“能力者祭り”な2023年夏の韓国ドラマ界、最推しはディズニープラス配信『ムービング』! | RBB TODAY

“能力者祭り”な2023年夏の韓国ドラマ界、最推しはディズニープラス配信『ムービング』!

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“能力者祭り”な2023年夏の韓国ドラマ界、最推しはディズニープラス配信『ムービング』!
“能力者祭り”な2023年夏の韓国ドラマ界、最推しはディズニープラス配信『ムービング』! 全 8 枚
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 偶然か否か、今夏配信の韓国ドラマは“能力者祭り”だ。

 悪霊狩りをするための特別な力を持つカウンターたちの死闘を描くバトルアクション『悪霊狩猟団:カウンターズ』シーズン2(Netflixで配信中)、人の嘘を見抜く力を持つ主人公と天才作曲家が織り成すラブコメ『無駄なウソ-誰にも言えない秘密-』(U-NEXTで配信中)、お尻を触ると相手の過去が読める主人公と左遷された刑事が様々な事件に挑むコメディ『ヒップタッチの女王』(Netflixで配信中)、そして、多様な能力者たちの親子が迫り来る悪に立ち向かうヒューマンドラマ『ムービング』(ディズニープラス スターにて独占配信中)が挙げられる。

 いずれの作品もそれぞれに良さがあるが、特に筆者の心を掴んだのは、一挙7話配信で始まった『ムービング』だ。(以下、ネタバレあり)

■筆者プロフィール
山根由佳
執筆・編集・校正・写真家のマネージャーなど何足もの草鞋を履くフリーライター。洋画・海外ドラマ・韓国ドラマの熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。X(Twitter):@ymndayo


青春、アクションノワール、ヒューマンドラマが絶妙に融合


 物語で始めに紹介されるのが、歩くよりも先に宙に浮くことができたキム・ボンソク。トンカツ屋を営む母イ・ミヒョンによる体重管理のもと、周囲に能力を隠しながら生きてきた高校生だ。そんな彼が出会ったのは、幼少期、自動車事故を無傷で生き残った過去を持つ転校生チャン・ヒス。ボンソクはヒスに淡い恋心を抱き、それにより秘密を明かさざるを得なくなるが、彼女も再生能力を持っていることを打ち明け、2人の距離は一気に近づいていく。

 しかし、彼らの仲を妬んでいた(と思われる)学級委員長イ・ガンフンが、クラスメイトの前で能力を使い、危機に陥ったヒスを救ったことで、三角関係へ発展していく……!? 初恋を体現するボンソクとヒスのやりとりは、見ているこちらもキュンとするシーンのオンパレードで、青春ドラマとして大いに楽しめる。

ボンソクとヒスが一緒にいる場面は、甘酸っぱいやりとりばかり。/『ムービング』ディズニープラス スターにて独占配信中(全20話/初回7話まで一挙配信、8話以降は毎週水曜2話ずつ配信)(c)2023 Disney and its related entities


 一方で、不穏なムードを漂わせるのが、能力者でもある殺し屋フランクの存在だ。「子どもはいるか」と聞き回りながら、能力者たちを確実に仕留めていく。超人的な力を持った者同士の戦いは、スピード感があり血の量も多い。眩い青春ドラマとのギャップが凄まじく、それ故、映像に引き込まれる。

 配信前より公表されていたあらすじによると、「90年代、スーパーパワーを持つ能力者たちが集められ、極秘任務遂行するための特殊部隊が発足。しかしある日を境に部隊は姿を消し、国中に散り散りになった」。黒幕は能力者の遺伝子の根絶やしを望んでいるようだが、その理由は部隊消滅の過去にヒントがありそうだ。

配達人を装い、次々と能力者を消していくフランク。/『ムービング』ディズニープラス スターにて独占配信中(全20話/初回7話まで一挙配信、8話以降は毎週水曜2話ずつ配信)(c)2023 Disney and its related entities


 青春ドラマとアクションノワールを交互に行き来しながら進んでいった4話。しかし、5話目から流れが変わる。キャラクター一人ひとりに焦点を当て、それぞれ“過去に何があったのか”を丁寧に描き出したのだ。5話目はヒス、6話目はボンソクと親しいバスの運転手ゲド、そして7話目はフランク。物語の肝となる人物であろう、ボンソクの両親の現役時代についてはまだ触れず、それよりも先に前述したキャラクターたちを紹介するという構成がユニーク。何より、各々のドラマが心を打つストーリーになっており、作品の世界観に深みを与えている。

 これまで登場してきた能力者たちは、空を飛ぶ者、治癒能力を持つ者、驚異的な速さと力を持つ者、電力を操る者、卓越した五感を持つ者。今後も様々な能力の持ち主が登場し、彼らの物語も紹介されるのではないかと思うと、楽しみで仕方がない。

