【インタビュー】「第45回東京モーターショー2017」開幕!木暮祐一が考える車とICTの未来 | RBB TODAY

【インタビュー】「第45回東京モーターショー2017」開幕!木暮祐一が考える車とICTの未来

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【インタビュー】「第45回東京モーターショー2017」開幕!木暮祐一が考える車とICTの未来
【インタビュー】「第45回東京モーターショー2017」開幕!木暮祐一が考える車とICTの未来 全 8 枚
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来たる10月27日、「第45回東京モーターショー2017」がいよいよ開幕する。2年ごとに開催されている、世界でも有数の自動車ショーだ。第45回となる今回のテーマは、「BEYOND THE MOTOR」。クルマという“移動手段”が大きく変化しようとしているいま、東京モーターショーをどのように見るべきか。モバイル分野のジャーナリストで、青森公立大学でICTの研究に従事する木暮祐一准教授に聞いた。

■ハンドルとタイヤがついたタブレット

--- 5年前にテスラに乗って衝撃を受けたそうですね。

木暮:率直な感想を一言で申し上げると「これはハンドルとタイヤがついたタブレットだ」と。その一言に尽きますね。ドライバーシートに収まると全く別の世界で、形は車ですが完全にタブレット。液晶に囲まれていて、タッチパネルで操作ができる。

インパネの部分も完全に液晶になっていて、従来そこにはスピードメーターとタコメーターと、配置されるものは決まっていて、“車はこういうものだ”という固定概念があったけれど、そこにディスプレイがあり必要に応じて表示が変わっていくことに衝撃を受けたわけですね。



更に驚いたのはソフトウェアアップデートがあり、インターフェースそのものが変化したり、昨年には自動運転機能を追加するアップデートもありました。インパネの表示が変化し、周りの車をセンシングして、横にトラックがいるなどの状況がすべてインパネから分かる。まず、車そのものがセンサーになっており、人間に伝えるためのデバイスになっているという点で、車という枠を完全に超えてしまっているという衝撃を受けました。

■最新の車はこれまでと別モノ

--- 自動運転機能も試したそうですね。

木暮:はい。車がここまで自分で判断し、車道を走るという技術の進歩に驚かされました。私自身は運転が大好きなのですが、長距離移動が多いので、そこまでの高速道路での移動は、体力を無駄に使わずに移動して、行った先では風景を楽しみながらドライブする、ということができるなと思いました

そういう点では、今店頭に並んでいる最新の車は、4、5年前の車とはまったく別のものになっていますよね。30年間ほど車に乗り続けてきていますが、25年間の車の進化と、ここ数年の進化はまったく違うものですよね。



--- 動力性能の進化から、電子制御技術の進化ということですね。

木暮:そうですね。車は長い歴史があるので、メカとして成熟しきってしまっていますよね。ところが近年のICTの進展で、ICTが車に入り込んできたということです。

私のゼミにも、車が好きな学生がいますが、「自動運転は怖い」と言うんです。私も以前はそう思っていたのですが、一度体験すると「これはすごいな」となる。テスラで体験した自動運転は衝撃でした。むしろ人間よりも安全と説明されました。これはいくら説明しても理解できないのですが、乗ればすぐに理解できます。それほど衝撃的でした。


■車が自分のアシスタントに

--- 自動運転のレベル3になると、自動運転モードの時は、例えばスマートフォンを見ていてもいいということになります。スマートフォンの画面を車両の大型ディスプレイにミラーリングして、ストリーミング映像を観たり、ということも可能ですね。

木暮:車両とスマートフォンを連携して使うという利用方法は、実はまだまだ過渡期の使い方だと思っています。例えば、Googleホームなどのスマートスピーカーが話題ですよね。スケジュールや映像、音楽など様々なコンテンツを音声で呼び出せるものですが、自分のIDに連携して、自分自身の好みに基づいたコンテンツを、音声で呼び出せる、という点が重要です。

