キム・スヒョン来日まで決定!韓国ドラマ『涙の女王』が熱狂的に支持される理由とは? | RBB TODAY

キム・スヒョン来日まで決定!韓国ドラマ『涙の女王』が熱狂的に支持される理由とは?

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 豊富な動画配信サービスのおかげで日々最新のドラマに触れられる環境が整う現代は、話題作が最終回の配信後3日ほどオンラインの世界を賑わせても、すぐ別の作品が話題の中心へと切り替わってしまうことが多い。

 そんな急速なサイクル下において、『涙の女王』は強い。最終回が配信されてから一週間が経とうとしているが、SNSには余韻に浸る投稿が溢れ、その評判を受けて視聴開始する人たちが続出、本国の放送局tvNもキャストのオフショットや番宣コンテンツを絶え間なく投下しており、さらには主演俳優キム・スヒョンの来日公演まで決定した。『涙の女王』はなぜ、ここまでヒットしたのだろうか。
(以下、ネタバレあり)

■筆者プロフィール
山根由佳
編集者・写真家のマネージャーなど複数の草鞋を履くフリーライターであり、海外ドラマ&映画の熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。X(Twitter):@ymndayo


“韓ドラあるある”を畳み掛けつつ本筋を貫いたエンディング



 まずラスト15・16話について振り返っていきたい。ドイツにて、難病克服のために記憶を犠牲にする大手術を受けることにした財閥令嬢ホン・ヘイン(キム・ジウォン)。紆余曲折あり再び愛し合うようになった夫ペク・ヒョヌ(キム・スヒョン)が手術直前まで付き添っていたが、そこに登場するのが、ヘインに執着する悪人ユン・ウンソン(パク・ソンフン)。ヒョヌを殺人犯へと仕立て上げ、ヘインの家族が出国できないように図り、ヘインの婚約者を偽る。ヘインはウンソンの吹き込んだ情報を信じるが、なぜかヒョヌの存在が引っかかる。刑務所へ面会に行くと胸が痛くなり、ヒョヌの釈放後にはストーキングする始末。そして、手術前に未来の自分のために起こしていた行動によって、真実を知る。だが、どうやってもヘインの愛を得られないことに気づいたウンソンが暴走。ヘインを監禁し、国外結婚を迫る。ヒョヌがヘインを救いに来てウンソンに撃たれるが一命を取り止め、ウンソンは警察官に射殺される。そして、ホン家を陥れた“ラスボス”であるウンソンの母モ・スリ(イ・ミスク)は決定的な証拠によって刑務所入りに。その後、様々な記憶を思い出したヘインは、ヒョヌと一生を添い遂げるのだった。

 記憶喪失に陥るヒロイン、悪事を重ねまくる悪人、やたらと発生する交通事故、誘拐・監禁、ヒロインを庇って銃で撃たれるヒーロー……と、正直、後半は“韓国ドラマあるある”の詰め込みすぎだった感は否めない。しかし、本作の軸である「結婚生活」についてヒョヌとヘインがしっかりと向き合う姿を描いたことで、地に足の着いた納得感のある終わり方を迎えたと思う。

 『涙の女王』は、大恋愛の末に夢のような結婚式を挙げてから3年、“ハッピーエンディングのその先”から始まった。長く連れ添うようになると、恋愛初期の高揚した気分は消え去り、「言わなくても察してくれるはず」という怠惰な気持ちや、「こういった態度でも去ることはないだろう」という傲慢さが顔を出す。そして相手をぞんざいに扱うようになり、いつしか重箱の隅を突き合い、些細な出来事を発端に冷戦状態に突入することもある。だから、ヘインの記憶がリセットされてヒョヌと再び恋愛を始めたところで、また同じことの繰り返しになる可能性が高い。

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 しかし、ヘインは離婚まで至ることになった不仲のきっかけを思い出し、その件をヒョヌと話し合った。ヘインは、「大きな理由で仲違いしたとは思わない。心にもないことを言って意地を張り合い、愚かな誤解を招いた。ドアをノックするより部屋に閉じこもってあなたを憎む方が簡単だから。でもね、もうそうしない」と自己改善を表明。ヒョヌも、「僕も同じだった。君のためなら何度でも銃に打たれる覚悟はある。そういうことじゃなく、毎日のささいな日常の中で疲れて喧嘩してお互いに失望するのが怖かった。また心がすれ違って憎むかもしれないと思ったんだ。でもこれは言える。そばにいる。どんな時でも。壊れたら直して穴は防げばいい。完璧でなくていい」と正直な気持ちを話す。

 2人は今後もぶつかることもあるだろうが、その都度話し合い、譲歩し合いながら一緒に歩んでいくのだろう。物語を盛り上げるために様々な悲劇をてんこ盛りにしたのだろうが、この最後のやり取りこそ、脚本家パク・ジウンが伝えたいメッセージだったと感じる。彼らの真のハッピーエンディングに、胸がいっぱいになった。

