【コラム】ブランド化する「K-POP発」、J-POPは日本と世界に通用しないのか? | RBB TODAY

【コラム】ブランド化する「K-POP発」、J-POPは日本と世界に通用しないのか?

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NiziU(Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images)
NiziU(Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images) 全 2 枚
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 K-POPの勢いが凄まじい。史上最大規模で開催された「KCON JAPAN 2024」や人気K-POPアーティスト達の日本デビュー、K-POP授賞式の日本開催などK-POP発のイベントが日本のトレンドを席巻している。さらには、日本人で結成されたK-POPグループの“日本デビュー”など新たな現象も相次いでいる。日本で活動するとき、“K-POP発”をつける意味は何なのか?韓国を主軸とするトレンドはグルメやコスメ、ファッションなど多岐に渡るが、今回は「K-POPアーティスト」にフォーカスしてこの現象とその狙いについて考察してみた。

■筆者プロフィール山田有真
名古屋を拠点とするフリーランスの編集者・ライター。グルメ・レジャー・音楽・映画など幅広いジャンルを取材・執筆。第3世代以降のK-POPが好きで、SNSで推しケミの動画を漁るのが日課。旅とビールと猫が好き。X(Twitter):@yuma03303


■“K-POP発”は高クオリティ保証の代名詞


 数々の“K-POP発”がトレンドとなっている日本だが、その影響を受けているひとつが音楽だろう。日本の音楽ランキング上位にK-POPグループがランクインすることは当たり前となったし、K-POPアーティストが日本公演を開催すればチケットは“プレミアム入り”するほど大争奪戦だ。

 さらに、「MAMA」や「KBS歌謡祭」などこれまで韓国で開催されていたK-POPの大型イベントが日本で続々と開催され、先週にはK-POP大型授賞式「2024 THE FACT MUSIC AWARDS(TMA)」が、今年9月に大阪・京セラドーム大阪にて開催されることが公式発表された。

 日本の音楽シーンに欠かせない存在となったK-POP。そして、今やK-POPは日本人アーティストの活動方針に、“トレンド”として大きな存在感を放っている。

 韓国の大手芸能事務所JYP×ソニーミュージックの合同オーディション・プロジェクト「Nizi Project」から誕生したNiziU、韓国の音楽専門チャンネルMnetで放送された公開オーディション番組「PRODUCE 101」の日本版から誕生したJO1やINIなど、日本の音楽シーンを牽引する人気アーティスト達は、K-POPを土台に誕生している。

 また今年7月には、メンバー全員が日本人の5人組K-POPガールズグループ「UNICODE」の“日本デビュー”が決定。グローバル化が進む現代、アーティストの国籍と活動拠点や歌唱ジャンルの違いにツッコむ気持ちは全くないが、日本の音楽シーンに、“K-POP発”という要素が必要不可欠な存在に“なりすぎてしまっている感”は強く感じる。

■日本のK-POPファンは「K-POPのATM」なのか?


 K-POPがこれほど日本に進出する理由は何なのか。個人的には、韓国が日本のK-POP好きをターゲットにビジネスを成功させ、儲けたお金を資金のひとつとして、K-POPのアメリカ進出に注力しようとしているんじゃないかと思う。

 K-POP発の日本のグループの楽曲やMV、振付けのほとんどは結局韓国のクリエイター達が手掛けているし、aespaやLE SSERAFIM、IVEなど日本での活動が一気に活発化した人気K-POPアーティスト達は、最近こぞって英語歌詞の楽曲をリリースし、英語圏へのアプローチを強めている。

 これはあくまで主観だが、日本のK-POPファンは国民性なのか好きになったものを熱烈に応援する「オタク気質」が強いと感じる。そして日本のK-POPファン層は、社会人などいわゆる“お金を積める”層が厚い。コンサートや限定ポップアップなど度々開催されるイベントで販売されるグッズはコンプリートする勢いで買うし、日本で行われるコラボイベントや“推し”が出演するイベントには、抽選に当たるまで応募し続ける。

 K-POPへの投資が続き、K-POPファンの間で「日本人ファンはK-POPのATM化してる」という自虐ワードが飛び出すときも少なくないが、そんな自虐も「しょうがない、だって好きだから」という一言で片付けてしまう。お金と偏愛っぷりを持ち合わせているのが日本のK-POPファンだ。

 こんな風に書くと、私が“K-POPアンチ”のようにみえるが、私も投資をいとわないオタク気質のK-POPガチ勢だ。冒頭で日本ファンがK-POPの世界進出の踏み台になっているんじゃないか説を唱えているが、それが本当でも私は構わない。むしろ、それで推しが成功してくれたら、手段や真実なんてどうだっていい。推しの成功こそ、推し活の原動力だからだ。

 “K-POP”を起点とする、日本の市場をターゲットとした展開は今後も増えるだろう。そしてそれは、K-POPにとってはあくまで通過点であり、日本以外の場所でのゴールを成功として見据えている気もする。しかし、K-POP発が日本に続出していることで、日本エンタメの成長やイベント増加に伴う経済の活発化などに繋がっていることも事実なのだ。

■J-POPは世界に通用しないのか?


 日本人がアーティストを目指す手段として、韓国の大手芸能事務所の“練習生”に所属するなど、「渡韓」することが増えた。世界の音楽シーンを牽引するK-POP。それを生み出す韓国には、世界と戦えるダンスやボーカル、パフォーマンス力を育てる環境や講師が集結しているからだ。

 今年5月にデビューしたK-POPボーイズグループ「NEXZ」の日本人メンバーにもJYPで練習生として経験を積んできた子達が多い。「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」に出演していた日本人メンバーで結成された「IS:SUE」が今年6月にデビューするが、そのデビューシングルのサウンドプロデュースをMAMAMOOの作品を数多く手がけてきたパク・ウサンが担当することが公式リリースで明かされた。日本のドラマ主題歌にK-POPグループの楽曲を起用することも増えたし、日本における“イケてる音楽”の代名詞はK-POPになりつつある。

 J-POPは世界で通用しなくなってしまったのだろうか。

 そんな不安がよぎるが、そんなことは全くないと思う。韓国の若者の間では、竹内まりやの「プラスティック・ラブ」や杏里の「Remember Summer Days」など日本の80年代ソングがブームだ。さらに日本人アーティスト・imaseのヒット曲「NIGHT DANCER」は、韓国の配信サイトMelonでJ-POP初のトップ20にランクイン、LE SSERAFIMなどK-POPグループへの楽曲提供も行っている。韓国主催の音楽フェスや授賞式にも、imaseは引っ張りだこだ。

 つまり、J-POPは世界で通用しなくなったのではなく、現代の日本ではK-POPが流行っていて、K-POPの本場・韓国ではJ-POPが流行っている状況なのだ。

 日本で続出する「K-POP発」という言葉。国内で活動するアーティストにおいては、“クオリティの高さ”を先入観としてもたせられるキラーワードとなった。一方で、中途半端なクオリティで“K-POP発”を名乗るグループは、一瞬でコケていくだろう。日本における「K-POP発」の浸透と存在感は、色んな意味で日本のエンタメ業界をブラッシュアップするいい刺激となっているのかもしれない。

《山田有真》

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