--- 車に音声認識インターフェースが搭載され、クラウドのIDと連携してパーソナライズされた情報を呼び出せる。



木暮:こういうソリューションが車に入ってくる気がしているのです。そうなると、車はディスプレイとマイクさえあればよくて、情報がすべてネット経由で入り、音声で操作ができる。車そのものが自分のアシスタントとなってくれる、車から離れた時はスマートフォンがアシスタント、そんなイメージではないでしょうか。

--- なるほど。

木暮:一般道の自動運転はまだ少し先でしょうが、行き先を決めればあとは自動運転で、くつろいで移動することができる。そんな時に自分が欲するものを、精度が高いクラウドのAIが提案してくれる。こんな音楽を聞きませんか、こんな映像はどうですか、と。数年で実現しそうな気がしますよね。

■スマートフォンのように車を買う

木暮:これは青森だけの売り方ではないと思いますが、そのあたりの車屋さんを見ていると軽自動車が月々1万円という値段がついていて、1万円毎月払っていると、5年間乗れるという売り方をしています。

--- それはリースか何かですか?

木暮:実際には残価設定ローンでしょうか。車検・整備代も含めて月々1万円で好きに使ってください、5年経過すると交換、という売り方です。学生はそういったものを使って車を維持しているのではないでしょうか。

--- それなら、数年ごとに何百万もするものを買い換える、ということではないですね。
木暮:軽自動車に毎月1万円で乗れるのであれば、携帯電話と同じような金額なので、車がスマートフォンになったと思えば、みなさん納得して車を使う方が増えるのではないかと思います。

--- 確かにそうですね。スマートフォンをそれなりに使っていると、月1万円になってしまいます。

木暮:先日、ドイツの通信キャリアと自動車ディーラーが組み、スマートフォンを契約すると2年縛りで型落ちのプジョーの新車がついてくる、といった売り方がありました。少々割高な単価ではありますが、車の売り方においてもスマートフォンのようなモデルが出てきたという印象を受けましたね。

--- まるでガジェットを買うかのようですね。日本ではあまりピンと来ませんが、世界には結構そういうところもあるみたいですね。

木暮:そうですね。それに車に対してのニーズも変わってきたと感じますね。我々の世代は「走りが…」などと色々考えていましたが。



--- 学生の使い方や買い方を見ていて、その様な変化を感じますか?

木暮:車に必要以上の思い入れがありませんよね。燃費がいい、カラーはこれがいい、くらいはあるでしょうけれども、それ以上の期待を込めてなさそうです。となれば、なおさらシンプルな車で、エンターテイメントを充実させるという一つの流れがあっても良いかもしれませんね。つまり、インターネットに繋がり、コンテンツがどれほど利用しやすいか、利用できるのか。

--- 加速が速いとか、カッコいいではなく、スマートフォンの選択基準ですね。

木暮:それでも車ならではの提案がユーザーにできるのではないか、と思います。将来の方向性としてそちらを目指さなければ、今この時代において手遅れなのではないかという気がしていますね。

■本気でオープンプラットフォームを

--- 車がデータ収集のキーデバイスになる、と言われています。

木暮:自動車から色々なデータが収集されて、それがビッグデータになることが重要です。それによって、より多くのサービスに発展していくのではないかと思います。



ただその条件として、車がオープンプラットフォームになることが必要です。現状はメーカーに閉じたプラットフォームで、メーカーのお仕着せサービスが付いている。これをオープンにして、ユーザーが作ったアプリを自由に動かせる環境を搭載していく必要があると思います。オープンなAPIをどんどん搭載し、車で利用する機能やサービスを、ユーザーが自由に開発できるというところまで持っていくと、もう一度車が盛り上がる時代がやってくる。

日本でもプログラム教育を義務化するという動きがあるじゃないですか。これからの子供達は、実はコンピューターでサービスを作ることが得意になってくるかもしれない。日本の車はオープンで、ユーザーの触れる部分については開発が可能だということになると、これからの若い世代がそこに飛びつき、車をものづくりのプラットフォームとして応用サービスを色々考えるようなキッカケになるのではないでしょうか。

