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【インタビュー】LTEエリア構築はどうなっていくのか……KDDIの基地局対策の現状

ブロードバンド 回線・サービス
KDDI 技術統括本部 エリア品質強化室長 木下雅臣氏
KDDI 技術統括本部 エリア品質強化室長 木下雅臣氏 全 2 枚
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■LTEの基地局拡張はこれからどうなる?

――基地局の拡張はどれぐらいのペースで進んでいますか。

宮尾氏:これまで広いエリアをカバーしたいと考えながら、2~3年をかけて計画的に増設してきました。現在はかなり速いスピードで展開しており、多い時は月間で500局以上増設しています。さらにスピードを落とすことなく、800MHz帯については年内までに人口カバー率99%を目指して広げています。

木下氏:エリアを広げていく方向と、内部でさらに基地局を増やしていく方向の両面で動いています。これからiPhone 5s/5cのお客様が増えてくれば、800MHz帯がさらに混み合ってくることも予想されます。弊社の場合は800MHz帯は10MHz幅(75Mbps)で展開していますので、ここに対して基地局をさらに追加しながら、つながりやすさを高める取り組みをおこなっています。

――エリア品質の向上を図るためには、やはり現状は「基地局を増やす」というアプローチが中心になりますか?

木下氏:2.1GHz帯の場合はLTEに使用する帯域幅を広げるというアプローチも考えられますが、現状ではまだ2.1GHz帯を使っている3Gユーザーがいらっしゃいますので、そことのトレードオフになります。当社で展開している3G対応のiPhone 4Sの下取りも進んでいますので、いずれは3Gのユーザーが徐々にLTEへシフトしていただくことで、2.1GHz帯の10MHz化を加速できると考えています。

――特にデッドスポットと呼ばれるエリアの品質を高めるため、取り組まれていることはありますか。

木下氏:鉄道沿線のエリアサービスには力を入れています。都市部は通勤時間など、電車でスマートフォンを持ちながら移動する方のトラフィックが高いことはわかっていますので、そういった「生活導線」と呼ばれるスポットの品質を優先的に高められるよう、800MHz/2.1GHz帯ともに基地局を拡大しています。

――NTTドコモでは、ショッピングモールや大型商業施設などでLTEエリアを強化する方針を発表しましたが、KDDIでは商業施設でどのような取り組みを行っていますか。

木下氏:もちろんKDDIも“デパ地下”や郊外の商業施設、オフィスビルなど屋内でのLTEサービスの充実化に早い段階から取り組んでいます。また、郊外地域ではKDDIが最も先行してエリアを展開しているのですが、そのことをあまり知ってもらえていないというもどかしさがあります。郊外地域に対して長くから取り組んでいるということが、一般ユーザーに届いていないことは私たちの努力不足と実感しています。Webサイトでエリアマップを公開するなど、今後もアピールは継続的に行っていきます。

――10MHz幅のエリアでもスループットが下り10Mbps前後にとどまってしまうことがあるのは、計測時にトラフィックが混んでいたからなのでしょうか。

木下氏:スループットの計測には電波ノイズ、電界強度、基地局からの距離・配置など複合的な要素が影響してきますので、一概に判断することは難しいです。基本的には一番近くにあって、電界が強い基地局を補足する設定になっています。

――800MHz帯のエリアの混み具合について、計測は実施していますか。

木下氏:トラフィックの現状は毎月計測しています。その上で、これぐらいトラフィックが上がってしまうと、何ヵ月後にオーバーフローするかという見込みを立てつつ、最も混み合う場所や、時間帯でのトラフィックなど分析して、先回りしながら基地局を増やしています。

 普通の基地局は設置に手間がかかるのですが、昨年から「ピコセル」という簡易設置型の基地局を展開しています。例えば繁華街の電柱や屋根の上に基地局を設置して、トラフィックを吸収しながら対応しています。2.1GHz/1.5GHz/800MHz、各帯域ごとにそれぞれピコセルのアンテナがありますので、適材適所を判断しながら設置しています。1つのピコセルアンテナで100m周囲がカバーできます。

――基地局の設置場所には、まだ余裕があるのでしょうか。

宮尾氏:いいえ、もうそれほど余裕がありません。現状も場所の取り合いになっています。トラフィックが集中するところはピコセルで吸い取って、大きなエリアでの利用がスムーズできるよう、取り組みを根気よく進めていく必要があります。

木下氏:ピコセルを配置するためには100m周囲での情報が必要になりますので、当社では100mメッシュでトラフィックが解析できるようなツールもつくりました。どの場所のトラフィックが混んでいるか、正確な情報を把握して効果的に設置しています。

――面展開のほかに、垂直方向(ビルなど高所で)のエリア展開はいかがですか。

宮尾氏:オフィスビルや大きなビルも対策をしています。古くて大きなビルはアンテナが立てられないところもあって、一部対策が済んでいないこともありますが、そこは他社も一緒だと思います。屋内対策は費用がかかりますが、大きなビルを中心に出来る限り進めています。

木下:マンションなど個人住宅については「フェムトセル」を設置していただくなど、エリア展開にご協力いただいています。

――そのほかに注力されているポイントはありますか?

木下氏:法人のお客様には出張等で新幹線を利用される方々が多いということもあって、auでは新幹線のサービス拡充へ特に力を入れています。新幹線専用の基地局も数多く作っています。一部「トンネル」についてはキャリア3社で足並みを揃えて進めなければならないので、上越新幹線や長野新幹線でまだ対策が十分で無い地域もありますが、東海道、山陽新幹線では福山ぐらいまでならLTEできれいにつながるよう、エリアをつくることができています。

 これには、高速移動中もハンドオーバーがしやすいように、線路の近くに基地局を配置しています。アンテナも新幹線用にパラメータをチューニングして、ハンドオーバーがスムーズにできるようにしています。

――高速道路の基地局配置状況はいかがでしょうか。

宮尾氏:エリアの広い800MHz帯はとくに、満遍のないエリア展開ができていますので、ユーザーにアピールしたいと思っています。

――今後基地局のコントロール方法は進化していきますか。

木下氏:周波数を効率的に使うことが直近の課題です。ユーザー体験をよりリッチなものにするためにも、キャリア・アグリゲーションなど、周波数を束ねる技術なども積極的に導入を検討していきます。
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《山本 敦》

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