【木暮祐一のモバイルウォッチ】第71回 VAIOスマホがこけたら日本のスマホはもう終わり
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日本通信は1月30日に2014年度第3四半期決算発表を行ったが、ここでVAIOスマホがお披露目されるのではないかとマスコミ関係者が期待していた。ところが、この日はなんとVAIOスマホの「空箱」だけが披露され、記者たちを大いに落胆させた。VAIOスマホはもともと昨年12月には発売する計画だったようだが、諸般の事情により発売が数度延期され、現在に至っている。
発売に向け、これだけ関係者やユーザーがじらされており「VAIOスマホ」への期待は高まっている。そうでなくても、スマホの製造に関して日本の端末メーカー各社が世界で苦戦を強いられている中で、世界に浸透している「VAIO」のブランドで新たなスマホが誕生するとあって、必要以上に日本のスマホ業界の牽引役としての期待がもたれている。だからこそ、12日に発表される「VAIOスマホ」が万が一関係者やユーザーを落胆させるような端末の出来であったら、日本のスマホ産業全体への打撃も避けられないのではないかと考えてしまう。
「格安スマホ」「格安SIM」などのイメージで、今やすっかり一般の消費者にも知られるようになったMVNO(仮想移動体通信事業者)だが、日本通信はこのMVNOを代表する老舗企業である。NTTドコモなど、MNO(移動体通信事業者)からの通信回線の卸に関し、日本通信が長年にわたって度重なる交渉等を経てきたことでMVNOの立場を向上させ、これにより現在のようなMVNOの競争環境が作られてきた。消費者がより安価にスマホを活用できる環境が整ってきたのも、日本通信の功績と言っても過言ではない。
しかしながら、SIMカードのみを販売するビジネスモデルでは、これまで端末と回線契約をセットで購入・契約してきた一般の消費者になかなか馴染まれず、MVNO各社が苦戦してきたのも事実である。そんな中、2014年春にはイオンが格安SIMと機能を最小限に抑えた格安スマホ端末をセットで販売したところヒットとなった。これを契機に、MVNO各社がSIMカードとスマホ端末をセットで販売する流れが定着しつつある。MVNOの老舗であった日本通信は、新たに発足したVAIO株式会社と提携し、世界に知られた「VAIO」ブランドを冠したスマホを掌中にすることで、MVNO古参としてのブランドを確立させようと企てたものと考える。
《木暮祐一》
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