地球温暖化がビジネスに与える影響とは……池上彰が解説
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■今日温かいのは地球温暖化の影響?
池上氏は冒頭、「最近朝は寒いけど、昼間には温かくなりますね」と挨拶。「しかし、今日温かいからといって、それが地球温暖化の影響とは限らないんです。地球温暖化は長期的に見て、あとから分かること。それが地球温暖化を考える上で難しいことなんです」と述べた。さらに、東京の場合には、地球温暖化よりもヒートアイランド現象の影響のほうが大きいという。
池上氏は都心部の温度について、2つの例を紹介した。まず紹介したのは汐留の例。汐留では、再開発により大手企業のビルが次々と建設され、この影響で海風が流れ込みにくくなり、都心部の温度上昇を招いているという。これに対比させる形で次に紹介したのは、八重洲の大丸ビルの例。大丸ビルは2つ存在するが、これらの間にはすき間が設けられている。これは、「都市開発をする上で、風が通るようにしたんです。この風が皇居まで流れ、皇居は夏場でも過ごしやすくなっています」と池上氏。この2つの例を対比させ、「今、都市計画の在り方が問われているんです」と述べた。再開発が次々と進む都心部の現状に一石を投じた形だ。
■地球温暖化と経済活動はトレードオフの関係?
続いて、COP21の話題に。COP21の取材に行った池上氏は、各国の温室効果ガス削減について、こう述べた。「京都議定書と同様、どの国も責任を負っているが、その責任の大きさには先進国と発展途上国で差異がある。ただし、以前とは異なり、発展途上国の問題意識は高まっている。」COP21の様子では、発展途上国もそれなりの削減目標を出そうとしているとのことだった。今後温室効果ガス削減のビジネスがより進展しそうであるが、池上氏の発言を鑑みると、先進国だけではなく、発展途上国においてもビジネスチャンスがありそうだ。
また、池上氏は京都議定書の内容についても言及。「意外と知らない人が多いんですが、日本が目標としていた6%の温室効果ガス削減は達成したんです」と述べられた。しかし、目標達成できたのは、ネガティブな要因が一因として大きいという。「実は、日本が目標達成できたのは、リーマンショックの影響で経済活動が停滞したためです。しかし、地球温暖化と経済活動がトレードオフの関係にある訳ではありません」と池上氏。今後は、経済活動を停滞させずに温室効果ガスを削減させる必要性があるとのこと。そのためには、自動車業界や家電業界など、温室効果ガス削減に関するビジネスが鍵を握っているのは間違いない。
■地球温暖化は予防するだけではなく、”対応”することが必要
池上氏は、「日本政府は、地球温暖化の”対応計画”を検討しています」と述べた。つまり、地球温暖化がこれからも進展するものとして計画を検討しているということだ。具体的には、「食料などについての検討が必要になります」とのこと。例えば、海外では、ワイン産地が北に移動しつつあるのだという。そのため、新しいビジネスチャンスを得る農家が得る一方で、既存ビジネスを失う農家が出てくることが指摘された。同じようなことは日本でも起き、リンゴやミカンなどが今後影響を受けるのだという。このような点も踏まえ、今後農家は経営を行っていく必要があるだろう。
■地球温暖化により、その他にもさまざまな影響が
池上氏によると、地球温暖化により、その他にもさまざまな影響が世界的に出てくるという。まず挙げられたのは、蚊。池上氏によると、人間を最も多く死に追いやっている生物は蚊であるという。マラリアやデング熱などを引き起こすためだ。デング熱の事件は記憶に新しいが、このような大病を媒介させる種類の蚊が、地球温暖化の影響により今後日本でも多く発見される可能性があるという。
次に挙げられたのは、”環境難民”。 地球温暖化により海面上昇が進み、現在住めなくなりつつある地域が世界的にはすでに出始めている。このような”環境難民”を、どこがどのように受け入れるかが問題になるのだという。
最後に上げられたのは、紛争。異常気象の発生により、水が多く手に入る地域もあれば、そうでない地域も出てくる。この水を巡って紛争が起きる可能性があるとの内容だ。日本にいるとピンとこないかもしれないが、水が貴重な国においては十分起こり得る話だ。
このように、多くのネガティブな内容が示されたが、池上氏は地球温暖化を脅威ではなく、機会として捉えることを強調していた。つまり、温室効果ガスを削減する産業にビジネスチャンスがあるということだ。しかも、前述したように、その機会は国内だけではなく国外にも広がっている。温室効果ガスを削減するために、自社がどのようなビジネスを行えるのか、一考してみてはいかがだろうか。
地球温暖化が今後のビジネスに与える影響……池上彰が分かりやすく解説
《まつかず・HANJO HANJO》
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