日本サービス大賞設立!日本経済をけん引するモデルを評価 | RBB TODAY

日本サービス大賞設立!日本経済をけん引するモデルを評価

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日本サービス大賞委員 委員長 野中郁次郎氏(一橋大学 名誉教授)
日本サービス大賞委員 委員長 野中郁次郎氏(一橋大学 名誉教授) 全 3 枚
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 2015年7月1日に募集がスタートした「第1回日本サービス大賞」は、日本の優れたサービスを募り、国内外に向けて広く発信する表彰制度。いままで尺度のなかった「サービス」をさまざまな観点から審査し、サービスの重要性を啓蒙していく。

 現在、全国からの応募受付期間(締め切り:2015年9月30日)とのこと。そこで今回は、この2015年に新設された日本サービス大賞委員の委員長を務める野中郁次郎氏に、サービス業の現状や問題点、応募可能な職種などについてお話を伺った。

――「日本サービス大賞」のねらいは何でしょうか?

野中郁次郎氏(以下、野中):サービス産業は、今や日本のGDPと雇用の7割超を占め、今後ますますの拡大が見込まれている重要な産業です。しかし、欧米や製造業に比べて生産性が低いと指摘されているのが現状です。

――その原因は、なぜでしょうか?

野中:それは過度の価格競争によるサービス品質の劣化や、グローバル競争に晒されていないことなどによるサービス水準の低下、市場参入や撤退といったサービス産業における新陳代謝の不足、などにあると言われています。人口減少社会に突入した日本において、引き続き経済成長を維持する観点から、サービス産業の生産性の向上や優れたサービス価値の創造が、極めて高く期待されています。

――では、優れたサービス価値の創造を図るにはどうすればよいのでしょうか?

野中:そもそもサービスは「個人が受け取る経験」であるため、その価値を客観的に捉えにくいのです。しかも、サービス産業は業種も多岐にわたります。そのため、サービスの価値を共通の尺度で評価する共通の基準はこれまでに存在しませんでした。そこで、日本サービス大賞では、サービスを「つくりとどけるしくみ」に着目して、業種を超えてサービスの価値を評価することができるように、主催団体であるサービス産業生産性協議会(SPRING)と共に制度設計をしてきました。

――優れたーサービスが適正に評価される仕組みを作ったということでしょうか?

野中:そうです。日本サービス大賞は、優れたサービスをつくりとどけるしくみを「見える化」し、国内外に広く発信することで、サービス産業界への普及・啓発を行っていきます。それによってサービス産業のイノベーションを促し、地域の経済や社会の活性化への貢献、市場の成長や雇用の創出などに繋げることを狙っています。また、ハイレベルな表彰の形態にしているので、事業者の士気向上や事業者間の切磋琢磨が促せるのではと考えています。

――優れたサービスと生産性の関係について教えてください。

野中:まず、多くの人が「生産性」という言葉から思い浮かべるのは「効率化」や「省力化」です。しかし、生産性とはOUTPUTとINPUTの相関関係です。日本の製造業の多くは、これまで省力化によってINPUTを減らすことによって競争力を維持してきました。

――それでは「サービス」の観点で見るといかがでしょうか?

野中:サービスの世界はものづくりと違い、人が中心の価値共創です。サービス産業においても労働力を節約すれば、見かけ上の生産性は向上するが、その結果としてサービスレベルが低下し、お客様が離れてしまう可能性が高くなります。したがって、省力化だけでなく、より高い価値を発見・提案し、優れたOUTPUTを増やすことがサービスの生産性向上のカギとなります。

――では、優れたOUTPUTを増やすにはどうすればよいのでしょうか?

野中:私はサービスとは、人と人との間の「一期一会」の関係に似ていると考えています。サービスの提供者と受け手とが出会い、共感・共鳴・共振し、受け手が期待以上の経験するときに、優れたサービスが生まれるのだと思います。そこには人間の価値観とか生き方といった「アート」な世界が大変重要な要素になります。

――具体的にお聞かせください。

野中:言いかえると、提供者と受け手の間で一緒に価値を生み出していくダイナミックなプロセス、つまりCo-Creation・共創の世界であり、優れたサービスには、そこに価値共創の物語り(ストーリー・テリング)が見えてきます。本当の意味で生産性の高いサービスとは、こういう価値共創の物語りを内包しているものではないでしょうか? よって、科学的な分析だけではサービスの本質は捉えられません。サービスの本質は、サービスの提供者と受け手の間で行われる価値の共創にあると考えています。「アート」と「サイエンス」の両方の要素の相乗効果の中で、サービスが生まれてくるのだろうと捉えています。

――「日本サービス大賞」には、どのような企業・サービスに応募してほしいでしょうか。

野中:今回、想定業種や事業規模、サービスの種類などの想定や前提は持たないようにしています。創設初年度ということもあり、私自身、仮説を持たず、新たな視点でサービスというものを見つめ直すチャンスと考えています。想像もしなかったような、見たこともないような、サービスが出てきてくることを期待しつつ、純粋に楽しみにしています。

――どのような業種でも応募可能なのですね。

野中:パンフレットにも書かれていますが、“きらりと光る”何かを持っている尖ったサービスを期待しています。全国各地から、そんなサービスを是非応募頂きたいですね。そして、世界に誇れる日本ならではの優れたサービスを広く伝えていきたいです。


――応募に際して注意すべきポイントはありますか?

野中:まだ世間が知らないものも含めて「優れたサービス」が世の中に沢山あることは理解していますが、今回はその優れたサービスを「つくりとどけるしくみ」に着目すると同時に、世間の期待を超えるサービス、強い情熱に裏打ちされたサービスなどを評価するのが趣旨です。冷静かつ情熱的に自己分析をして、応募をして頂くことを期待しています。


日本サービス大賞、野中委員長に聞く…賞のねらいと活動内容

《HANJO HANJO編集部》

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