2045年の世界は、全世界同時デフォルトとAIの進化による計画的かつ持続可能な戦争「サスティナブル・ウォー」の渦中にあり「AIによる人類滅亡への危機を日常レベルで実感できるまでには衰退の進んでいない近未来――」(公式サイトより)という状況だ。草薙素子をはじめとした公安9課は解体され、彼女たちは傭兵として“この世の春”を謳歌しているのだが、ストーリーの幕開けが、これまでの舞台である日本とはうって変わりアメリカ大陸西海岸における戦闘となっていることで、世界情勢の変化を実感させられる。また、攻殻機動隊の世界に横たわる過去の“大戦”を彷彿ともさせ、まさに「少佐」という呼び名の由来が垣間見られるようなスタートでもある。
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全12話となる同作の最大の特徴は、3DCG作品になった点だ。スタッフは、『攻殻機動隊S.A.C.』の神山健治氏と『APPLESEED』の荒牧伸志氏の2人によるダブル監督となり、Production I.GとLOLA DIGITAL ARTSによる共同制作スタイルが採られている。そこで気になるのが、画的なクオリティとその動きだ。
まず、画について。イリヤ・クブシノブ氏によってデザインされた草薙素子、そして新キャラクターの江崎プリンは必見。少佐はこれまでに比べて唇や頬がややぷっくりして幼い印象を受けるところに新鮮味を感じるし、瞳の彩りも透明感のあるカラフルさがあり、美しい。これはプリンも同様で、女性の肌表現の華やかさは、フル3DCGならではの魅力ではないだろうか。いっぽうで、荒巻の毛髪については視聴を始めた頃は若干違和感を感じた。しかしそもそもが違和感のある髪型であり、これがあまり細かく描写されていても逆に気になってしまうだろうから、これはこれで正解なのだろうと思われる(荒巻の頭髪表現は、人類永遠のテーマなのかもしれない)。
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そして、細かい点だがキャラクター以外の、背景描写のリアリティにも触れておきたい。たとえば車両のテクスチャに細かいラメ表現が施されていたり、首相官邸のドアの紋様も微細に描かれているなど、情報量の多さが小気味良い。