窓ガラスが自己発電!? 航空機・自動車向け“スマート・ガラス”
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同社が開発するWysips技術は、特殊な不可視タイプの太陽光発電フイルムをガラスや非透過性のパネルなどに組み込んで、バッテリーモジュールに電力を供給するものだ。搭載するデバイスごとにキャラクターを特化させた5つのシリーズに分かれており、主なものにはスマホなど透過型ディスプレイ向けの「Wysips Cristal」や、スマートウォッチの文字盤などに組み込むことを想定した「Wysips Reflect」、屋外サイネージ広告用の「Wysips Cameleon」などがある。
なおWysips Cristalの技術を搭載するスマホは現在京セラが開発を進めている。スマートウォッチについてはイギリスのVector Watch社が開発を進めており、「Wysipsの技術が本体を駆動するためのバッテリー供給をサポートできることから、従来の基準よりもバッテリーの持続を約3~5割向上することが可能」だと、デブロア氏はメリットを説く。
なお、Wysipsはさまざまなタイプのガラス素材、および電池材料と組み合わせることが可能なことから、今後の技術革新に対して柔軟に対応ができることも特徴だという。例えばモジュールの発電効率については、CIGSやアモルファスなど現在の主流とされている太陽電池の技術革新、あるいは今後新たに生まれる技術と組み合わせることによって高めていくことができるとしている。
“スマート・ガラス”向けの技術「Wysips Glass」も同社が特に力を入れる分野だ。同技術に対応する太陽光発電フイルムを窓ガラスに組み込むことによって“自己発電する窓”の開発が可能になる。これを例えばビルの窓ガラスに組み込むことにより、館内の自動ドアやアラームなど、さまざまな電源を必要とするアプリケーションにメイン、もしくはバックアップ電源が供給できる。説明会の会場にはビルディングなど建造物に組み込むための発電モジュールを展示していた。
現在ヨーロッパで最大の建設会社であるVINCI Construction社とパートナーシップを組んで技術展開を押し進めている。建材一体型太陽光発電(BIPV)は、今後の成長が見込まれる分野として位置づけている。またVision Systems社とは航空機用の自家発電型調光ガラスを開発中だ。透過光をガラスの濃さで調節できる電気式のシェードを駆動したり、パイロット向けのサンバイザーにも電源として組み込めるなど応用事例がデブロア氏より紹介された。今後は自動車業界にもこの“スマート・ガラス”の技術をアピールしていく。
Wysipsは可視光線によるバッテリー充電だけではなく、高速ワイヤレスデータ通信(Li-Fi)にも“Ready”な技術であることも注目すべきポイントだ。同社ではこれまでMWCなどの展示会の機会にLi-Fiによるデータ通信のデモンストレーションを公開してきた実績もあるが、まだWysipsのメイントピックスとして大きくハイライトされていない理由について、デブロア氏は「当社が得意とする半導体回路の設計は完成しているが、ICチップなどハードウェア側の対応を待っている。近く量産目処が立ってきたら、Wysipsとしても大きくハイライトしていきたい」と説明している。
何はともあれ、同社は今後もWysips技術をソーラー関連の新エネルギー技術の核としていくためにも、さまざまなパートナーシップの拡大に力を注ぐ考えだ。デブロア氏は「BtoC、BtoBのさまざまな製品を開発するメーカーが、熾烈な競争を勝ち抜くための“差別化”につながる技術を求めている。当社のWysipsがイノベーティブなスマート・エネルギー対応の製品やサービスの開発に一助となれるよう、技術革新を押し進めて行きたい」と意気込みを示した。
《山本 敦》
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