐れがある場所では、ピクトグラムや音声案内、矢印などを使い、進行方向を示すことで、交通整理を行っている。しかし、既存の方式では歩行者が方向指示の認識と理解をするまでにタイムラグが発生するため、十分な誘導ができないなど、改善の余地があった。
「敷くだけで片側通行を実現する完全無電源の歩行誘導シート」は、床がまるで進行方向に流れているような視覚的な錯覚を生み出すため、歩行者は直感的に流れに沿って歩くように誘導される。また、流れと逆方向に進む人がいれば、本来の進行方向のレーンに戻るような流れが見えるため、自然と正しい進行方向へと誘導される。
想定される活用例としては、公共スペースの交通整理、店舗や施設の出入り口への誘導、リハビリシーンでの運動意欲の促進など。応用例としては、出入り口、乗降口付近などに設置し、将棋倒しといった事故を防ぐための減速効果、災害時のスムーズな避難誘導を実現するための避難経路への設置などが考えられる。
実用化に向けた課題として、光学素子とプラスチックレンズを利用した耐久性の向上、提示する模様のデザインなどを数理的に最適化する必要があるという。
《防犯システム取材班/小菅篤》
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