宇多田ヒカル、母の死を語る「私の原点は母」
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対談した糸井重里が「お母さんの存在って?僕らから見ても大きいお母さんだったけど」と切り出すと、宇多田は「ステージで母を見てると『うわあ、すごいなあ』って思う事はずっとありました。体からエネルギーのオーラみたいなものがわーっと出る感じ」と偉大さを語り、「すごく個性的ですごく純粋ですごくすてきな美しい人」と母の姿を思い浮かべた。
母が亡くなったことについては「デカいですね。あらゆる現象に母が見えてしまった時期があったんですよ」と、日常のすべてが母親を思い出させるほど母の死が衝撃だったことを明かしたが、「誰しも原点があって、私の原点は母だったから、私の世界、あらゆる現象に彼女が含まれてるのは当然じゃんと。私の体は親からきてるものですからまあ当然かと思えるように」なってから、やっときちんと母の死と向き合えるようになったことを明かした。
2015年春、長男を出産した宇多田。「もし母が亡くなった後に妊娠していなかったら、今もし子どもがいなかったら、仕事を始めようって思えてない」と語り、子を持つことで親の偉大さを実感し、新しい自分の立ち位置を見つけたことを明かした。
子供のこと、母親のこと、そして他でもない自分自身のこと。その全てを隠さず時に詩的な言葉で率直に語る宇多田には、かつての唇を尖らせたような、大人びた少女の面影は微塵もない。
8年ぶりのニューアルバム「Fantome」におさめられるという、亡き母に語りかける歌「道」では
「私の心の中にあなたがいる いつ如何なる時も 一人で歩いたつもりの道でも 始まりはあなただった」
と母への思いを綴った宇多田。母の死を乗り越え、新たな一歩を踏み出した「素の」宇多田の、アーティストとしてのこれからが注目される。
※「Fantome」のoはサーカムフレックスつき
《築島 渉》
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