【木暮祐一のモバイルウォッチ】第11回 080に続いて070も!携帯電話番号が足りない? | RBB TODAY

【木暮祐一のモバイルウォッチ】第11回 080に続いて070も!携帯電話番号が足りない?

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木暮祐一氏。武蔵野学院大学准教授で携帯電話研究家/博士(工学)
木暮祐一氏。武蔵野学院大学准教授で携帯電話研究家/博士(工学) 全 3 枚
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 総務省は4日、現在PHSで利用している「070」で始まる電話番号を、携帯電話でも使えるようにする省令改正案を情報通信行政・郵政行政審議会に諮問した。順調に手続きが進めば来年11月には携帯電話で「070」の利用が始まる見通しである。電話番号は通信事業者(キャリア)の要望に対して、総務省から番号を払い出している。今年の3月にはまだ910万本の電話番号が残っていたが、7月には残りが350万本に。いよいよ枯渇が目前となり、電話番号に余裕のある「070」の未使用部分の活用に向けて動き出したということだ。

■電話番号と店頭在庫

 ところで、「090」以下の番号は8桁ある。単純に0000-0000から9999-9999まで利用するとすれば、1億本の電話番号が利用できる。「080」も利用されているので、携帯電話だけで2億本の電話番号が利用できるにも関わらずなぜ足りないのだろう。携帯電話の加入者数は2012年8月末現在で1億2,665万契約(ちなみに「070」を使うPHSは477万契約)となっており、電話番号としてもまだ7,000万本程度は残っていそうだ。

 では総務省から払い出されているのに、使われていない電話番号とはどんなものがあるのだろう。その大半は「店頭在庫」となる電話番号だ。携帯電話とPHSを合算した加入数はすでにわが国の人口を上回っているが、そんな現在でも新規契約者数は多数に上る。NTTドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアにおける新規加入者数の合計は、2012年8月だけでも460,300契約となる(TCA調べ)。MNPを利用し、電話番号を引き継いて新規加入するケースも多いだろうが、それでも毎月数十万契約程度の新たな電話番号が必要になるということが分かる。さらに通信事業者では加入申込手続きの際に速やかに回線契約を完了するためには、未開通の電話番号をあらかじめストックしておく必要がある。たとえば店頭で新規加入契約手続きをされた方はご経験されていると思われるが、複数の電話番号候補の中から1番号を選んで契約されているはずである。さらには、日本通信(b-mobile)に代表されるような、SIMカードを提供するMVNO(仮想通信事業者)も多数ひしめくようになってきた。こうしたMVNOも在庫として多数の電話番号を所持している。つまりそうした“開通に備えて”ストックされている電話番号が、各通信事業者ごとにそれなりの数あるということが想像できよう。

■電話番号を見ると事業者がわかる?

 もちろん、解約された後の電話番号も再利用されている。電話番号が再利用される場合は、旧契約者宛の間違い電話などを防止するため、一定期間電話番号を“寝かせ”ることになる。一般的に半年以上、その電話番号を使わずに寝かせていると言われるが、過去に電話番号が枯渇した際(当時の携帯電話番号「030」が不足した平成10年末ごろなど)には、わずか3ヵ月程度で再利用されていた事例もあった(実際に筆者が解約した電話番号が新たなユーザーに使われていた経験がある)。

 ちなみに総務省から割り当てられる電話番号は、090/080に続く3桁の数字を見ることで、電話番号から通信事業者を調べることができる。11桁の電話番号のうち、頭の「0」を除外して順に「0AB-CDE-FGHIJ」とローマ字を当て、この中のCDEにあたる部分を「CDEコード」と呼ぶ。この3桁の番号単位で総務省から通信事業者に割り当てを行なっているために、この3桁を見ればどの通信事業者のユーザーなのか想像がつくのだ。CDEコードの割当て状況は総務省もホームページで公開している(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/tel_number/number_shitei.html)。

 かつては、通信事業者が地域ごとに分割されていたため、電話番号を見ると通信事業者の他に地域まで特定できたが、現在ではそこまで細かく調べることができなくなった(ただし現在でも沖縄セルラーだけはKDDIとは別に電話番号が割り当てられている)。また、MNPが利用できるようになった現在では、MNPを利用したユーザーの現在の通信事業者までは追いかけることはできない。

■事故電話番号と再利用

 電話番号の再利用の話に戻るが、たとえばトラブルがあって迷惑電話が多数かかってくるような電話番号が解約されるケースもある。新規契約時に、こうした事故電話番号が付与されたら非常に迷惑だ。そのため、通信事業者ではあらかじめ解約時にトラブルが発生する可能性がある電話番号にはフラグを立て、再利用時に一般の用途の加入者には電話番号を払い出さないような注意を払っているようだ。それでも電話番号が枯渇してくれば、こうした事故電話番号も利用される。たとえば、かつて筆者は自宅にNTTのピンク公衆電話を設置したことがあるが(色々な電話契約を試みたいという趣味の一環だった)、この電話は日中、借金の取り立てを目的とした間違い電話が頻発した。NTT東日本側に確認したところ、案の定事故電話番号は電話ボックスの公衆電話など、一般の加入契約者には利用されないような回線で再利用されるという。たまたまそうした電話番号が筆者自宅に設置したピンク公衆電話に付与されてきてしまったのだ(のちに電話番号を変更してもらった)。

 携帯電話の場合は、たとえば1つの端末で複数の電話番号を利用できるサービスなどが存在する。NTTドコモの「2in1」や、ソフトバンクの「ダブルナンバー」などが知られているが、かつてNTTドコモのムーバ(2012年3月でサービス終了)では、「ナンバープラス」という電話番号を追加できるサービスが用意されていた。FAXやモデムなどを携帯電話経由で利用する際に、データ通信用に別番号を使えるようにしたものだったが、この「ナンバープラス」で追加した電話番号でも事故電話番号の割当てが多かったように記憶している。現在であれば、たとえば街中にある飲料自販機やAED装置などにデータ通信専用の「通信モジュール」が搭載されているのだが、こうした通話以外の用途で使われる回線契約において、案外事故電話番号が割り当てられているケースがあるのかもしれない。

 そのようなわけで、再利用されているにも関わらず、枯渇していく電話番号なのだが、スマートフォンが主流となった現在2台持ちのユーザーも増え、電話番号が「1人1番号」の時代から「1人で多数利用」する時代へシフトしてきたことを象徴しているともいえる。さらに身の回りの「通信する機器」は今後一段と増えていくと言われる。家電品に通信機能を持たせる、といったことが今後一般化していくとされており、携帯電話のネットワークを利用する通信機器においては必然的に電話番号が必要になってくる。今回、新たに「070」の電話番号を携帯電話で利用しようという流れは、そうした時代に向けた準備ともいえそうだ。

《木暮祐一》

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