ETC2.0、物流など運行管理システムの活躍に大きな期待 | RBB TODAY

ETC2.0、物流など運行管理システムの活躍に大きな期待

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ETC2.0のプローブデータ活用例
ETC2.0のプローブデータ活用例 全 3 枚
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 いまや高速道路での利用率が91%を超えるETC。カーナビと同じくらい、現代の車になくてはならないものだ。まだ知らない人も多いと思うが、実はそのETCには1.0と2.0という2つのバージョンがあり、多くの車載機が2.0対応製品となっている。ここでは2.0にはどんなメリットや特徴があるの整理してみたい。

●ETC2.0はどこが便利になったのか

 ETC2.0は、1.0の後継バージョンとして機能的な進化を遂げている。最大の特徴は車載端末が双方向通信を行えるようになったことだ。双方向通信のメリットを理解するため、まず、ETCの自動決済のしくみを見てみよう。

 料金所を通過するときにゲートには、車両やクレジットカードの情報を送信する。入口ICと出口ICの情報で通行料金を計算して、ETCカードに紐づいたクレジットカードや金融機関から料金が自動的に決済される。

ETC2.0の双方向性通信機能

 ETC2.0では双方向通信によって、ゲートに情報を送るだけでなく、車載端末側がさまざまな情報を受け取れる。つまり、料金収受の決済以外の使い方が広がるということだ。例えば、ETC2.0対応端末を搭載した車は、コネクテッドカーとして最新の道路情報や天候、サービスエリアの混雑状況などの情報を受信して利用することができる。

●プローブカーとしてのETC2.0

ETC2.0のプローブデータ活用例

 車載端末側の拡張はデータの受信機能だけではない。GPSや加速度センサなども搭載し、車両の走行状態を記録、送信できるようにもなっている。送信可能な情報は、時間と位置情報、車速、加速・減速・車の傾きなどだ。これらのデータを活用すれば、搭載車両をプローブカーとしてさまざまな用途に応用できる。まず、走行経路と移動速度がわかれば、渋滞や通行止めなどの情報に利用できる。急減速が多い場所は、危険個所、事故多発ポイントである可能性がある。

 ETC2.0対応の車載端末が、これらのデータをやり取りできるのは、高速道路上、サービスエリア・パーキングエリアや主要交差点などに設置された「路側機(通信アンテナ)」の周辺だ。「路側機」は全国の高速道路上約1,700か所、直轄国道上約2,000か所に整備されている。ETC2.0の車載端末は約80km分の走行データを保持できるので、これらの路側機ごとにまとめてデータの送受信を行う。

 路側機で吸い上げた車両の情報は、広域の渋滞情報、危険個所の情報、通行止めなどの経路情報として一般向けに配信することができる。また、渋滞予測に利用したり、道路整備・都市計画の参考にすることも可能だ。

 渋滞情報などはVICS対応のカーナビでも教えてくれるというかもしれないが、VICS情報は受信エリアが、狭いので遠方や目的地の情報は得られない。

●事業者のメリット

 運送業や旅客輸送で、ETC2.0の情報を運行管理に使う動きもある。ETC2.0によって集められる車両情報は、利用登録すれば企業が利用することができる。これらの事業者は、自社のトラックやバス、タクシーの移動記録や走行データで運行日誌を作成できる。なお、移動情報はプライバシー情報であり、個人情報にもなりうるので、車両ごとの細かい情報は、車両の所有者しか利用できないようになっている。

 トラックなどの運行管理では、デジタコなどの製品を利用したり、運行管理会社のシステムを導入したりすることが多いが、ETC2.0とそのデータを利用すれば、管理システムを構築するための初期投資が抑えられる。トラックのETCを2.0にしておけば、デジタコのような測定機器を購入して搭載する必要はない。

 また、連結トラックや特殊用途の大型トレーラーで荷物を運ぶ場合、事前に走行ルートの申請や許可が必要だが、このルート確認にETC2.0が使えるようになっている。路線バスでは、違反がないなどの優良事業者についてETC2.0装着車両の運行許可期間を延長(通常2年を4年)する取り組みも行われている。

●一般ドライバー向けの取り組み

 一般ドライバー向けには、前述した渋滞情報や道路情報、サービスエリアの混雑状況、駐車場の状況、目的地の情報といった広域情報のサービスが行われている。情報収集の範囲は、最大1000キロ先まで調べることができる。これらの情報は専用アプリや対応カーナビで利用する形が一般的だ。

パーク24とのデータ連携

 パーク24はETC2.0で集められる交通情報を利用して、駐車場混雑予想や渋滞その他を考慮したルートガイド情報を自社アプリで提供したり、別のサービス会社に配信したりするMaaS(Mobility as a Service)関連の事業を検討している。

 MaaSとは、都市計画における移動や交通の新しい考え方のひとつ。市民の移動を、バス・タクシー・電車など公共交通の枠組みだけで考えるのではなく、自家用車、レンタカー、シェアリングカー、自転車、セグウェイのような都市型モビリティまでを、サービスとして統合的に利用できるプラットフォームを構築する取り組みだ。

●ETC2.0の今後

 ETC2.0搭載車両をプローブカーとした各種の情報と、ETC2.0対応のカーナビやアプリによるコネクテッドカー機能は、MaaSプラットフォームの一角を担う存在でもある。そのため、国交省やNEXCO各社は、パーク24のような事例を今後も増やそうとしている。

 ETCは高速道路の自動料金収受だけの機能なら、1.0と2.0の大きな違いはない。直接的なメリットは一般ドライバーより、運送業や旅客輸送の事業者のほうが、いまのところ大きいかもしれないが、今後は、ETC2.0の情報を利用するコネクテッドカーの広がり、MaaSによる新しいサービスが普及していくだろう。

《中尾真二》

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