「落とし物」をこの世界からなくすために……サービス業のIT利用最前線 | RBB TODAY

「落とし物」をこの世界からなくすために……サービス業のIT利用最前線

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世界最小クラスの落し物追跡タグ「MAMORIO」。カギやバッグなど、日常生活で忘れ物になりがちなアイテムに取り付けておくことで、紛失を防止できる。独自の「クラウドトラッキング機能」により、ユーザー同士が協力して、紛失物を探すことができる
世界最小クラスの落し物追跡タグ「MAMORIO」。カギやバッグなど、日常生活で忘れ物になりがちなアイテムに取り付けておくことで、紛失を防止できる。独自の「クラウドトラッキング機能」により、ユーザー同士が協力して、紛失物を探すことができる 全 5 枚 拡大写真
【記事のポイント】
▼紛失防止機能を搭載したキーホルダーは、近年さまざまな商品が登場している
▼一般消費者向けの紛失防止タグだが、企業の管理業務(機材の位置情報など)などにも利用できるため用途は広い
▼2020に向けてイベントが多くなるいま、商業施設やイベントホールなど人の集まる場所での紛失防止タグの利用を、企業や行政が注目している


 インバウンド需要の拡大、そして2020年の東京オリンピック・パラリンピックといった要因から、「おもてなし」がキーワードとして注目されている。さらに、IT/IoTを活用した「おもてなし2.0」とでもいうべきサービスや製品が、飲食業・旅行業・物販業の領域で、多数登場しつつある。本記事はそうした最新事例を紹介し、自社での導入の参考とする内容だ。

 今回は、紛失防止デバイス「MAMORIO」を扱うMAMORIO株式会社(以下MAMORIO社)に焦点を当てる。MAMORIO社は、もともと「株式会社落し物ドットコム」として設立された企業だ。紛失物に関する情報を集約するポータルサイト「落し物ドットコム」を運営していたが、そこからの延長として、タグ(キーホルダー)タイプの超小型ハードウェア「MAMORIO」の開発に至ったという。その根底にあるのは、“「落とし物」をこの世界からなくしたい”という思いだ。今回は、同社COOの泉水亮介氏に話を聞いた(ディレクターの桶本茂理氏も同席)。

■ユーザーみんなで紛失物を探せるのが「MAMORIO」の特長

 「MAMORIO」は、世界最小クラスの「落し物防止タグ」だ。カギやバッグなど、日常生活で忘れ物になりがちなアイテムに取り付けておくことで、紛失を防止できる。Bluetooth機能を搭載しており、MAMORIO本体とスマートフォンが離れた際に「紛失アラート」で手元から離れたことをプッシュ通知する。また最後に手元にあった場所の位置情報を記録しており、万が一紛失した場合もすぐに確認できる。

 こうした、紛失防止機能を搭載したキーホルダーは、近年さまざまな商品が登場している。MAMORIOのように、離れた際にアラートする商品のほか、スマホから操作してブザー音を鳴らす商品などもある。ネットショップなどでは一般的なキーホルダー以上に売れ筋となっている。

 MAMORIOが、こうした類似製品と一線を画すのは、独自の「クラウドトラッキング機能」を用意している点だ。「クラウドトラッキング機能」では、ユーザー同士が協力して、紛失物を探すことができる。クラウドトラッキングモードをONにすると、サーバーにMAMORIOが紛失中であることが登録される。たまたま他ユーザーが、紛失中のMAMORIOの近くを通りかかると、その地点の情報が、持ち主のスマートフォンに届けられる。これにより、従来の紛失防止製品より、発見可能範囲を大きく広げているのだ。また、MAMORIOユーザーが増加すればするほど、紛失物の発見確率がより高くなる構造になっている。

 「MAMORIO自体はツールの1つでしかなく、“紛失物をなくす”というのがサービスの根本」(泉水氏)であり、“家のなかでの失せ物を見つける”のではなく、“外出時の物忘れを防げる”“みんなで見つけることができる”のが、他製品との違いとなっている。またサイズの小ささも、利便性を大きく高めている。

■駅や商業施設に専用アンテナを設置中

 MAMORIO社は2012年7月、株式会社落し物ドットコムとして創業。「なくすを、なくす」が同社のミッションだという。「紛失問題に特化した事業としてスタートしました」(泉水氏)とのことで、落とし物をした際の対処方法のほか、紛失物・拾得物の報告、TwitterやFacebookでの拡散といった情報提供を行っている。「全国の遺失物保管所のデータベースも持っており、企業が遺失物を探す際の代行なども行っていました」(泉水氏)という。そこから、BLE(Bluetooth Low Energy)技術やスマートフォンの普及、サービス開発の試行錯誤などがあり、MAMORIOのアイデアに至った。

 MAMORIOの具体的なスタートは2014年。9月にクラウドファンディングサイト「MotionGallery」にコンセプトを掲載し、支援募集を開始したが、当初予定の150万円を4日で達成し、10月31日には倍額の300万円を超えた。「イノベーターの方々にいろんな知見を授けてもらいつつ、紆余曲折あって約1年かかった。最終的にはいいメーカーさんに巡り会って実現した」(泉水氏)とのことで、2015年11月に製品が完成、発売となった。2017年からは、Amazonやヨドバシカメラ、高島屋での販売も開始。「Amazonランキング大賞2017上半期」Launchpad部門では、1位を獲得するなど、好調に推移している。具体的な数値は非公開ながら、すでに数万単位の製品が市場に出ている模様だ。



