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女性による起業、挑戦すべきは今

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NATURUCK代表取締役で、エメラルド倶楽部代表理事の菅原智美さん
NATURUCK代表取締役で、エメラルド倶楽部代表理事の菅原智美さん 全 3 枚
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 HANJO HANJO編集部が中小企業のビジネスに関わるキーパーソンに、中小企業の現在を問う「HJ HJ EYE」。今回は、日本最大規模の女性経営者の会「エメラルド倶楽部」の代表理事で、貸会議室やレンタルオフィスを手掛ける株式会社NATULUCK代表取締役でもある菅原智美さんに、女性経営者の現状について話を伺った。

■自分の“変えたい!”をカタチとする成功モデル

――アメリカの選挙では初の女性大統領は生まれませんでしたが、東京では小池知事が手腕をふるうなど、女性の社会進出が活発化しているように思えます。安部政権では女性の活躍を推進するような政策を打ち出していますが、女性が起業する上で、今は良いタイミングなのでしょうか?

菅原 創業支援の補助金が手厚くなったことで、マーケットの雰囲気は良くなりました。エメラルド倶楽部は女性経営者の会ですが、起業を目指す女性を対象としたエメラルドジュニア会員も募集しています。この会員が最近増えているのを感じていますね。

 また、これは先月に菅義偉内閣菅官房長官にお会いしたときにもお話させていただいたのですが、国が取り組む創業者向けの起業支援はあるのですが、創業した会社を維持して、成長させていくための支援が不足していると思います。創業支援に200万円を支給されても、それが無くなればつぶれてしまう会社もあると耳にしています。世界には創業支援の融資を行った際に、経営者としての研修を義務付けている国もありますが、こうした施策も必要ではないでしょうか。

――菅原さんの著書に、「女性社員の割合が3割を超えると組織が変わる」というお話がありました。女性が経営者になることは、その会社にとってもプラスになる部分がありそうです。

菅原 女性経営者は起業にあたって、日常生活において不便や不満、不足と感じていることを解決するようなビジネスを展開する傾向にあります。これが世の中の80%を握っているといわれる女性の消費に、上手く対応しているのではないでしょうか。一般に男性の経営者には日本一の企業になりたい、上場したいというように、大きな目標を持つ方が多いです。一方で、女性経営者は大きな成功を望む人は少ないですが、芯の強いところがあるので、会社を継続させていく力は強いと思います。

――一方で、中小企業庁が挙げている「女性起業の現状と課題」では、女性経営者はノウハウが不足している部分があるとしています。

菅原 男性社員は企業に就職すると、次第に部下を持つようになり、マネジメントや経営の感覚を身につけていきます。一方、女性は事務職を任されることも多く、部下を持つという社会経験を身につけにくいのは事実ではないでしょうか。このため、大きな視野で見ると、女性の管理者を増やすことは、成功する女性の起業家を増やすことにも繋がると思います。



■アジアの和食や美容ブーム、女性経営者の挑戦がはじまる

――エメラルド倶楽部では以前から女性の社会進出を支援してきました。元々は菅原さんが一人で始めた活動だったと伺っています。

菅原 起業したばかりの経営者は、売上や雇用、販促などさまざまな問題を抱えているものです。私の場合もそうでしたが、その時に周りで相談できる女性の経営者がいませんでした。ですが、女性でも家事やプライベートを両立させたうえで、ビジネスを成功させている人は絶対にいるはずだと。そういう方にお会いして、お話を聞きたいと考えたのがきっかけです。

 はじめは自分自身の成功のために、上場企業の経営者によるセミナーを開きました。さらに、私を含めた会員の女性経営者が求めるものを提供することで、今のエメラルド倶楽部の形が徐々に生まれていったわけです。

――菅原さんはエメラルド倶楽部の活動として、海外を頻繁に訪れています。先ほどお伺いした“女性経営者が求めるもの”が今、海外にあるのでしょうか?

菅原 エメラルド倶楽部では海外ネットワークの構築を目的の一つとしています。韓国やモンゴル、ベトナムなどの政府が支援する女性起業家の組合と提携し、来日の際にはビジネスマッチングをする契約を結んでいます。このような国を今後も増やしていきたいですね。

 海外進出にあたって経営者の一番の問題が、現地の情報が無いということです。悪質な事業者の話も聞きますので、まずは信頼のおける現地の経営者との繋がりが大切ではないでしょうか。

 エメラルド倶楽部では年に2回の海外視察を行っていますが、逆に海外から女性経営者が来日することもあります。最近では朴槿恵氏が大統領になったことで、韓国では女性支援の動きが活発化しています。去年には100人の女性経営者が政府の招待で訪日し、倶楽部のメンバーと情報交換を行いました。

――これはある経営者に聞いた話ですが、起業に興味があっても、何をしていいか分からない女性が増えているようです。海外進出はその一つの方向性になりそうですね。

菅原 先日、インドで日本料理店を訪ねたのですが、地元の方が見よう見まねで寿司を作っていて、正直にいうとマズイわけです。インドでは日本料理店が人気を集めていますが、そのほとんどはインド人か韓国人が経営しています。これは現地で聞いた話ですが、日本人は視察に来て、調査を繰り返したうえで、結局は行動を起こさないといいます。一方で、韓国人は来て見て良いと思ったら事業を始め、失敗したら撤退するというスタンスだそうです。同じ話はインド以外の国でも聞きました。

 女性経営者が多い業種に美容関連の事業がありますが、日本で起業すると他店との激しい競争にあいます。それよりも海外に出れば、人件費などのコストを安く抑え、日本と同じような売価で勝負ができる国もあるわけです。インドでは経済成長とともに美白やエステ、ネイルサロンなどが注目されていますが、こうしたビジネスに日本の経営者はもっと挑戦していくべきだと思います。

 フィリピンで成功しているある女性経営者に、月に10万円程度の利益で、運転手や家政婦、ベビーシッター付きの環境で仕事をしている方がいます。世界にはこういう経営者もいることを、広く女性に伝えていきたいですね。

<Profile>
菅原智美(すがはらともみ)さん
全日空エンタープライズ、リクルートを経て、95年に携帯ショップを手掛けるLiCROSSに入社。05年に代表取締役に就任する。07年に女性起業家の社会進出と育成を目的としたNATULUCKを設立。09年にはエメラルド倶楽部を立ち上げ、女性経営者の支援活動を手掛ける。


■ 取材を終えて
まだまだ女性経営者の数が少ない日本。お隣の台湾は中小企業群が強靭な経済を支えているが、そこでの女性経営者は40パーセントを超えるという。新しいイノベーションやサービスが、女性の活躍において生まれている良い証左といえるだろう。振り返って日本、ここ5年あまりで女性経営者の数は増えつつあるが、世界には追いついていない。ある意味少数者である、そんな日本の女性経営者たちに意見交換の場を提供しているのがエメラルド倶楽部だ。代表の菅原さんは経営者のよき相談相手として助言を与えるメンター的な存在でもある。女性経営者が増えれば、日本のワークライフバランスもきっと変わっていくだろう。
(HANJO HANJO 編集長・加藤陽之)

【HJ HJ EYE:8】女性による起業、挑戦すべきは今

《HANJO HANJO編集部》

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