アジア圏の若者世代の動向を注視せよ!観光大国に必要な3つの「D」とは | RBB TODAY

アジア圏の若者世代の動向を注視せよ!観光大国に必要な3つの「D」とは

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株式会社ランドリーム代表取締役(前トリップアドバイザー代表)原田 劉 静織氏
株式会社ランドリーム代表取締役(前トリップアドバイザー代表)原田 劉 静織氏 全 2 枚
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【記事のポイント】
▼アジア圏の訪日客の動向を注視すること。中国は今後も増加する
▼アジア圏の若い世代のトレンドをおさえること。彼らが欲しいものを提供すること
▼情報はちゃんと訪日客に届いているのか? SNSや口コミの効果を再確認すること

 観光ビジネスを支援する企業や団体が多数出展する世界最大級の旅行イベント「ツーリズムEXPOジャパン2017」が、2017年9月21日から23日の期間、東京ビッグサイトで開催された。

 今回、特筆されるのは、日本の将来を左右するインバウンドについてフィーチャーした展覧会「インバウンド・観光ビジネス総合展」が、「ツーリズムEXPOジャパン2017」内のフェアinフェアとして初開催(主催:ツーリズムEXPOジャパン、日本経済新聞社)されたことだ。

 HANJO HANJOでは、「インバウンド・観光ビジネス総合展」で何が語られたのかに注目し、複数のセミナーから重要なテーマやワードを抽出。今後のインバウンドビジネスや地域創生プロジェクトに向けての課題や問題解決の手がかりとなるような特集を構成する。

 第二回目は9月21日に行われたセミナー『「インバウンドベンチャー最前線!」第1部 観光大国を目指す日本の近道』~ランドリーム代表取締役(前トリップアドバイザー代表)原田 劉 静織氏~より、日本が観光大国を目指すために必要なポイント、そして今後も増え続けるアジア圏のインバウンド客の対策についての要約をお届けする。


■アジア圏の潜在的な海外旅行者は5億4000万人

 セミナーの冒頭、原田氏は「5億4000万人」という数字を挙げた。2030年に全世界の海外旅行者数が18億人に達し、そのうち約1/3にあたる5億4000万人がアジア圏から世界各国へ旅行するのだという。見方を変えれば日本の周辺には潜在的な海外旅行者が5億4000万人いるということになる。

 現在の訪日外国人は中国・韓国・台湾とほとんどがアジア圏で占めている。一つの例として中国を中心に約3000km(飛行機で2時間半)の円を描いてみると、東南アジアから日本までがその円の範囲に入る。その円の中で旅行先を選ぶとなると暑い東南アジアよりも四季が楽しめる日本が一番の観光大国になるというわけだ。これは韓国や台湾から見ても同じことが言える。

 また2022年に中国での冬季オリンピック開催が決まったこともあり、中国ではウィンタースポーツがブームとなっている。彼らからするとウィンタースポーツをやるときに飛行機を使って3時間以内に行ける場所となると日本が一番の候補地となるのだ。

 中国の海外旅行者数は現在総人口の約10%、そのうち日本に来ているのは4%ほど。しかし、2017年のダボス会議において習近平国家主席が「今後5年で海外旅行者数を7億人にする」と発言したことで大きな変化が生まれている。5年後の中国の人口は15億人に達するという見通しがあり、海外旅行者数7億人は人口の46%にも及ぶ。その中から10%でも日本に来てもらえるようになれば訪日中国人は7000万人となり、2030年に訪日外国人が1億人を突破することも夢ではない、と原田氏は話す。

 ただし現状の訪日外国人2000万人という数字から、5倍の1億人に増やすためには日本の産業や文化、インバウンドを受け入れるための準備が必要だ。それをこの5年間で戦略的に整備していかなくてはならない、と原田氏は強調する。



■日本が観光大国になるために必要な“3つのD”

