【仏教とIT】第22回 スター坊主、日本を救う!! | RBB TODAY

【仏教とIT】第22回 スター坊主、日本を救う!!

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【仏教とIT】第22回 スター坊主、日本を救う!!
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リアル坊主めくり誕生



「坊主めくり」といえば、言わずと知れた、百人一首の絵札を使ったカードゲームである。私も子供時代に楽しく遊んだのを思い出す。この「坊主めくり」は、和歌を理解できない子供にも、天皇やお姫様や坊主などの描かれた絵札をめくって、昔風情を楽しめるようにうまく作られている。しかし、札をめくって出てくるのは、はるか昔のお坊さんである。どうしてもリアリティにとぼしい。ときめきも得がたい。一方で、私たち現代のお坊さんは、和歌を詠むスキルこそ持ち合わせていないが、ツイッターをバズらせたり、キャッチーな動画を撮ったりするスキルに長けていたりする。そのことはこのコラムでも紹介してきたとおりである。



だったら、現代のお坊さんをキャスティングした「坊主めくり」のほうが楽しいはずである。そんなニーズに応えてくれる商品が、去る11月15日に誕生した。法語カレンダー「スター坊主めくり」である。東急ハンズ新宿店では「イチ推し」と紹介して販売されているのをはじめ、全国の東急ハンズや書店などで取り扱いされている(https://twitter.com/Hands_Shinjuku/status/1196004964453085184)





全国巡礼の旅を経て



「スター坊主めくり」は私も監修役としてお手伝いしたが、企画および制作したのは株式会社便利堂である。美術印刷や美術出版を専門とする会社で、寺院の美術品を取り扱うことも多く、私との縁も、浄土宗総本山の知恩院で一緒に仕事をしたことから始まっている。だから、硬派なスタイルの会社だと思っていたのだが、「ポップなアイテムを作ってお寺文化を現代に訴求したい」から、「お坊さんカレンダーを作りたい」というまさかの相談を受けた。

 そこで、ミュージシャン僧侶、精進料理人僧侶、大道芸人僧侶など、個性味あふれるお坊さんを私がセレクトしてコンタクトをとったら、皆さん快く応じてくださった。取材と撮影のために、全国各地の「スター坊主」のもとへと巡礼の旅を続け、約2年の制作期間を経て完成に至った。

“禅のスペシャリスト”細川晋輔さんを取材すべく東京へ


“慈しみ系シンガーソングライター”三浦明利さんを訪ねて奈良へ


 このカレンダーは、お坊さん全31人による、全31枚の日めくり式になっている。
つまり、毎朝めくるたびに、今をときめくスター坊主があらわれて爽やかな気分を味わえる。そして、ありがたい言葉をいただいて、一日をただしく生きていく励みをもらえる。なんとも気の利いたアイテムである。登場する僧侶の人数からしても、百人一首に登場する坊主は13人だから、古典的な「坊主めくり」よりも、「スター坊主めくり」のほうが豪華にキャスティングされている。

めくるたびに生活を応援してくれる言葉が届く。毎月一日の言葉は「煩悩の数だけ強くなれる」


 31人のキャストのなかには、この連載で以前取り上げた稲田瑞規さんや、遠島光顕さんも登場する。稲田さんには原稿制作、Web制作、コピーライティングでも協力してもらった。他にも、増田俊康さんはカレンダー発売と同時に、昨年バズった「#僧衣でできるもん」タグをつけて、大道芸を披露してくれた。





 そういう点を考えると、ITをフル活用して現代に仏教を届けてきた人たちの力を結集して作ったカレンダーであり、まさしく「スター坊主めくり」の名に恥じないのである。


お坊さん、群雄割拠



 ただ、問題がひとつあった。選に漏れたお坊さんの妬みをかったことである。落選組は ツイッター上では、「裏坊主めくり」のタグをつけて、本家の「スター坊主めくり」を挑発し続けている。