“トキメキ”と“共感”で韓ドラファンの心をガッチリ掴んだ



 筆者は韓国ドラマのファンたちの感想をSNSでよく眺め、韓国俳優のファンミーティングにも時折足を運ぶのだが、その肌感覚で言うと、ファン層を構成しているのは既婚女性が圧倒的に多い。私自身もその1人であり、なぜこんなにも韓国ドラマにハマってしまうのかと考えたことがある。ハマる理由の大きな要因は、“トキメキ”であることは間違いない。結婚すると夫は恋愛対象から家族へと変化し気持ちが高ぶることはほぼなくなる。現実世界におけるその状況には満足しているけれど、たまにはドキドキしたいなぁというのも本音である。そこを補填してくれるのが、韓国ドラマだ。見た目麗しい俳優が、心拍数を上げるシチュエーションで甘い台詞を囁く姿を鑑賞することができる。2つ目の要因として挙げられるのは、“共感”だ。突飛な設定も多かったりするが、英米などのドラマと比べ、文化や性質などが似ていることでスッと世界観に入り込むことができ、登場人物たちの言葉に共感することなどが多い。『涙の女王』は、これら2つの要素が突出しており、特に既婚女性の心に刺さる描写の多さが、ヒットへと繋がったのかもしれない。

 主演2人の素晴らしさには、“トキメキ”を加速させられた。序盤では妻や義家族にビクビクしている少し頼りない人物として登場したヒョヌが、いざという時にヘインや義家族のために本気を出していく姿がかっこいい。それなのに、酔っ払った時は可愛く、涙を流す姿は母性を刺激するもので、そのギャップがたまらない。ヘインのツンデレっぷりも最高に可愛く、ヒョヌに抱く感想には共感しまくり。さらに、作品タイトルに違わず、あらゆるバリエーションの“涙”を見せてくれたキム・スヒョンとキム・ジウォンは、互いを想う目が本気に見えるほどの高い演技力で、現実世界での交際を疑うほどのケミストリーを生み出していた。2人が冷め切った状態から物語が始まることもあり、ドラマティックなロケーションを背景に繰り広げられる、出会い、結婚、新婚旅行、夫婦愛の再燃などのラブラブシーンは一際眩しかった。

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 そして、結婚や愛情に対する台詞の秀逸さが光っている。第1話、ヒョヌの友人キム・ヤンギ(ムン・テユ)の「たとえ数十年泳がなくても海に落ちれば泳げるはずだ。全身の筋肉が覚えてる。愛も同じだ。忘れたと思っても心の筋肉が覚えてる」という発言にはドキッとさせられ、第3話、「私が考える愛はこれよ。甘い言葉を掛け合うのではなく死ぬほど嫌なことを一緒に耐えること。逃げずに一緒にいること」というヘインの言葉にリアリティを感じる。このセリフは、結婚の本質を言い当てていると思う。では、ヒョヌの結婚観はどうなのかというと、「結婚とは味方同士になって同じ船に乗る。船が転覆したら一緒に死ぬしかない」と、言葉は違えどヘインと同じ考え方で、2人が一緒になったという設定が腑に落ちる。そして、ヒョヌの姉の友人による「夫と一緒に何年暮らそうが一番よかったのは恋に発展していく時よ。夫が一番素敵だったのはよく知らない時よ。初対面の時が一番」という台詞には激しく頷いたのであった。

 人生についての台詞も、胸を打つものがあった。第12話、父のことで落ち込むヘインの叔母ホン・ボムジャ(キム・ジョンナン)に対し、ペク家の近所に住むヨンソン(キム・ヨンミン)がかける「人生にはそれぞれ抱えている石ころがある。幸せそうな人のポケットにも重い石が入ってるんです」という言葉や、ヘインの祖父ホン・マンデ(キム・ガプス)の葬儀後、ヘインの父ホン・ボムジュン(チョン・ジニョン)がヒョヌの父ペク・ドゥグァン(チョン・ベス)からかけられた「人生も渋柿みたいに苦く渋い。ただでさえ苦いのに苦い焼酎に漬けられ、つらい日々を送ります。でも耐え抜くとある瞬間甘くなり、それを糧に生きる。そういうものです」という言葉も、強く印象に残っている。

 そして、それらの台詞を説教臭く感じずに受け入れることができるのは、本作が遊び心にも満ちているからだ。『愛の不時着』でW主演を務めたヒョンビン&ソン・イェジン夫婦の結婚式オマージュにはじまり、『サイコだけど大丈夫』でキム・スヒョンの兄役を演じたオ・ジョンセが精神科医役としてスヒョンと再び共演を果たしたり、ソン・ジュンギが『ヴィンチェンツォ』で演じたイタリアンマフィアの顧問弁護士役そのままで登場したり、『星から来たあなた』のホン・ジンギョンが探偵役としてカメオ出演したり……と、韓国ドラマファンにたまらない演出がたっぷり。『ミッション・インポッシブル』や『ハロウィン』風のBGM、『ロッキー』風のトレーニングシーンなど、ハリウッド作品へのオマージュもちらほら。また、ヒョヌを監視するコンビ2人や、ヘインの秘書、ヒョヌの地元のご近所さんたちなど、主人公たちの周辺キャラクターたちが皆人間臭い良いキャラをしており、彼らの言動が、不治の病と財閥家の崩壊という二大問題の箸休め的な役割を果たしていた。先が気になる物語の面白さは言うまでもなく、主演2人が紡ぎ出した最強ロマンス、共感を誘う台詞の数々に、軽やかなユーモアセンス。『涙の女王』は間違いなく、傑作だった。

《山根由佳》

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