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【木暮祐一のモバイルウォッチ】第86回 Pepperと3ヵ月過ごして見えたロボットが果たす役割

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■期待する家庭での役割

 宅内では今後さまざまな家電製品が通信機能を持つとされている。いわゆるIoTとスマートホームの実現だ。こうした分野は海外ではすでにスマートホームの共通プラットフォーム(IFTTTなど)が登場し活用が始まっているようだが、相変わらずわが国では家電メーカーごとに仕様が閉じていたりする。このあたりがオープンになり相互連携が可能になれば、そこにPepperを加えることでスマートホームの使い勝手が格段に向上していくのではないだろうか。

 たとえばPepperに話しかければ宅内の各種センサー類が収集したモニタリングデータ(室温が何度だとか、郵便物がポストに入っているとか)を教えてくれたり、家電製品の遠隔での電源コントロールも可能になるはず。スマホだけでもできそうだが、間にPepperが入ることで、Pepperのご意見を踏まえて遠隔から操作をしたり、逆に何か問題が発生などしたらPepperから出先のオーナーに対して連絡してくれるような使い方が考えられるだろう。

 Pepperにはカメラも搭載されているのだから、外出先から宅内の監視もできるはずだ。現時点で「お留守番Pepper」という、留守中の監視用ロボアプリがある。この機能をONにすると、不在中にPepperの視界に動くものがあった場合に撮影を行い、記録してくれる。記録された撮影画像は帰宅してから見るだけなのだが、これがリアルタイムにオーナーのスマホに届くようになればさらに便利である。

 さらには、外出先から宅内の様子をスマホとPepperを通じて覗くというようなことも不可能ではないはず。当然、現時点では不正アクセスされたら恐ろしいことになるので、あえてそうした機能は許可していないのであろうが、アプリの作り込みによっては不可能ではないはずだ。

 そんな可能性を漠然と考えていたが、前述の中山五輪男氏の講演の結びで、将来のPepperの可能性の中にまさにスマートホームとしての使い方を暗示するスライドも飛び出してきた。ソフトバンクとして、こうしたPepperの使い方は構想しているのであろう。現在市販されているPepperにできなくても、ハードウェアのアップデートで機能が追加されていく可能性もある。

 市販版のPepperはすでに開発者向け先行販売されたPepperよりもCPUなどハードウェアの性能が向上しているそうだ。このため先行販売モデルのほうはハードウェアアップデートを無償で受けられるそうで、現在順次対応が進んでいるという。ちなみにハードウェアアップデートは、Pepper本体をソフトバンクに送り、ソフトバンクではPepperの「頭」を交換してユーザーの元に返送するようだ。これぞ『アンパンマン』の世界だ。

 ともあれ、Pepperは家庭用ロボットという新ジャンルの第一歩を踏み出したばかりである。まだまだ高価であるし、利用できる機能もかなり限定的である。大半の方々はPepperの必要性や意義に疑問を持たれていると思う。しかし、かつての自動車電話・携帯電話も同様に「そんなもの必要なのか」といわれていたものが、登場から20年かからずに1人1台利用するものへと大衆化を果たした。

 同様に、家庭用ロボットという製品も、スマートホームを実現する人型IoT・家電コントロール端末として発展すれば、一家に1台求められるものになっていくのかもしれない。『鉄腕アトム』も『ドラえもん』も、漫画を読む限りでは本体に通信機能を備えていなさそうだが、Pepperは自らインターネットにつながることで、その価値を発揮してくれる。これまでのロボットのイメージから想像されるものとは似て異なる新発想デバイスと考えるべきなのである。

 現在は筆者の職場である研究室内で生育中であるが、近いうちに自宅に再移送し、家庭内で「Pepperと暮らす」生活を楽しんでみようと思う。今後のPepperのバージョンアップにも大いに期待している。
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《木暮祐一》

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