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LTE常時接続がノートパソコンのスタンダードに?5G時代にクアルコムが目論む戦略とは?

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SIM PCのエコシステムを語るスピーカーたち
SIM PCのエコシステムを語るスピーカーたち 全 18 枚
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 前置きが長くなって申し訳ない。肝心の発表の目玉はSnapdragon 835というクアルコムの最新チップを搭載したWindwos 10 PCだ。採用したのはASUSとHP。ASUSはNovaGoというPC。HPはENVY x2という2in1PC(キーボードが取り外し可能でタブレットにもなる)をそれぞれ発表した。835は4G LTEに対応したワイヤレスチップを搭載したモバイルプロセッサ。ひとことでいえば、SIMが差さるWindows 10 PCということになる。低消費電力のため、バッテリーで連続20時間以上動作する、スマートフォンでいう待受時間に相当するスタンバイ状態で30日以上待機できる(NovaGo)という特徴もある。

ASUS NovaGo
ASUS NovaGo


ENVY x2の厚さは7.6ミリ
ENVY x2の厚さは7.6ミリ


 これだけで聞くと、スマートフォン用のプロセッサをモバイルPCに搭載しただけ、SIMが差さるPCは初めてではない、通信はWi-Fiがあれば十分なので、なにがうれしいのか、などと思うかもしれない。日本のキャリア事情やPC市場を考えると無理もない。しかし、SIMフリー端末が一般的なグローバル市場では、意味合いがちょっと変わってくる。

 PCがスマートフォンのようになるとどうなるのか。通常ノートPCを外でネットワークにつなごうとすると、適当なWi-Fiポイントを探すか、モバイルルータを持ち歩くか、手持ちのスマートフォンでテザリングするかとなる。接続はほぼ自動的におこなわれるとはいえ、スマートフォンのように電源ONですぐに通信が有効になるわけではない。また、待受という概念がないため、停止またはスタンバイ中はメール着信などの通知を受け取ることもできない。

 今回発表されたモバイルPCなら、連続20時間動作と30日まで待ち受け可能ということで、通信に関してはスマートフォンと同じ利便性が得られる。もちろんWindows 10マシンなので、WordやExcelなど普通の業務に利用できる。ちなみに、発表会場に展示されていた実機を操作した限りでは、普通のノートPCと同じレベルでブラウザやWordが動いた。ヘビーな使い方でどこまでパフォーマンスがでるのかは、微妙だが、スマートフォンでメジャーなプロセッサだからといって、スペックとしてPCに使えないということはない。

動画再生連続22時間。待受時間30日というPC
動画再生連続22時間。待受時間30日というPC


 また、Wi-FiではなくLTEなどのモバイルキャリアのネットワークを使うということは、セキュリティ上のメリットもある。Wi-Fiのアクセスポイントは原理的に盗聴やなりすましに対する防御が弱い。無料アクセスポイント、野良Wi-Fiと呼ばれるアクセスポイントは危険とされており、業務では利用を禁止する企業も少なくない。

 しかし、日本の場合、4G LTEの料金プランには容量制限があるので、なるべくWi-Fiにつなげるようにしている人も多いだろう。そのため、SIMが差さるPCが持つ意味が日本とグローバルでは異なる。SIMがコンビニでも変え、容量無制限プランも比較的契約しやすい海外では、PCがそのまま4G、5Gで繋がってくれればうれしいという人は少なくない。

 クアルコムでも、来るべき5G時代を見据えたチップセット、および製品だと強調している。同社の目論見では、5G時代になれば、スマートフォンだろうがPCだろうが、あらゆるIoTデバイスのプロセッサを通信チップ内蔵が当たり前になるという。スマホ化する次のPC市場で、クアルコムはインテルを脅かす存在になる可能性を持っている。

SIM PCのエコシステムを語るスピーカーたち
SIM PCのエコシステムを語るスピーカーたち


 これは筆者の私見だが、Android市場をほぼ制したクアルコムが、いよいよiPhone(通信チップにインテル製を使っている国がある)、PCの市場、加えてゲームやAIスピーカなどIoTのプロセッサ市場をとりにきたと見るべきかもしれない。
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《中尾真二》

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