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【木暮祐一のモバイルウォッチ】第57回 山間部の通信エリアを調査、キャリアの戦略の違いを考えてみた

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今回電波状況をチェックした各スポット
今回電波状況をチェックした各スポット 全 18 枚
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■山間の境界域の通信エリア差に各社の戦略が見える

 102年前に起こった八甲田雪中行軍遭難事件。八甲田は相変わらず日本有数の豪雪地帯ではあるが、現代では道路も整備され、一部冬季通行止め区間はあるにせよ、都市間を結ぶ主要道はしっかり除雪もされ、そうした道路及び周辺ではケータイやスマホも使える。102年前にこうした通信手段があったら、悲惨な事件も起こらなかったであろうし、この「どこでもコミュニケーションできる機器」があるおかげで、万が一の緊急時に助けを呼ぶことができるようになった。改めて、通信技術の著しい進歩によって私たちの生活の利便性の向上はもとより、万が一の安全のために役立つものであると実感した。

 しかしながらドコモ、auのエリアマップを見ていただくと分かるとおり、通信キャリアのエリア整備には各社それぞれの狙いに違いがある。NTTドコモは、人々の往来に重要な場所をしっかりとエリア化している印象だ。これは利益にならない場所でも、通信を確保しなくてはならない場所はエリア化するべきというNTTグループの思想が活かされているのだろう。NTTドコモの場合、まだ山間部は3Gが主体である。LTEによるデータ通信サービスも重要だが、とくに山間部においては「通話」の利用が主体であると考え、電波の通信帯域を3G中心に割いているのであろう。一方でauの場合は、ユーザーが多い場所、それも八甲田連峰南麓のスキー場エリアなど、ビジネスよりもレジャーも目的としたユーザーが集まりそうな場所を重点的にエリア整備しているという印象を受けた。

 今回、ソフトバンクの状況は丁寧に見てこなかったが、ようやく獲得したプラチナバンド帯で一気に3Gエリアを構築した印象で、思いのほか山間部でも電波が入ることが確認できた。ソフトバンクの懸念は、早くプラチナバンド帯でもLTEを使いたいところなのだが、割り当てられたプラチナバンド帯には色々な制約条件があり、当面は十分な帯域を確保できない状況にある。そのためまずは通話を最優先に通信可能なエリアを広げるという視点で、プラチナバンドは3Gを優先してエリアを拡張している感じだ。

 今回、山間部の電測を挙行しようと思ったきっかけは、auのLTE網しか使えないという、ケイ・オプティコムのMVNOサービス「mineo」を入手したことだ。3Gが使えないということで、当初はまったく期待していなかったmineoだが、じつは“思いのほか使えた”ということで、auがどの程度本気でLTEエリアを拡張しているのかを知りたくなったのだ。auはもともとプラチナバンド帯域で電波を吹いていた基地局設備を持っていたため、これをLTE化していくことは他のキャリアよりも先行している印象だ。NTTドコモが3GとLTEのバランスを考えながら(音声通話が多いのか、データ通信が求められるのかなど、場所ごとに考えながら)エリア構築を行っている印象に対し、auはむしろ積極的にLTEを拡張し、帯域をLTEに優先的に割り当てているような感じだ。

 都心部では仮に電波の入り具合が悪くても、多少移動すれば電波を掴むことができる。しかし、筆者が暮らす青森をはじめとして、地方では郊外に出たり山間部に入れば「その先は当分通信できない」ことがざらにある。豪雪の青森などでは、都市間の移動の最中に遭難するかもしれない。そんなときに確実に通信できるよう、複数の通信キャリアの回線を同時に持ち歩くことはとても大切なことだと改めて実感した。地方においては、もっぱらNTTドコモのケータイ・スマホなら万全というイメージが定着しているようだが、今回八甲田連峰周辺を電測した結果、必ずしもNTTドコモが万全なわけではなく、キャリアによって得意不得意とする場所があることが分かった。より安価に維持できるMVNOのSIMを活用すれば、万が一の際の通信確保を冗長化できる。NTTドコモのネットワークを使ったMVNOは数多いが、唯一auのネットワークを使えるMVNO「mineo」も予備回線としても魅力的な選択肢と言えそうだ。
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《木暮祐一》

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