【コラム】“VWショック”でどうなる!? ドイツのモノづくり文化の行方
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そして、帰国数日後にVWの排ガス装置の不正が明るみに出た。さらに、ヴィンターコルン社長の辞任。本来、こういう危機を守るために社長が必要なわけだが、新社長がすぐに就任するにせよ、社内での責任追及が先に廻って、世界各国の政府やお客様対応が遅れると問題はどんどん大きくなる。今回の事件は、VWの生命線にかかわる大問題だ。経営の最高機関である同社の監査役会は、まだ、「ことの大きさ」を認識していないのではないだろうか。
◆VW問題は、タカタ問題やGM問題の比ではない
まず不正の内容だが、排ガスをコントロールする不正ソフトが、試験の時だけに浄化装置がフル機能し、NOxやPM(すす)を制御するようにセットされているという。よって、実際走行の場合は、基準値を10倍から35倍上回る(米国NPO証言)排ガスを空気中に垂れ流す仕組みだ。「環境技術」と呼べないことは明らかである。
今年は、GMのイグニッション・キーやタカタのエアバッグの不具合問題などがあった。これらは、何万分の1の確立で起きうる不具合に対して、「会社がその現象を認知していたのか、真剣な対応をしてきたか」ということが問われた問題であった。
企業の品質部門では、品質問題が発生するとクレイムの「連続性」や「傾向性」を分析して、不具合が起きる条件を人工的につくり出し「再現」と行う。「再現」は、不具合の発生原因の明確化につながり、その原因を取り除く対策が具体化できる。それが、経営トップに報告され、リコールでの修理となるのである。GMやタカタにおいては、この品質対応での社内プロセスに問題があったのではないかということだった。
◆「リコール1100万台」というレベルの問題ではない
それに対して、今回の問題は、不具合の発生確立は該当車両において「100%」である。再現率も「100%」であり、GMやタカタとは比較にならない悪質な問題であることがわかる。つまり、VWは「リコール台数1100万台(費用は約8700億円を計上)」などの数字を発表しているが、これは品質問題ではなく、公文書偽造などに相当する刑事犯罪ということだ。米国だけでなく、既に、ドイツ、フランス、イタリア、インド、ブラジル、韓国などが、国家レベルで不正の調査を始めたと述べている。各国政府への対応の仕方を誤れば、販売停止の国が続出する可能性がある。さらに、民事では、世界中のユーザーや株主、NPOによる集団訴訟も、限りなく続くことが想像できる。
ドイツの法制度では、会社の問題であっても、個人が刑事犯罪の罪を問われる。9月24日付のNYタイムスでは、「ソフトの開発については、『誰が』が特定されやすいので、犯人は見つかるだろう。VWの監査役会は犯人を訴える用意をしている。また、VWは、極めてトップダウン性の強い会社で、何でもトップまで判断を仰ぐ会社であるから、ヴィンターコルン氏が承諾していた、もしくは目をつむっていた確率は高い」と述べている。
◆「ギリシャ問題」再燃にも飛び火の可能性
以前、「ギリシャ問題」をコラム掲載した時にも述べたが、ギリシャ問題などで生じたユーロ安の恩恵で、最も利益を上げたのがドイツの輸出産業、すなわち自動車メーカーだ。ところが、今年に入って、牙城であった中国の景気が悪化し、シェアも大きく落としている。そこに、この事件だ。問題が長引けば、裾野産業が広いだけに、ドイツ経済全体への影響も大きくなるだろう。そうなれば、借り手である「ギリシャ問題」が再燃する。「ギリシャ問題」は、ユーロ危機、世界の金融問題へと波及していくこともあり得る。
◆全社一丸で危機を乗り切れ
ヴィンターコルン氏が、社長の座を追われたのは、ピエヒ氏との内部抗争からだという報道がある。今は、内部抗争や犯人探しにエネルギーを使うのではなく、一刻も早く、全社一丸となって、世界の各国政府とお客様への対応を急ぐべき時だと思う。ドイツの「モノづくり」ファンの一人として、VWの早期復活を願いたい。
<土井正己 プロフィール>
グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサル ティング・ファームである「クレアブ」副社長。山形大学 特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年まで チェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事
【土井正己のMove the World】ドイツ、モノづくり文化の危機…VWショックでギリシャ問題再燃も
《土井 正己@レスポンス》
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