--- スマートフォンよりも、やれることはよほど多いはずですよね。

木暮:カメラもありますし、センサーはたくさん付いているし、移動するし、GPSも正確だし、大型液晶にヘッドアップディスプレイ。もちろん、動くという特性上制約も危険も多いと思うのですが、そこは客観的な線引きをすればいい。

そうなると、車そのものがスマートフォン化していく。利用できる機能やアプリケーション、外付けデバイスの連携も可能で、サードパーティが製品化して色々と取り付けられたり、子供達もプログラミングできるくらいになれば、盛り上がりそうですよね。自動車産業を持っている日本ならでは、だと思います。日本のメーカーがこれから頑張っていく上でそちらの方向もありかなと思います。

--- モビリティが楽しくなりそうですね。日本のアプリプロバイダーは、ユーザーの囲い込みやリテンション、マネタイズも一流ですからね。車の能力をフルに使って面白いことをするとなると…すごく楽しみです。

木暮: そういう方向に行ったら面白いですね。プログラミング教育をうまくやれば、ユーザーをもっともっと増やして若い人たちが新しいものを作ってくれるような環境を作って。車が、新しいものをつくるためのプラットフォームとして広がると面白いですよね。

--- そのためには、オープンプラットフォームにするというメーカーの覚悟が必要ですね。それから、開発コミュニティを盛り上げるノウハウも必要です。メーカー自らでなくてもいいので。

木暮:開発者コミュニティの多くはOSベースで動いています。AndroidやiOSですね。そういう考え方でいくと、車特有のOSが必要になってくると思うのですが、足並みが揃えられるかどうか。

OSとは言わないかもしれません。プラットフォームで良いと思います。そこは今、日本の自動車メーカーがメーカーごとに取り組むのではなく、オールジャパンで足並みをそろえて世界の自動車会社に対抗できる一つのコミュニティを作り、日本の車にはプラットフォームが入っていてそれらに搭載できるアプリケーションを世界のユーザーに作ってもらう。日本はまた一つ、自動車で成功できるのではないかと思いますね。

--- ワクワクする提言ですね。

木暮:モバイルコンテンツ市場を、スマートフォンのオープンなプラットフォームに市場を席捲された反省を、自動車メーカーにもぜひ理解してもらい、今こそオールジャパンで車共通のアプリケーションプラットフォームを構築してほしいと思います。

--- ガラケー時代は、アプリから使えるAPIは必要最小限で、主観的な審査もありました。そういった閉じたプラットフォームから生まれるサービスは、結局オープンなプラットフォームから生まれるサービスに取って代わられた、というところに教訓がありそうですね。

■車の進化は体験しなきゃわからない



木暮:最近、車を新車で購入した方はご存知だと思いますが、ほとんどの方はまだ“自動運転”と言われてもクエスチョンだと思います。実はほとんどの車に、運転支援機能が載っており、当たり前に使えるようなものになってきていますよね。こういう機能の凄さは、乗らないと分からない。

--- 第45回東京モーターショー2017にも、VRや体験コーナーがたくさんあるので、ぜひ乗って体験して欲しいですね。

木暮:そうですね、乗っていただきたいですね。危険どころか安全・安心であるということを体験していただきたいですよね。それがやはりICTの進化であるし、車もこれから情報通信端末の一つになるということも体感できるのではないかと思います。

--- 楽か楽じゃないかという次元ではなく、車というモビリティの使い方が変わってライフスタイルも変わる可能性があるなと思うほどです。

木暮:しばらくモーターショーから遠ざかっていた人こそ見ていただきたいですし、モーターショーに縁がなかった方も車の進化はとんでもないことになっていると、スマートフォンに変わるエンターテイメントは車だというくらいです。それくらいになりそうな気がしますね。

※「第45回東京モーターショー2017」
http://www.tokyo-motorshow.com/

《RBB TODAY》

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