そんなツイッターのタイムラインを見ながら思うのだが、ITインフラがない時代には、お坊さんは、宗派や地域の枠内で生きていくのが基本だった。しかし、ITインフラのおかげで、宗派や地域を超えて連絡を取り合えるようになったし、この10年ぐらいはイベントを一緒に作ったり、ボランティアに従事したりするのも当たり前になった。

 それでも、31人のお坊さん(に加えて「裏スター坊主」の皆さんも)が、ここまでしのぎを削って、個性をぶつけ合うというのは、初めてのことである。お坊さん40人の写真集『美坊主図鑑』が出版されたのは7年前で、この書籍もかなり世間をざわつかせたが、掲載された40人が美坊主ランキングを競い合うことはなかった。当時はまだ、お坊さんは個性など求めずに、黙々と仏道修行に励むべきだという空気感があったからだろうと思う。


アイドル化しつつある僧侶現場



 そう考えると、「スター坊主めくり」は、新しい時代の扉を開いた商品と言えるだろう。そしてその扉の向こうにあるのは、「お坊さんのアイドル化」への道だと思う。最近、私がトークイベントなどに出演すると、終演後にチェキを一緒に撮ってほしいと言われる。せっかく参加してくれた人の頼みを断るのも失礼なので、チェキを撮り、サインやメッセージを書いて渡したら、大変喜ばれる。熱心な人は、テーブルにチェキを並べて、一緒に食事したりもしている(これを「チェキ飯」というらしい)。

お坊さんと一緒にご飯を食べる「チェキ飯」。元気がもらえるらしい……


 このような現象を目の当たりにすると、さすがに戸惑いを覚える。だが、地域の顔として「お坊さんらしさ」を演じてきたお坊さんは、昔からアイドルだったともいえる。その役割をいま取り戻しつつあるとすれば、決して悪いことではあるまい。私としては、お寺文化がふたたび心のよりどころになり始めていることを、恥ずかしさを我慢して、積極的に喜びたい。

 ちなみに、「スター坊主めくり」には、購入者専用のアンケートフォームがあり、「心に残った僧侶」に投票できるようになっている。まさしく、アイドルグループの総選挙のようである。「No.1スター坊主」がいつどのように発表されるのかは未定だが、単に卓上のカレンダーを眺めるだけではなく、心に残る言葉をくれた推し坊主への投票してもらえれば、その一票は必ず届く。ファンの気持ちが集まれば、「スター坊主」はますます張り切って期待に応えようと精進するはずである。

 もちろん、「お坊さんのアイドル化」とか「スター坊主」などといえば、批判的に思う人があるのは想像にかたくない。しかし、現代に突き刺さる生き様を求めるなかで、お坊さんがファンの心を打ち、SNS上でのインタラクティブなつながりを生んでファンを増やしていく。それはきわめて現代的な布教の形ではないか。私が感じているのはむしろ、スター坊主時代の旅への新鮮なときめきである

池口 龍法氏
池口 龍法氏

【著者】池口 龍法
1980年兵庫県生まれ。兵庫教区伊丹組西明寺に生まれ育ち、京都大学、同大学院ではインドおよびチベットの仏教学を研究。大学院中退後、2005年4月より知恩院に奉職し、現在は編集主幹をつとめる。2009年8月に超宗派の若手僧侶を中心に「フリースタイルな僧侶たち」を発足させて代表に就任し、フリーマガジンの発行など仏教と出合う縁の創出に取り組む(~2015年3月)。2014年6月より京都教区大宮組龍岸寺住職。著書に『お寺に行こう! 坊主が選んだ「寺」の処方箋』(講談社)、寄稿には京都新聞への連載(全50回)、キリスト新聞への連載(2017年7月~)など。

■龍岸寺ホームページ http://ryuganji.jp
■Twitter https://twitter.com/senrenja

《池口 龍法》

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