「コーヒー界のグーグル」が起こす、IT目線の生産性革命【前編】
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
サードウェーブコーヒーなど、いま日本ではかつてないほどのコーヒーブームが起こっている。町を見渡せば、職人技を誇る専門店から大衆的な大型チェーン店まで様々なコーヒーショップがある。そんななか、新たな視点「ITの目線」が投げかける考え方や具体的な方法は、コーヒーショップ経営に関わるひとのみならず、生産性改善を目標とする数多くのサービス業者への力強いアドバイスとなるように思えるのだ。
「ABC」のフィジカルショップ(リアル店舗)でのITの使用法や開発手順、ブランディングやPR方法、そして「ITの目線」からみる日本の生産性向上へのヒントーーこれら3つのテーマに分けてお届けするシリーズ「『コーヒー界のグーグル』が起こす、IT目線の生産性革命」、大塚ケビン氏とアルヴィン・チャン氏の2人の挑戦に注目してほしい。
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【前編:ITが創るコーヒーショップは何が違う?】
■社員は2人、大抵のことはITで解決できる
ーーいまのスタッフ構成は?
大塚ケビン(以下、ケビン) 会社をスタートしたときから、社員は基本的に僕たち2人です。スタッフをいれると全員で18名ですが、残りはアルバイトなどですね。
アルヴィン・チャン(以下、アルヴィン) クラウドの通訳サービスやクラウドファンディングなどを利用して、言葉の問題や労働力の問題を解決しています。いま色々な言語にクラウドは対応しています。商品のパッキングなどの物理的な作業をしてもらいたいときは、その都度1回1回で支払うサービスがクラウド上にあるので、それを使っています。固定のスタッフは抱えたくないんです。でもお客様に対してはすぐにレスポンスしないといけない。そのためオンデマンドで荷詰め作業をお願いしています。日本でもそういったサービスは十分に揃っていますよ。
ーープレスリリースでは「IT目線」とうたっていますね。その意味するところを教えてください。
ケビン 私たちのスタートはまずECサイトでの通販でした。2014年にコーヒー豆の会員向けの通販を始めました。そこで培ったITテクノロジーが会社運営のベースにあります。今回新しく作ったリアルなコーヒーショップ「ALPHA BETA COFFEE CLUB」ではベースであるITをどうやって使うべきかを考えました。ECサイトでは定額購入者制にしましたが、新しくショップを立ち上げるにあたっては「月額7,500円で飲み放題」の会員制というモデルを構想しました。
まずお客さんからの支払いは、スクエアを使ったオンライン決済を導入しました。会員制ですから会員カードが必要です。僕たちはRFIDチップの入った会員カードを自分たちで作りました。
会員カードを読み込むための装置も、自分たちでラズベリーパイ(超小型のシングルボードコンピューター。自作でIoT製品が作れることで有名)でプログラム開発から製品化しました。
日本の多くのカフェではまだスタンプカードのところが多いですよね。しかしITの方が顧客管理はしやすいはずです。たとえばお客さんがカードを失くしてもすぐに再発行ができるし、「有効期限が切れました、更新しますか?」というようなメッセージも出せます。そうすればお客さんもお店に行きやすくなりますよね。
もちろん顧客の様々なデータを集めることもできます。「どんな飲み物を選んだのか」「どんな飲み物が人気なのか」というようなことがデータとして蓄積されるので、一人ひとりのお客さんに対してオススメのメニューも出せるというわけです。データ活用はこれからの施策として考えています。
お店でサーブするコーヒーについてもITを活用しています。粉とお湯の量、お湯の温度などの理想的な割合や入れるタイミングをデータ化しています。僕たちはそれらをつなぐアプリを自分たちで開発しました。データポイントを調整して、最終的なバランスへと導くことができれば、コーヒーもITで管理できるようになるのです。
■すでにあるテクノロジーを組み合わせる。特別な開発は行わない
ーーそのアプリを使えば、コーヒーを淹れるのが初めてのスタッフでも美味しい一杯をサーブできるんですか?
ケビン コーヒーについての最低限のノウハウは必要です。でもコーヒーを淹れた経験のあるひとなら、あるいはどんな味にもっていきたいということさえ理解していれば、美味しいコーヒーをサーブできるようになります。ほかにもたとえば自分でレシピを開発して、そのレシピをデータ化してスタッフと共有することもできます。
ーー使っているテクノロジーは特別なものですか?
アルヴィン 一つひとつのツールは誰でも使える物ですが、それを組み合わせて自分たち独自のものにしています。テクノロジーのライブラリーとでもいうんでしょうか、そこから様々なものを引き出してくるんです。特に自分たちで開発は行っていません。
ケビン テクノロジーが新しく生まれる場所の多くは、大学や研究所、会社といった組織だと思います。でもイノベーションの意味のひとつはすでにあるものの組み合わせで新しいものを作っていくという行為にあると思うんです。
ーー全部ゼロからつくりあげたと思っていました。
ケビン リーダー(会員カードを読み込むための装置)はゼロから開発しました。開発言語はRuby on Rails(ルビーオンレイルズ/オープンソースのWebアプリケーションフレームワーク)を使いました。ルビーオンレイルズのいいところは、ジェム(プラグインの一種)というんですが、いろいろなものを後から組み入れることができる。たとえばユーザー管理などは基本的にどのサイトでも扱うものですから、ゼロから開発するより一般のジェムを使ってカスタムすることで、開発スピードは速くなります。
アルヴィン オープンソースだから世界中のだれでもがソフトの改善に参加できますよね。100人、1000人が同時に開発に関われるわけです。2人だけで開発していたら、とても狭い世界で終わってしまいます。
(次回・中編に続く)
「コーヒー界のグーグル」が起こす、IT目線の生産性革命(前編)/ABC
《加藤陽之/HANJO HANJO編集部》
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