【連載・視点】合成繊維の技術で作れないものはない!成功を呼び込んだ小松精練の戦略
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石川県能美市に拠点を置く小松精練の強みは「一つの要素技術を多彩な用途に展開できること」であると池田氏は語る。アジアを中心とした海外の生産工場の技術力が急速に高まり、現在は日本国内で販売されている繊維製品の約97%が海外産という、国内繊維業界にとっては困難な状況が続いているが、小松精練はなぜ成長を続けることができるのだろうか?「それは、当社の染色加工技術が世界の先端を行っているからだ」と池田氏は胸を張る。
国内の繊維産業が苦戦を強いられる中、小松精練グループの国内生産量は順調に増え続けている。小松精練の地元である北陸地方の繊維産業は、「絹=シルク」をベースに、レーヨンからナイロン、ポリエステルに続く合成繊維の変遷を上手に採り入れて発展を遂げてきた。東レ、テイジン、カネボウなど大手合成繊維メーカーの製造拠点を誘致できたことも北陸の地盤強化につながった。だが、小松精練という会社は、けっして北陸地域全体の成長に身を委ねながら、困難をやり過ごしてきたわけではない。自らの手で成功を呼び込むために、「3つの大胆な戦略」に打って出た。
■ビジネスを成長軌道に乗せた「3つの大胆な戦略」
一つめの戦略は、1973年の販売部設立だ。それまで小松精練は大手合成繊維メーカーからの委託加工をビジネスの主柱としてきたが、国内でオイルショックが発生した煽りを受けて、大手メーカーの体力が低下してきたことに伴い、同社は自ら製品を企画し、作って販売するという道を選択した。池田氏は「これが奏功したことにより、自らの要素技術を活かしながら様々なビジネスのフィールドを切り拓いていくという精神が社員一同に培われた」とし、この戦略が同社にとっての大きなターニングポイントの一つと位置づける。
二つめは2002年に発売した「ビンテージ繊意」の商品化だ。綿やウールなど原糸の持つ風合いを活かしながら、高度な染色加工技術により「合繊でも化合繊維でもない」、全く新しい独自の質感を持つテキスタイルが登場した。天然繊維である綿やウールに限りなく近い風合いを備える合成繊維をつくり、その生存領域を広げるという斬新なアイデアが支持を集め、いまでも同社を代表するヒット商品にまで急成長を遂げた。
そして三つ目が、現在の小松精練のブランドイメージを確立させた、欧州のアパレル先進市場を中心とした海外進出だ。日本国内では染色整理メーカーとして広く認識されていた小松精練だが、2003年にはビンテージ繊意を携えて、パリやミラノをはじめとするファッションの先端に乗り込んだ。当時フランスのパリで開催されるテキスタイルショーの「プルミエール・ビジョン」が日本をはじめ海外企業に出展の門戸を開いたことも同社にとっては好運な出来事だったが、この出展による成功が、同社の高い技術力を世界に知らしめ、その後数々の展示会に出展を続けてきたことによって小松精練のブランドイメージが高まり、信頼の獲得につながった。日本のメーカーがヨーロッパ進出で成功を収めることは簡単ではなかったはずだ。その勝因は、同社会長の中山賢一氏が起ち上げたコンセプトである「ファッションとテクノロジーの融合」を徹底して押し進めてきたからだと池田氏は語る。その好例の一つが、イタリアにおけるウール加工のトップメーカーであるロロ・ピアーナとの協業だ。
《山本 敦》
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