OKIは、中央大学理工学術院 大草孝介准教授との共同研究で、音データをAIが扱いやすい単位に区切る際に生じる短時間変化の歪みに着目した自己教師あり学習手法を開発し、本成果に関する論文が2026年5月5日にIEEE(米国電気電子学会)の査読付き国際論文誌「IEEE Transactions on Audio, Speech and Language Processing(TASLP)」に掲載されたことをお知らせします。本研究では、複数の公開データセットで評価した結果、代表的な既存手法と同等以上の認識性能と、音のわずかな時間ずれに対する安定性の向上を確認しました。本成果をもとに、橋梁・道路・トンネルなどの社会インフラの維持管理に向け、正解ラベル付きデータを大量に用意しにくい環境でも、音や振動の特徴をより安定して学習できるAI基盤の高度化を目指します。点検の省力化と早期異常把握を求める現場を支援するAI技術の高度化に活かしていきます。

スペクトログラムの歪みの影響を考慮した学習手法を提案
社会インフラや設備の老朽化が進む一方、熟練した点検作業者の不足も課題となっており、構造物の状態変化や劣化の傾向を早期に検出するインフラモニタリング技術の重要性が高まっています。しかし、劣化や損傷の正解ラベルを持つ現場データは集めにくく、正解ラベル付きデータを大量に用意しなくても学習できる手法が求められていました。また、音や振動の変化を捉えるうえで、短時間で起きる変化の特徴が学習過程で失われることも課題でした。
今回の手法は、スペクトログラム(注1)を格子状に区切って得られる特徴だけでなく、区切り方によって失われやすい短時間変化のパターンも学習に取り込みます。歪みを単純に除去するのではなく、音の認識に有用な情報として活用する点を自己教師あり学習(注2)に組み込んだことが特長で、環境音・音声・音楽を対象とした公開データセットで有効性を確認しました。その結果、環境音の認識を中心に既存手法と同等以上の性能を示し、音のわずかな時間ずれに対する安定性の向上も確認しました。これにより、正解ラベル付きデータが少ない現場でも学習しやすく、点検支援AIの実用化に向けた土台となることが期待されます。
OKIは、経営計画2031で掲げる知的資本経営の実践と、社会インフラを「止まらない/止めない」形で高度化していく方針のもと、音や振動などの信号データから特徴を学習する「信号基盤AI」(注3)の研究開発を進め、橋梁・道路・トンネルなどのインフラモニタリングへの応用を拡大します。今回の成果を活用し、現場に近いレイヤーで構造物の状態変化や劣化傾向をより早く把握できるAI技術へつなげることで、現場を止めない安全・安心な社会インフラの実現と、新たな社会価値の創出に貢献していきます。
用語解説
注1:スペクトログラム音や振動などの波形を時間ごとの周波数成分とその強さとして可視化した図。音声や機械音の特徴を把握しやすくし、異音検知や音響解析などに活用される。
注2:自己教師あり学習
人があらかじめ正解を付けたデータを大量に用意しなくても、データそのものの特徴を手がかりにAIが学習する方法。画像、テキスト、音声などのAI開発で活用が進んでいる。
注3:信号基盤AI
音や振動などの多様な時系列データから特徴を学習し、社会インフラの状態把握や変化のモニタリングなど幅広い用途への応用を目指すAI技術。
リリース関連リンク
AaSP: Aliasing-Aware Self-Supervised Pre-Training for Audio Spectrogram Transformers- 沖電気工業株式会社は通称をOKIとします。
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