未成年含む234人の男女に性的搾取を繰り返したサイバー犯罪集団のリーダーの検挙過程がテレビで公開され、波紋を呼んでいる。
7月25日に韓国で放送された人気番組『勇敢な刑事たち4』(Eチャンネル)最新回では、ソウル地方警察庁・サイバー捜査課のチョ・スンノ警監が出演し、自身が担当した衝撃的な事件の捜査記録を語った。
発端は、ある女性の通報で、自身の顔に裸体が合成された写真がネット上に出回り、不審な男から何度も電話がかかってくるという内容だった。加害者の男性から「その写真を流した元交際相手の情報をよこせ」と要求され、拒否すると脅迫してきたという。
警察が追跡した結果、犯人は高校2年生の17歳男子生徒だった。
自らを“自警団”と名乗ったこの高校生は、「ディープフェイク動画の加害者を制裁する」と主張し、女性に近づいていた。警察はさらに2人の高校生を検挙したが、彼らは互いに面識がなく、それぞれが“牧師”と呼ばれる人物からの指示に従っていたと証言。彼らは自らを“伝道師”、“予備伝道師”と称し、支配構造のなかにいたが、末端のため牧師の名前も顔も知らなかった。
驚くべきことに、これらの若い加害者たちもまた、ディープフェイク映像などを作成・流布していた人物だったことが判明。その“弱み”を牧師に握られた人物たちが、組織化されていたのだ。

警察が最初に確認した純粋な被害通報だけでも60件を超えており、大半が未成年の女子生徒だった。
加害者たちは、SNSで体の一部を見せている“裏アカウント”を持った少女たちを標的にし、「写真が流出した」と偽って被害者をテレグラムのチャットルームへと誘導。そこから“電話番号の非公開解除”を要求し、その情報をもとに本名・学校・SNSアカウントなどを突き止めていた。捜査を担当したチョ刑事は、「テレグラムで知らない相手に“電話番号の公開”を求められても、絶対に応じてはいけない」と注意を促している。
牧師はテレグラム上に作った告知ルームを通じて、被害者に朝晩のあいさつ、日常の報告、就寝許可などを義務づけ、徹底的に支配。報告を怠ると、裸で反省動画を撮らせて送らせるなど、極めて加虐的な罰を科していた。さらに、“ポイント制”、“卒業制度”を導入して心理的にコントロールし、性行為まで強要した事実も明らかとなっている。
警察はログの徹底解析を行い、事件発覚から9カ月後の2024年8月、ついにテレグラムの創業者パーヴェル・ドゥーロフ氏がフランスで犯罪幇助をした疑いにより、一時拘束される事態にまで発展。その後、韓国政府が各方面から圧力をかけた結果、テレグラム側は利用規約を修正し、犯罪者情報を提供する方針に転じた。
これを受け、捜査チームは“牧師”のアカウントを含むチャットルームの管理権限を取得。IPアドレスの追跡により、ついに33歳の会社員キム・ノグァンを特定した。彼は両親と同居するごく普通のサラリーマンで、スマートフォンを操作している最中、エレベーター内で現行犯逮捕された。
押収されたノートパソコンからは、計1546本の性搾取物やディープフェイク、性暴力動画が発見された。
このような大規模な性犯罪だが、あまり大きなニュースにはならなかった。というのも、2024年1月に検挙した当時、韓国では戒厳令や大統領弾劾といった政治的ニュースが相次いだためだ。
キム・ノグァンの性搾取被害者は234人に上り、現在も新たな被害報告が寄せられている。彼はもともと、他人の性犯罪情報を公開するテレグラム部屋の“見物人”にすぎなかったが、2020年から“自警団”を名乗り、自ら加害に転じていた。取り調べでは、「若い女性が好きで、人を支配して操ることに快感を覚える」と語ったという。
キム・ノグァンを含む組織員14人と、性加害に加担した87人は全員が検挙されており、現在も裁判が進行中。キム・ノグァンには、児童・青少年を対象とした性搾取物の製作、強姦、犯罪組織結成など計19件の罪状が適用されている。
(記事提供=OSEN)