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【連載・視点】ヒット商品「ふらの牛乳プリン」を生み出したフラノデリスの思想とシステム

エンタープライズ 企業
フラノデリスを運営するルノール代表取締役社長の藤田美知男氏
フラノデリスを運営するルノール代表取締役社長の藤田美知男氏 全 9 枚
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■軸を味に置くということ

 「ふらの牛乳プリン」は、乳脂肪分の多い層と少ない層、さらにカラメルソースを含む3層からなっており、3種類の味わいが特徴だ。牛乳瓶の容器については、藤田氏は「プリンを焼くのにガラスの容器を使いたかった。普通じゃ面白くないので、何かないかと思ったらコレがあった」と振り返る。それは身近なところにあった。現在牛乳をおろしている「富良野チーズ工房」へ行ったときに職員の机にその瓶が置かれていたという。このスタイルは、牛乳瓶型の容器に入れて販売する製品の先駆けとなった。

 事業をやっていく時には軸をどこに置くか、そしてそれをいかにぶらさずにやっていくかということもポイントとなる。藤田氏も、商品開発においてこの軸を大切にした。安全性なのか?届ける速さなのか?……藤田氏の考えは実にシンプルだ。それは「美味しいものをそのまま届ける」ということ尽きる。味やプリン作りの苦労については、フラノデリスの公式サイトに“ふらの牛乳プリン物語”が掲載されているので、そちらを参照していただきたいが、通販なりの難しさがあったという。「プリンは柔らかいので壊れやすい。通販用に硬くしたり冷凍にして安全に送ることができるようなクレームの少ない商品に仕上げることはできるが、そんなものを取り寄せたいと思わない。でも、このままではやりにくい。そこにチャンスはある」(藤田氏)。送りにくいし、壊れやすいし、日持ちもしないが、美味しさをそのままに送ることができたら、差別化できると考えたという。そのために郵便局も協力してくれた。「プリンが入っています。そ~っと運んでください」……そんなラベルを郵便局の人が「ふらの牛乳プリン」用に作ってくれ、支店にも静かに運んでくださいと電話をしてくれたという。また、藤田氏自身も通販で扱うことに相当の覚悟をした。「通販は全国相手なので、壊れたりすると場合によっては持っていかなければいけないこともある。それができないなら、通販はやらないほうがいい。“いや、いいですよ”と言われることがほとんどなんですけど、夕方になってしまうが飛行機の時間とか調べてその日のうちに持っていく覚悟ですね」。

 自己資金は最初に店を出した年はすっからかんになったが、初年度に売り上げが3000万に。「気が付いたら貯金もまあまあ貯まっていて、次の年には6000万円になってました。そのくらいから物産展みたいなものに出たりして、3年目は1億5000万円になりました。だんだん最初の店舗が手狭になり、現在の土地を見つけたんです」という。この時の坪単価は5万円だ。

 北海道は今やお菓子の激戦区だ。白い恋人、ロイズ、ルタオ、六花亭……そんな競争の激しいところでの商売はやりにくくはないだろうか?「僕は逆に激戦区だからいいと思っています。秋葉原は昔、そこに行けばいっぱいものがある電気街だったじゃないですか?それと同じように何もないだろうなということろにはいかないですよね」。菓子でなくても良かったのではないかとも思うが、それについては「昔、富良野にはパン屋さんがないからやってみたらと言われたことがあります。でも僕が思うに、開店したら一時期は客がやってくると思いますが、パン屋さんがないところでそれを根付かせるのには10年はかかるんじゃないでしょうか?」と話す。
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