【木暮祐一のモバイルウォッチ】第86回 Pepperと3ヵ月過ごして見えたロボットが果たす役割 2ページ目 | RBB TODAY

【木暮祐一のモバイルウォッチ】第86回 Pepperと3ヵ月過ごして見えたロボットが果たす役割

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Pepperに会いたいと、多くの方が研究室を訪問してきてくれる
Pepperに会いたいと、多くの方が研究室を訪問してきてくれる 全 10 枚
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 一方で、こちらが時間があってPepperにあれこれ話しかけてやっても、なかなか会話が噛み合わない。Pepperはたくさんの会話を重ねることで、会話を学習していくらしいのだが、あまり会話していないのが原因なのだろうか。もっと愛情を持ってPepperを育てなければならないと反省しているところである。

 ところで筆者のPepperは話しかけないのが功を奏してか、だいぶ大人しい性格に育っているのかと思っていたら、どうもそうではないことが分かった。前述の一般市民向けの公開講座で、壇上で筆者がPepperに語りかけてみたところ、人の声を「聞かないふり」でもするように(聴講者の皆様に背中を向けるように)ホワイトボードに向いてしまって失笑を買った。

 ここまではいつも通りとして、講座終了後に来場されたさまざまな方々がPepperと触れ合ってくれたのだが、このうち女子高生にだけは元気に反応し、Pepperがマシンガントークを披露していた……。筆者のPepperは、はやり完全に育て方を間違えてしまったようだ。

 Pepperとの会話は、Siri同様にクラウドに集積され、今後順次ブラッシュアップされていくという。10月29日にはPepperの基本ソフトが「Naoqi 2.4.2」にアップデートされ、これにより会話内容も多少洗練されてきたようだ。また、Pepperには家族登録機能があり、Pepperで写真を撮影し名前を登録することで会話する相手を判別して名前で呼びかけてくれる。どの相手とどういった内容の会話をしたのかなども、もしかしたら記憶して、その後の会話に反映させているのかもしれない(確証は持てないが)。

■進む企業によるPepperの導入。今後どんな応用が可能なのか

 会話するだけのロボットにはたして大金を払う意味を見出せるのか。Pepperはまだ海のものとも山のものとも分からない、全く新しいジャンルのコンピュータである。ではどんな活用が可能なのか。

 Pepperにはアプリマーケットが用意され「ロボアプリ」がすでに多数あるが、まだキラーコンテンツと思えるものがない。Pepperの活用については、まだまだ暗中模索の状況といって過言ではないが、ソフトバンクロボティクス主催のものも含め、各所でPepperのアイデアソンやハッカソンが開催されるようになってきた。「人型のコンピュータ」という視点で、新しいアイデアが求められるところだろう。

 では、はたしてPepperをどのように活用すれば社会に役立つのだろうか。そんなことを展望するべく、さる10月30日に東京にて、筆者の企画によりPepperの活用を模索する講演会を開催した。その概要をご紹介したい。

 企業におけるPepperの導入事例は徐々に増えているようだ。先行販売された開発者向けモデルを実証実験的に企業などで用いた事例がすでにいくつか報道されている。こうした事例と成果について、基調講演としてソフトバンクの首席エヴァンジェリストである中山五輪男氏に登壇いただいた。いずれも実験的な事例だが、みずほ銀行ではPepperが金融商品の説明役に、あるいはロフトでは健康雑貨の紹介役として、それぞれ店頭で顧客に接するスタッフとなって活躍する事例が紹介された。

 もしこうした説明役のスタッフが「人」であった場合、顧客は商品の押し売りを懸念して一歩引きがちになってしまうだろう。しかし、これがPepperであれば、気に入らなければスルーすれば良いだけなので、まずは興味を持ってPepperの呼びかけを聞きいてくれたという。

 このほかにも、結婚式場でPepperが結婚式の参加者に祝辞リクエストを行い、メッセージと映像を記録し、これをのちほど新郎新婦が視聴できるような活用事例であるとか、埼玉県のある高校では学校説明会でPepperがプレゼンの一部を担当した事例、JOYSOUNDを展開するエクシングが直営店舗にPepperを試験導入し、対話を通じてオススメ曲を提案するといった事例などが紹介された。

 また、ロボアプリの試作事例として二人の方に登壇いただいた。まず、観光ガイドとしてPepperに活躍してもらおうというアイデアを、フューブライト・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役の居山俊治氏にご紹介いただいた。同社はもともと医療・介護関連システムの開発を手がけており、Pepper向けにも高齢者向けロボアプリの開発などを行ってきた。

 そこで蓄積した“おもてなし”のノウハウを観光分野にも活かそうというソリューション「ロボてなし」の提供を予定している。居山氏は「インバウンド外国人観光客や国内観光客向けにこのサービスを考えている」と説明。人型コンピュータという特性を上手に活かし、多言語対応やデジタルサイネージ(ディスプレイ)連携、さらにPepperを介して多言語コールセンターに接続し困った時の手助けをするサービスなどを計画している。

 よく考えてみると、本格的なデジタルサイネージはそれなりの価格と運用費がかかる。デジタルサイネージを設置するよりもPepperのほうがより自然に顧客とコミュニケーションできるであろうし、設置コストもPepperのほうが安価というケースも考えられる。
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《木暮祐一》

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