【サテライトオフィス最前線】きっかけは県の誘致 | RBB TODAY

【サテライトオフィス最前線】きっかけは県の誘致

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松江ブランチのオフィスが入居するテクノアークしまね南館。自然豊かなロケーションの中でも、ネットや会議室といった設備は充実している
松江ブランチのオフィスが入居するテクノアークしまね南館。自然豊かなロケーションの中でも、ネットや会議室といった設備は充実している 全 5 枚
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【記事のポイント】
▼補助金など地方自治体からの支援が充実
▼都市部に比べて.拠点開設・維持のコストが割安


■地方オフィス開設のきっかけは県の誘致

 本社や本部といった本拠地から離れた場所に、衛星のように開設するサテライトオフィス。在宅オフィスではなく、かといって開設地に事業エリアを拡大する支店や支部とは役割が異なり、あくまでも本拠地の機能の一部を分散するのがサテライトオフィスだが、ここ数年、IT企業を中心にサテライトオフィスの開設が増えている。

 HANJO HANJOを運営するイードでも、15年に島根県松江市にサテライトオフィス「松江ブランチ」を開設した。そのきっかけは島根県からオフィス開設の誘いを受けたことだが、以前から都内でのエンジニアの人材確保に悩まされており、地方でのオフィス開設を検討していたからだ。では、実際にサテライトオフィスの開設が、どのような成果をもたらしたのか。松江ブランチの開設準備を担い、松江ブランチのブランチマネージャーを務める山崎浩司氏に話を聞いた。

「島根県と松江市のご協力を得て、松江ブランチの開設準備を始めたのは14年頃です。松江市を訪ね、県と市の職員の方々の案内でオフィスの候補になる物件を見学したほか、IT系の人材を育成している学校を訪問したことで、サテライトオフィスの開設と人材の確保に手ごたえをつかみました」

 しかし、イードがサテライトオフィスの開設地として松江を選んだのには、他にも理由があった。ここ数年、過疎化をはじめとした地域創生への対策として、企業誘致に積極的な地方自治体が増えている。島根県と松江市も同様で、例えば、島根県ではソフト系IT産業向けに、県外からの進出かつ増加雇用従業員数が3人以上の場合に「企業立地促進助成金」を用意している。助成金額は基本的に増加雇用従業員×100万円だ。

 ほかにも島根県ではソフト系IT産業に対してさまざまな優遇制度を設けており、「ソフト産業家賃補助」としてオフィス家賃の半分以内、「ソフト系IT産業航空運賃補助」として出張などの航空運賃(島根県内空港または米子空港に発着するもの)の半分以内を補助している。コスト負担を軽減できるこうした公的支援を活用できる点も魅力だった。


■都市部と比べた物価の安さ・環境の良さもプラス

 都市部と比べてさまざまな面で費用を安く抑えられるのが、地方進出の大きな魅力だ。松江ブランチは企業団地ソフトビジネスパークの中核施設「テクノアークしまね南館」にオフィスをかまえるが、松江駅から車で約15分の立地で、10名がデスクを並べられるスペースで家賃が9万円の安さ。さらに、山崎氏の自宅の例を見てみると、通勤はオフィスから車を使って5分ほどで、住まいは駐車場付きの2LDKが家賃6万5000円。東京本社に勤務していた頃は約30分の電車通勤で、家賃は2Kで6万5000円だった。

 サテライトオフィスならではの設備としては、東京本社とのやりとりのために、テレビ会議用のカメラとパソコンを用意した程度。オフィスの物件探しは県や市の協力で特に負担なく見つけることができ、賃貸料も半分は補助金を受けている。人材募集も県と市の支援を受けられたため、「都内で求人広告に相当のコストをかけていたことを踏まえれば、開設準備からその後の維持まで、地方のサテライトオフィスには大きなメリットがあります」と指摘する。

 松江ブランチはエンジニア集団で、電話やメール、チャット、テレビ会議システムを使い本社とコミュニケーションを取っており、業務への支障はほとんどない。むしろ、オフィスの周囲を自然が囲む静かな環境であるため、「システム開発の仕事に集中できて、東京本社と比べて仕事の効率が上がっているように感じます」と山崎氏は打ち明ける。

 都市部に比べて地方は拠点開設・維持のコストが割安な上、資金をはじめとしたさまざまな公的支援を受けられるばかりか、仕事の効率化も夢ではない。コスト削減や人材確保といった課題に直面する中小企業にとっては、地方へのサテライトオフィスの開設が大きな解決策となる。

~サテライトオフィスの利点:1~事業所維持のコスト削減

《加藤宏之/HANJO HANJO編集部》

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