能力者の世界に息を吹き込んだ強力な布陣


 本作は、韓国の有名作家Kang Fullの同名ウェブトゥーンが原作。Full自らが脚本を担当した、正統派実写化作品だ。監督を務めたのは、ゾンビ史劇ドラマ『キングダム』シーズン2で一躍有名になったパク・インジェ。2人のタッグにより、説得力ある世界観の構築、見応えあるアクションシーンが実現している。

 ボンソクを演じたのは『わかっていても』のイ・ジョンハ、ヒス役は『還魂』のコ・ユンジョン、ガンフン役は『今日のウェブトゥーン』のキム・ドフン。みな20代半ばだが、みずみずしさや青臭さに満ちた高校生にしか見えないから流石である。また、ヒスの旧友役として、最近引っ張りだこのシム・ダルギ(『私たちのブルース』『悪鬼』)が出演しているのも見逃せない。

純粋無垢なボンソク(イ・ジョンハ)。/『ムービング』ディズニープラス スターにて独占配信中(全20話/初回7話まで一挙配信、8話以降は毎週水曜2話ずつ配信)(c)2023 Disney and its related entities


芯の強い心の持ち主ヒス(コ・ユンジョン)。/『ムービング』ディズニープラス スターにて独占配信中(全20話/初回7話まで一挙配信、8話以降は毎週水曜2話ずつ配信)(c)2023 Disney and its related entities


絵に描いたような優等生ガンフン(キム・ドフン)。/『ムービング』ディズニープラス スターにて独占配信中(全20話/初回7話まで一挙配信、8話以降は毎週水曜2話ずつ配信)(c)2023 Disney and its related entities


 ボンソクの母ミヒョン役は、『ビューティー・インサイド』などのハン・ヒョジュ。彼女にしては珍しい母親役(『トンイ』ぶり2回目)だが、ボンソクへの慈愛に溢れた眼差しを見る限りハマり役と言っていい。ボンソクの父キム・ドゥシク役は、本作が待望のドラマ復帰作であるチョ・インソン(『モガディシュ 脱出までの14日間』など)。7話目以降、満を持して本格的に登場となる。

ハン・ヒョジュ演じるミヒョンは、特別な子を守るため苦労を重ねてきた。/『ムービング』ディズニープラス スターにて独占配信中(全20話/初回7話まで一挙配信、8話以降は毎週水曜2話ずつ配信)(c)2023 Disney and its related entities


 ヒスの父チャン・ジュウォン役は、『キングダム』などのリュ・スンリョン。スンリョンと言えば、フライドチキン屋に扮した麻薬捜査班のコメディ映画『エクストリーム・ジョブ』が有名だが、本作でもフライドチキン屋で一念発起を目指している設定なのが面白おかしい。わざわざ調理シーンを入れるあたりに、制作陣の遊び心を感じられる。ガンフンの父イ・ジェマン役は、『D.P. -脱走兵追跡官-』が記憶に新しいキム・ソンギュン。子ども想いの穏やかな父親だが、彼もガンフン同様の能力の保有者。そのにっこり笑顔の裏側にどんな過去が隠されているのか、今後明かされていくことだろう。

戦いのシーンになると、愉快なチキン屋オーナーとはかけ離れた様相になるジュウォン(リュ・スンリョン)。/『ムービング』ディズニープラス スターにて独占配信中(全20話/初回7話まで一挙配信、8話以降は毎週水曜2話ずつ配信)(c)2023 Disney and its related entities


 そして、ちびっこたち憧れの“イナズママン”として活躍するも、現在はバス運転手として生計を立てるゲドを演じたのは、『猟奇的な彼女』などのチャ・テヒョン! お得意のちょっと卑屈な人物を好演しており、ボンソクとの何気ないやりとりが、涙腺を刺激する。物語に非常によく組み込まれているが、実はドラマのために生まれたオリジナルキャラクターというから驚きだ。

気合い満点の20話構成


 韓国ドラマは16話で完結することが多く、これまでディズニープラスで配信されてきた作品も例に漏れずである。半分ほどが16話で、12話、10話、6話、4話と短い作品もある。東南アジアを舞台にしたクライム大作『カジノ』は各シーズン8話(全2シーズン)、三池崇史が監督を務めた日韓合同作品『コネクト』は6話と、特にグローバルヒットを狙う作品は、短く展開して反響を見ている様子。そんな流れの中で投下された『ムービング』は、なんと全20話。これは、Fullがドラマ化にあたって出した条件。各登場人物の事情を深く掘り下げるには12話や16話では無理だと考えたからだという。

 長ければ長いほどダレる可能性があり、それならば、“続きがあるかも”と匂わせ、細切れにシーズンを分けて配信をしていく方が視聴者を惹きつけやすい。しかし、あえてその手法を採らず、冒頭7話のみ一挙配信するのみで、以降コツコツと2話ずつ配信という形で1シーズン20話まで展開することを決意したというのだから、制作者たちの気概を感じる。

 当面私は、毎週水曜日を“『ムービング』ナイト”にしようと思っている。

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《山根由佳》

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