 それではアジア圏の外国人を日本に呼び込むためにはどのような戦略が必要なのだろうか。

 まずは世代によるトレンドへの意識の違いを認識しなくてはならない。世界でも特に高齢化が進んでいる日本の平均年齢は47歳。それに比べると、アジア圏はシンガポールが40歳、フィリピンが24歳とかなり若い。つまり日本人が考えるトレンドと世界のトレンドでは世代による乖離があるということだ。

 そこで現在世界ではどのような旅行がトレンドなのかを見てみよう。まず旅行者の中心はミレニアル世代と呼ばれる1980年~2000年生まれの若い世代であり、彼らは「温泉でのんびり」よりも「アクティブ&アドベンチャー」を求める傾向にある。女子旅・女子一人旅、グルメ旅も人気のあるカテゴリーだ。また日本では考えにくいが、出張のついでに観光をする出張延長旅行が海外では大きなトレンドとなっており、出張者をどう取り込むかが勝ち組への分かれ道と言える。

 さらに社会貢献やエコ、ボランティア活動に関する旅、近年の「インスタ映え」に見られるようなフォトジェニック旅もトレンドとして挙げられる。

 これらを踏まえ原田氏は「観光大国に必要な3つの“D”」を紹介した。まず「Distinctive(独特な、際立った)」。これは象徴的な画像やイメージ、アピール力、ユニークさを指す。次に「Differentiated(差別化)」。これは競合との差別化、記憶への残りやすさを指す。最後に「Desirable(望ましい、好ましい)」。魅力あるアクティビティや、そこにいて楽しんでいる自分自身が見えることを指し、これが一番重要だと原田氏は説明する。

 例えば日本のインバウンド向けコンテンツといえば温泉や寺社仏閣めぐりというイメージがあるが、それが毎日続いてしまっては飽きてしまう外国人も多い。日本人目線による価値の押しつけでなく、実際に旅を体験する外国人の目線で考える必要があるということだろう。



■観光大国への近道は戦術より戦略

 しかし外国人目線で魅力的なコンテンツを作っても、それが外国人に届かなくては意味がない。

 そこでまずやるべきは世界の情報を集めること。具体的には世界各国で使われている検索エンジンとSNSを知ることが必要となる。検索エンジンといえば日本ではGoogleやYahoo!がメインであるが、中国では百度(バイドゥ)、韓国ではNAVERが使われていることを知っておきたい。また自社サイトを多言語対応していても、海外では検閲やファイアウォールの関係でサイトを閲覧するのに2分以上かかることもある。そのことを知らずに多言語対応したサイトを持ち続けていても効果がないのは明らかだ。

 またトリップアドバイザーに代表される口コミも非常に重要だ。世界的に見ても日本の口コミ数は少ない。日本国内で一番口コミ数の多い東京ですら、バンコクの口コミ数には及ばない状況だ。また日本の口コミはゴールデンルートに集中しており、地方に行くほど口コミは少なくなる。世界的にユーザーの多い情報発信用サイトを活用しない手はないのにも関わらず活用しきれていないのが現状なのだ。これではいくら魅力的なコンテンツを持っていてもアピールにつなぐことは難しいだろう。

 さらに旅前にどれだけ情報を伝えることができるかも大きなポイントだ。“爆買い“に代表される訪日外国人による購買、実は「何を買うか」は旅前に決まっていることが多い。旅中のソリューションばかりを考えるのではなく、旅前の時点でいかにターゲットにアプローチし勝負を決めておくことが大事なポイントだといえる。

 最後に原田氏は「インバウンドは戦術より戦略、先ほどの3つの“D”を通して自分たちの戦略を組み立て、そこから戦術としてSNSの活用、口コミ、旅前の施策をする。これが観光大国への近道ではないかと思います」とまとめた。

アジア圏の若者世代の動向を注視せよ!/インバウンド・観光ビジネス総合展

《川口裕樹/HANJO HANJO編集部》

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