五輪エンブレム使用中止会見……「模倣でない」「似ても良い」「責任ない」 | RBB TODAY

五輪エンブレム使用中止会見……「模倣でない」「似ても良い」「責任ない」

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 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は1日、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会エンブレムについて使用中止を発表した。使用取り下げは佐野研二郎デザイナーからの申し出だが「模倣であるから、という理由ではない」という。

 佐野デザイナーによる初期案を公表してまで使用継続を主張していた組織委の様子が変わったのは、佐野初期案とヤン・チヒョルト展ポスターとの類似性が指摘された8月30日。9月1日に記者会見した東京2020組織委員会専務理事・事務総長の武藤敏郎氏は「説明を続ければ理解を得られると思っていたが、全く違った、新たな事態」という認識になったという。

 組織委はデザイナー本人から話を聞く必要があると判断、同時に審査委員会にも意見を聞こうということで、記者会見当日の1日午前、武藤事務総長、佐野デザイナー、永井一正審査委員長の三者で話し合いの場を持った。以下、佐野デザイナーと永井審査委員長の発言は、記者会見に出席した武藤事務総長の説明による。

 佐野デザイナーはヤン・チヒョルト展に行ったが、ポスター、バナーは記憶にないとし、エンブレムは独自に作ったと主張する。「円が共通すると言われるが、ポスターはTにドット。佐野案は日の丸、鼓動、情熱をイメージした。色も違う。模倣ではない」。

 永井審査委員長も、デザイン界の理解としては、佐野案の“9分割画面”は“Tドット”とは違うものだという。「佐野さんの言う通り、オリジナル」。同時に、ここまで色々な問題が生じて国民が納得するかは問題だとも指摘。「残念ながら、専門家の間ではわかり合えるが、一般国民にはわからない」。

 武藤事務総長は「組織委はデザインの専門家ではないので、審査委員の専門的な説明を判断する立場にない。専門家の判断を了とする」との立場をとる。いっぽう、国民の理解を得られないということについては「共有する懸念」だとした。

 ここで佐野デザイナーは、「模倣であるから、という理由で取り下げることはできない」と述べたという。模倣ではないけれど、「昼夜を問わず、本人や家族に対して誹謗中傷」が続いているそうだ。「オリンピックに関わることがあこがれだった。いまやエンブレムは一般国民から受け入れられない。オリンピックに悪影響を及ぼすことを考えると、使用の取り下げはやむを得ない」と述べたという。

 永井審査委員長も取り下げに同意。審査委員は全8名なので組織委が7名に電話したところ、1名(氏名未公表)は「盗用ではない。臆することなく続けるべきだ」と主張したものの、残りは「取り下げやむなし」「審査委員長に対応一任」だったという。

 これで組織委は佐野案を取り下げて、あらたなエンブレム開発に向けスタートを切ることを判断。1日午後に五輪の関係団体トップでつくる調整会議を開催し、取り下げについて了承を得た。パラリンピックのエンブレムもセットなので、同時に使用を中止する。

 組織委はただちに新しいエンブレムの開発に入る。武藤事務総長は「基本的に公募を前提。今回の決め方を尊重し、より開かれた選考過程を工夫し検討したい」とし、具体的な方法や日程はあらためて発表するという。

 武藤事務総長は佐野案について「リエージュの劇場ロゴと同じとはまったく思ってない。似ているところより違うところの方が多い。裁判は利があると確信がある。シンプルで力強いものは、道具立てが同じなら似たものがたくさんある。永井氏も同意見だ。コンセプトが違うということは言わなければならない」と、引き続き擁護する。

 コンセプトの違いについて、報道陣から「劇場と競技なのだからコンセプトが違うのは当たり前。商標の類似の調査ではコンセプトを調べるのか?」との問いに、武藤事務総長は永井審査委員長の説明として「デザイン業界では、コンセプトが違えばデザインが似ていても良い。そうしないとデザイナーが育たないからだ」と答えたが、商標の類似の調査では形だけしか調べないという。

 このような事態に至った責任について問われた武藤事務総長は「エンブレムは、誰かひとりが『いい』と言って決めていいものではないから、どこか1ヵ所に責任を置くものだとは理解していない。そういう議論はすべきではないし、出来ない」と答えた。

《高木啓》

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