【木暮祐一のモバイルウォッチ】第43回 視覚・聴覚障害者向けiPad活用の取り組み
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こうして、青森県の支援のもと「視覚・聴覚障害者向けiPad講習の人材育成講座」がスタートした。県が支援するといっても、現実には関係者の手弁当で準備が進められ、そこに大学生のボランティアも指導補助として協力することで実現していった。また企画段階では講習を受講される方には講習開催期間中にiPadを貸し出し操作に習熟していただきたいと考えた。しかしiPadが足りない。講師用や学生ボランティア用のiPadは手持ちで不要のものをかき集め、受講者に貸与するものは県庁の予算の範囲で7台をリースした。「本音を言えば、受講者用のiPad台数をもう少し確保できれば参加者をもっと増やすことができたはずで、悔やまれる」(高森氏)
この講習会に関心を持って集まったのは20代から70代の男女と幅広い。平日の夜間に計7回の講習が続いた。iPadそのものに触れたことがなかった人も少なくなく、講習会ではiPadの基本操作から学んだ。その後、iOSのアクセシビリティ機能、特に「VoiceOver機能」の活用方法を身に付け、また障害者が活用するのに便利なアプリ等も知識を深めていった。後半3回は、実際の視覚障害者、聴覚障害者に参加していただき、指導の模擬実習も行った。
初めてiPadに触れる視覚障害者に対し、ディスプレイ上に並ぶアプリのアイコンを連想してもらうために、手作りの教材も用意された。iPadと同サイズのホワイトボードに、アプリアイコンに見立てた磁石を並べ、ホームボタンの機能や、アプリの配置などを、まさに手を取りながら学んでいた。
全7回、2期に渡る講習会は12月18日を最後に終了するが、この取り組みは地元の新聞等でも大きく報道されたことで、現在県の内外からも同様の講習会の展開を要望する声が上がっているという。地道な取り組みながらも、今後さらに発展した講習会が各地で横展開されることになれば、着実に情報アクセスに関する弱者の救済につながっていくはずだ。また、青森県では地域の通信事業者とも連携し、販売店の店長会議でこうした取り組みを紹介すると共に、今後は販売店店員向けの講習会も実施していく方向で調整が進められている。情報に対して誰もが平等にアクセスできる、そんな社会を目指した一歩が踏み出されたところだ。
《木暮祐一》
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