NewJeansが自称した「革命」は、失敗に終わった。
K-POP産業の“改革者”を自任した彼女たちが、最終的に白旗を揚げた形だ。所属事務所ADORとの長きにわたる専属契約紛争に終止符を打ち、メンバー全員での復帰を発表した。「専属契約有効性確認訴訟」での1審敗訴判決が、決定的な一打となった。
ただ、“2人”と“3人”で分かれた復帰表明は、メンバー間のコミュニケ―ション問題や事務所との微妙な緊張感をありのまま露呈した。
表面上は事務所とグループとで“縫合”されたものの、“完全な妥結”と言うには疑問符が残るという指摘がある。
1年続いた「ADOR脱出劇」の結末
NewJeansにとって今回の騒動は、1年以上に及ぶADORからの“脱出劇”だった。
昨年9月に突如ユーチューブで実施した“生みの親”ミン・ヒジン氏の復帰を求める緊急生配信を皮切りに、同年11月には緊急記者会見を開き、ADORとの専属契約解除を一方的に通告する強硬策に出た。
しかし、メンバーたちの独断的な行動は、ADORの「専属契約有効確認訴訟」と裁判所による「独自活動禁止の仮処分」決定により行き詰まった。
決定打となったのは、10月30日のソウル中央地裁が下した1審判決だ。
当時、裁判所は「ADORとNewJeansの間で締結された専属契約は有効である」と判断し、ADOR側を支持した。NewJeansメンバー側が主張したミン・ヒジン氏の解任などは契約解除の理由として認められず、“信頼関係の破綻”という主張も退けられた。事実上、NewJeansの“完敗”だった。
結果、メンバー5人は方向転換を選んだ。
1審敗訴直後には「即時控訴」の意向を示したが、控訴期限(11月13日)を前日に控えた12日にADOR復帰を発表し、控訴を断念することになった。
法的争いが長期化したことによる活動期間の空白、莫大な訴訟費用、さらには独自活動時にメンバー1人あたり10億ウォン(日本円=約1億円)を賠償しなければならない“間接強制金”の決定など、現実的な負担が重くのしかかったとみられる。

“2人”と“3人”で分かれたADOR復帰
だが、メンバーたちの復帰方法は後味の悪いものだった。
まず、11月12日午後5時頃、ADOR側が公式声明を通じてヘリンとヘインの復帰を発表。「裁判所の判決を尊重し、専属契約を遵守する決定を下した」と説明した。
すると、その約2時間40分後の同日午後7時46分、ミンジ、ハニ、ダニエルの3人が“法律代理人”を通じて別途復帰の意思を発表した。
3人の声明には、「メンバーの1人が現在“南極”におり、伝達が遅くなったが、現時点でADORからの返信がなく、やむを得ず別途声明を明らかにすることになった」という異例の一文も盛り込まれていた。“誰”が南極にいるのか、”なぜ”南極にいるのかといった説明はなかった。
またADORの発表とは異なり、3人の声明には「裁判所の判決を尊重する」や「専属契約の遵守」といった表現が含まれていなかった。
これにより、3人の発表が急遽行われたもので、ADORとの最終調整を経ない“先行発表”だったのではないかという見方が広がった。実際、発表直後にADORは「3人の復帰意思の真意を確認中」とする留保的な立場を示している。
結果として、5人の復帰発表は「ヘリン&ヘイン」と「ミンジ、ハニ、ダニエル」の二手に分かれる形となり、メンバー間の意思決定プロセスや事務所との信頼関係修復に依然として疑問符がつく状況が浮き彫りになった。
こうした微妙なギャップの露呈は、NewJeansの今後の活動に対する不安要素として残ることになった。ADORはすでにフルアルバムの準備が整っていると説明しているが、内部のぎくしゃくした空気を収め、深まった溝を埋めることが当面の最優先課題となりそうだ。
NewJeansがこれまで通り、メンバー5人全員による完全体としてファンの前に戻ることができるのか。その一点が最大の焦点と言えるだろう。
◇NewJeans プロフィール
2022年7月22日にミュージックビデオを公開し、「NewJeans」として電撃デビューした5人組ガールズグループ。2004年生まれのミンジとハニ、2005年生まれのダニエル、2006年生まれのヘリン、2008年生まれのヘインで構成された。デビューアルバム『New Jeans』の発売と同時にライジングアーティストとして急浮上。デビュー曲『Attention』と『Hype Boy』が韓国Melonの「TOP 100」チャートで1、2位を記録した初のガールズグループとなった。またK-POPグループで初めてデビュー曲(『Attention』)がSpotifyの「ウィークリートップソング・アメリカ」にチャートインした。
■【解説】「全員復帰」のNewJeans、待ち受ける“試練”と“償い”