 MAMORIOそのものは、一般消費者向けの製品だが、MAMORIO社では同製品をプラットフォームとして位置付けており、さまざまな企業との連携も複数展開中だ。まず、MAMORIOをベースに“機材の位置情報を一括管理できるシステム”を構築し、テレビ朝日と2016年8月に実証実験を実施。日本航空 (JAL)も2016年11月に実証実験を行っており、その有用性が確認されたという。

 また、専用アンテナ(MAMORIO Spot)を設置し、MAMORIOの情報を迅速に受信し、ユーザーへの通知を行う「お忘れ物自動通知サービス」を提供。東急電鉄、相鉄、東京メトロ、小田急、京王電鉄、西武鉄道、江ノ電など、鉄道会社との提携を中心に、駅や商業施設での展開を進めている。テレビ朝日も、実証実験の後も、アンテナを引き続き設置しサービスの常時提供を行っているという。「第40回隅田川花火大会」といったイベントにもMAMORIO社は協賛。当日限定のMAMORIO Spotを開設することで、「お忘れ物自動通知サービス」の提供を行っている。

 こうした展開については「インフラと組んで、課題解決のために置いていることが強み」(泉水氏)だとした。また「データによると、年間2600万件ぐらいの拾得物が警察に届けられているそうです。このうちの1000万件弱ぐらいは、鉄道の駅に届けられた物品で、それが集約されて警察に届けられている。つまり“落とし物の3分の1は駅に届く”ということ。だから、そこを要所として抑えることが重要です」(泉水氏)と、効率面からの戦略であることもあわせて解説してくれた。今後は駅に加え、商業施設やイベントホールなど、人の集まる場所でのMAMORIO Spot展開、さらには「第40回隅田川花火大会」のようにイベントでの展開を広げる方針だ。落とし物に困っている行政機関からの問い合わせもあるという。

■「落とし物も、ちゃんと届けられる」日本独自の事情を踏まえた展開

 MAMORIO独自の「クラウドトラッキング機能」を聞くと、使っている人数が増えれば増えるだけ、落とし物が見つかりやすくなる。だが逆に、人数が少ない初期状態では機能しなかったのではないかという疑問があった。そのへんを泉水氏に聞くと、「落とし物・忘れ物って、実は多人数で探すことにこだわる必要はないんです。なぜなら、“その日1日、移動した場所のどこか”に、必ず落とし物・忘れ物があるからです。だから、自分が通った場所の履歴が残っていれば、それをたどって、落とし物のある場所に近づけるはず。そうすればBLEでも見つけられるので、これだけでほぼ解決する。みんなで探すのはあくまで最終手段なんです」(泉水氏)と解き明かしてくれた。

 「あと、日本では、落とし物はちゃんと届けられるんです。だから、そうした場所にアンテナを置くほうが、やみくもにエリアを広げるより効率的だと気付いた。だから、駅や商業施設など、“遺失物が届け出られるところ”に、MAMORIO Spotの設置を注力しています」(泉水氏)と、日本独自の事情も、展開スタイルに影響しているという。



■落とし物をしてもちゃんと戻ってくることが“おもてなし”の本質

 MAMORIOのB2B展開については、過去には、スバルの「なくさない自動車キー」、パルコの「なくさない手袋」なども行っていたが、あくまでプラットフォーマーなので、その応用は各企業に委ねているという。ITベンダーなどがセキュリティ対策として導入あるいは複合製品を出すようなケースを想定しつつ、テレビ朝日やJALのように、資材・機材管理システムとしてのニーズも検討している。またペット向けサービス連携も開発が行われている。「各企業に向けては、“これを導入してください”ではなく“これを使ってなにかしましょう”というスタンス」(泉水氏)ということだ。今後これまでとは異なるMAMORIOが、他企業から出てくると思われる。

 だが、こうした製品は、同社がミッションに掲げている「なくすを、なくす」とは、また異なる方向性だと泉水氏は考えている。「なくしたくない≠なくしたものを探す」であり、「我々が直接やるべきかは、見極めている段階」(泉水氏)だという。

 最後に、MAMORIO自体は、ストレートにインバウンドユーザーなどを対象にしたものではないが、「IT/IoTを使ったおもてなし」ということについて聞いた。これに対し泉水氏は、「“おもてなし”という単語だけが、2020東京オリンピックのプレゼンテーションで注目されるようになりましたが、そもそもの文脈は『東京オリンピックで落とし物をしても、ちゃんと戻ってきます。これが日本のおもてなしの心ですよ』というものだったんです。日本人の倫理観の高さを示す、非常に大きな単語だと思います。そして落とし物が返ってくるというのは、世界的に見たらとてもクレイジーなことなんです。落とし物をしても、ちゃんと戻ってくること、これが“おもてなし”のもっとも分かりやすい形だと思います」と、IoTと日本の文化が融合し、「落とし物をしても、ちゃんと戻ってくること」こそが“おもてなし”の本質なのだと指摘してくれた。

サービス業のIT利用最前線!11 「落とし物」をこの世界からなくすために/MAMORIO

《冨岡晶/HANJO HANJO編集部》

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