![「TREK TRACK」の無料体験会が20日、瑞牆山において開催された](/imgs/zoom/573835.jpg)
![「TREK TRACK」はわずか100gの小型軽量デバイス](/imgs/zoom/573836.jpg)
■TREK TRACKとは?
TREK TRACKは、山岳における遭難事故を減らすことを目的に開発されたサービス。わずか100gの小型軽量なデバイスを携帯することで、山を登っている本人、離れた場所にいる家族、そして山岳管理者に登山者のリアルタイムな位置情報を伝えられる。スマートフォンあるいはPCでログインすると、山を俯瞰するアングルで描かれた3Dマップに登山者の現在位置とそれまでの登山経路が示される仕様。
この日、スタッフの登山に同行した筆者も山中で画面を確認したが、山の起伏、山頂までの距離などが把握しやすかった。博報堂アイ・スタジオ TREK TRACK推進室が手がける同サービスは、9月1日より一般公開する。レンタル価格は1日990円を予定しているが、10月まではキャンペーンにつき無料で貸し出していくという。
![手持ちのスマートフォンと連携、山中の登山者に正確な位置情報を提供する](/imgs/zoom/573837.jpg)
![自宅で待つ家族もオンラインで情報の確認が可能](/imgs/zoom/573838.jpg)
博報堂アイ・スタジオの笹垣洋介氏に話を聞いた。TREK TRACKでは、登山者が携帯するデバイスと山小屋などに設置されるアンテナの間で通信をおこなう。このため携帯電話の圏外エリアを登山中でも問題なく利用できる。この瑞牆山では、登山口にある「みずがき山荘」に10km圏内をカバーできる小型のアンテナが立てられた。これにより麓から山頂まで山全体をカバーできているという。ネットワークの通信規格には周波数920MHz帯による低消費電力のLPWAを採用。このLPWAについて、笹垣氏は「電球1個ほどの電力しか消費しないため、ソーラー発電でも運用できます。またアンテナも小型なので、協力してくださる山小屋にかける負担も最小限で済みます」と説明している。
![瑞牆山では、登山口にある「みずがき山荘」にLPWAに対応した小型のアンテナが立てられた](/imgs/zoom/573839.jpg)
![麓から山頂まで山全体をカバーできている](/imgs/zoom/573840.jpg)
なお、専用デバイスには遭難時に救助を呼べる「HELP」ボタンを搭載。これを押すと、TREK TRACK事務局を経由して緊急連絡先に電話連絡される設計になっている。事務局では24時間365日体勢で登山者の安全を確保していく考えだ。
![入山して念入りにサービスの最終チェックを行う博報堂アイ・スタジオ TREK TRACK推進室 クリエイティブ責任者の笹垣洋介氏とスタッフら](/imgs/zoom/573841.jpg)
![スマホのUIのイメージ](/imgs/zoom/573842.jpg)
■市の観光課も期待
登山者の安全を守る取り組みに、自治体も注目している。同日、北杜市 観光課にも話を聞いた。山梨県の北西に位置する北杜市は、山岳に囲まれたロケーションにある。「山梨県内の遭難件数は、平成28年には150件弱にも上っています。なかでも南アルプスの甲斐駒ヶ岳、八ヶ岳のエリアは事故が頻発しています」と担当者。
ではTREK TRACKの導入により、どんな点が改善されそうか。担当者は「これまでは、遭難した場所を特定するまでに多くの時間を要していました。TREK TRACKでは仮に遭難事故が発生した場合、得られた位置情報から捜索エリアを絞ることができるので、発見の確率が高まります」と期待感を示した。
登山者の行動パターンがログに記録されるので、登山中に迷いやすいポイント、遭難の危険があるポイントを特定できるのもメリット。これをもとに、市では注意を喚起する看板や転落防止の柵を設置する、といった予防策がとれる。
![市ではTREK TRACKで得られたデータをもとに、注意を喚起する看板や転落防止の柵を設置するといった予防策をとっていく](/imgs/zoom/573843.jpg)
このほか市では、観光地域にデバイスの返却コーナーを設けることで、下山した後で温泉に立ち寄ってもらう、などの経済効果にも期待しているという。北杜市の観光協会では今後、ホームページなどを通じてTREK TRACKの周知をしていく方針だ。
■登山以外のシーンでも利用を検討
博報堂アイ・スタジオの笹垣氏によれば、9月1日のサービスインを前に続々と予約が入っているという。同氏は「個人利用が中心で、まずはデジタル感度の高い方を中心に認知が広がっている印象です」と話していた。
春夏秋冬を問わず、山には1年を通じて色んな楽しみ方がある。そこでTREK TRACK推進室でも、スキーやスノーボードといったレジャーを含む、様々なシーンでの活用を視野に入れている。直近では、今冬にバックカントリーエリア(手付かずの自然が残されているエリア)でサービスを開始予定。雪山登山における遭難者、転倒などによりコースを外れてしまったスキーヤー、スノーボーダーの救助に役立てるためだ。
現在、長野県や群馬県をはじめとした地方自治体とも協議を重ねている。今後、利用可能な山岳エリアがどんどん増えていくことを期待したい。
![この日、みずがき山荘前ではサービスの説明に耳を傾ける登山者の姿も多く見られた](/imgs/zoom/573844.jpg)