ユーザーに利便性を、ECサイトに売上をもたらすフィンテック | RBB TODAY

ユーザーに利便性を、ECサイトに売上をもたらすフィンテック

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アイムインではキカクに参加するメンバーを集め、そこに発生するお金のやり取りを簡便にしている
アイムインではキカクに参加するメンバーを集め、そこに発生するお金のやり取りを簡便にしている 全 4 枚
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【記事のポイント】
▼ギフトの幹事にお金が集まりやすくなることで、予算の増額が期待できる
▼決済がより手軽になると購買機会は増える
▼決済の裏にあるマーケティング情報をフィンテックが拾い上げる


■フィンテックで実現した、一切現金を介さない割り勘

 前回の記事では株式会社47CLUBによる全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB(よんななクラブ)」と、同社が運営するギフト贈答専門サイト「おくりものソムリエ」の取り組みに見た、ECサイトの新たな可能性について紹介した。その中でも今後のECサイトの利便性を担うものとして、注目していくべき要素となっていたのがフィンテックである。

 インバウンド対策の一つにクレジットカード決済が挙げられることからも分かるように、これまで日本は先進国の中でも電子決済への対応が遅れているとされてきた。しかし、ここ数年ではさまざまなフィンテックサービスの普及もあって、徐々に現金離れが進みつつある。ネット上のボタン操作で、モノやサービスを買うのに抵抗がない、むしろ利便性を感じる若者は間違いなく増えているだろう。

 このような動きの中で、個人間や企業間を問わずにさまざまな形でお金の受け渡しをサポートするフィンテックサービスが生まれている。2016年10月に「おくりものソムリエ」とコラボした、現金を一切用いずに割り勘ができる「アイムイン」もその一つだ。

 アイムインの操作はSNSのイベント機能に近い。まず、幹事がサイト上でお金を募集する“キカク”を作成しシェア。次に、キカクの内容に賛同したメンバーはクレジットカードでお金を支払ってキカクに参加。すると、集まったお金が幹事の銀行口座へと振り込まれるという仕組みだ。金額を固定すれば割り勘になるが、募金のようにメンバーが思い思いの金額を幹事に渡すことも設定によって可能となる。

 アイムインを使えばCtoC(消費者同士)によるお金の受け渡しが、スマホやPC上の操作だけで完結する。割り勘というと真っ先にイメージされる飲み会のようなイベントでは、幹事が現金を集める手間を省けるし、代金があらかじめ分かっているコース料理などでは事前の集金も可能だろう。一方で、イベントでの会費の集金と同じぐらい、アイムインでの利用が多いシーンがギフトだ。

■ECの購買件数を増加させ、機会損失を防止

 サービスを運営するSMILABLE(スマイラブル)代表の澁谷洋介氏によると、アイムインでよく見るギフト系のキカクとしては、誕生日祝いや出産祝いといった、仲間が集まって贈り物をするケースが多いという。そこで注目したのが、おくりものソムリエだった。

 おくりものソムリエでは目的や贈り相手の属性などを選択することで、最適なギフトを案内している。このうち、「どのような目的でお探しですか?」という問いの選択肢には、「ご結婚祝い」や「妊娠・出産祝い」など、まさにアイムインで頻繁に利用されるキカクと同じケースが並んでいた。

「幹事の方がキカクを立てた後、その目的と同じ選択肢を選ぶだけでギフトが案内される。シームレスな関係性が自然と生まれ、そこに利便性が見いだせました。以前からアイムインはECと相性が良いと考えていましたが、中でもおくりものソムリエとの親和性の高さは際立っていましたね」


 さらに、おくりものソムリエとしても、アイムインとのコラボにはメリットがあった。それが販売における機会損失の防止だ。ギフトの予算を現金手渡しで集めようとすると、例えメンバーは気持ちを形にしたくても、“会えない”“忘れていた”“手持ちが無い”“連絡がなかった”といったさまざまな問題が付いてくる。そのため、本来集まるはずだった金額がそろわずに、贈り物のグレードを下げるような場合も少なくない。

 しかし、アイムインであれば時間や場所にとらわれず、スマホやPCでいつでもお金が集められる。公式サイトで公開されているキカクを見ても、当初予定の金額よりも多くの予算が集まり、より高額の品物が購入できたり、購入する品物を増やせたケースがいくつも見られた。

「お金のやり取りにおける手間やリスクなどの敷居を下げることが、アイムインの目的の一つです。結果としてお金のやり取りが増え、ECであれば購買件数の増加や購買単価の向上につながると思います。また、フィンテックサービスは若年層のユーザーが多いので、連携したサービスは若い層にも利用者を広げることになり、ユーザーの若返りという効果もあるのではないでしょうか」

■実店舗のイベントを“キカク”に、生まれる新たなO2O戦略

 おくりものソムリエとアイムインとのコラボを見ると、アイムインはほかにもさまざまなサービスと連携することで、利便性や機会損失の防止といったシナジーを生み出しそうだ。ただ、澁谷氏によると、それはネット上のサービスに限った話ではないという。キカクの中には実店舗のオーナーが立ち上げ、イベントの参加者を募集しているケースもあるようだ。

 例えば、都心にある居酒屋では、「お取り寄せグルメ&スイーツでクリスマスパーティー」というタイトルでキカクを募集している。SNSや店内の案内を元に、客は思い思いの額をお店に事前に支払い、当日は集まった金額を元に購入できる限りのグルメやスイーツが集められ、それがパーティーの目玉になった。

 この例ではアイムインはO2O戦略の一端となると同時に、参加費が前払いされることで代金未回収のリスク予防にもなっている。マグロの解体ショーのように一定人数がそろわないと採算が取れないキカクも、アイムインならリスクをかけずに募集ができそうだ。

「現在はこのような実店舗との連携も検討しています。消費者には決済における利便性を、店舗には新たなマーケティング情報を提供していく計画です」

 これまでギフトをグループ払い(みんなでお金を出し合うこと)するようなケースでは、おくりものソムリエのようなECサイトには、代表して購入した幹事の決済情報しか残らなかった。しかし、アイムインにはキカクに参加しているメンバー全員の記録がある。このような情報は、リセールやリテンションの機会に役立ちそうだ。

 例えば、メンバーへリセールのための案内を送ったり、情報を分析した上で統計データを店舗側に提供したりすることが考えられる。澁谷氏によると、早期の実現が見込めそうなのが、領収書と組み合わせた店舗情報の配信だ。

「領収書をメンバーへ配信するとともに、今月のオススメメなどの情報をご案内すれば、再来店や再利用の機会につながるわけです」

 身の回りにあるフィンテックサービスのメリットというと、真っ先に思いつくのがお金の受け渡しを楽にするという利便性だ。BtoCでの決済でいえば、消費者の利便性を上げることで、サービスの顧客満足度を向上させている。アイムインはそこから一歩進んで、サイトや店舗などの事業者側にもメリットを提示した。その気になればいち店長でも導入できそうな仕組みなだけに、中小企業はフィンテックを単なる決済手段として見るのではなく、その先にある経営上のメリットにも注目しておきたい。

《丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》

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