Netflixで10月23日から配信がはじまった『クイーンズ・ギャンビット』のネットでの評判だ。
※以降、一部ネタバレあり
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作品は全7話のシリーズもので、主演はエリザベス・ハーマンを演じるアニャ・テイラー=ジョイ。児童養護施設で孤独なベス(エリザベス・ハーマン)は、学業は優秀。課題を誰よりも早く終えてしまうベスは、いつも教師から地下で黒板消しを綺麗にしてくるように言いつけられる。その地下で出会ったのが、チェスと向き合っていた用務員シャイベル氏。ベスは、シャイベルのチェスの動かし方を見ただけで駒の決まりを覚えてしまう。やがて、ベスは人並外れたチェスの才能を発揮していく。
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レート未定ではじめて参加したケンタッキー州大会。受付ではどこの素人がやってきたのか?チェスができるのか?というような対応を受けるが、どんどん勝ち進む。2日間の試合日程の間、相手にならないプレイヤーと対戦し、もどかしいベスは「(もっと)強い人と当てて」と受付の男性に申し出るが、「レートを取得したら」と断られる。大学チームでトップのプレイヤーをやぶり、ついに州チャンピオンを負かす。それ以降、活躍の舞台は全米、そして世界へと移っていく。
50年代はチェスをする女性も少なく、どちらかというと圧倒的な男性社会。そこに食い込んで、だれもが想像しない勝利を収めていく姿は痛快だ。特に視聴者の心をとらえるのは、駒を進めながら相手の出方をうかがっている時のベスの視線だ。両手で顎を支え相手をじっと見つめる姿は恐ろしいまでに冷静で、目力は半端ない強さがある。カルロス・ラファエル・リブラの楽曲が、その緊迫感と強さを印象付ける。
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最初は周囲の女性からも色もの扱いされるほど冴えない服装をしていた彼女も、世界の舞台で注目を集めるにしたがって洗練された女性へ成長。どんどん美しくなっていくベスに視聴者は引き込まれるが、実は、児童養護施設の時から抱えている薬物依存の問題も見え隠れする。緑のカプセルを飲むと、天井にチェスの駒が現れる様子がしばしば登場する。
神童と言われ知名度も上がってきたベスは、マスコミのインタビューに応じる。3話のこのやりとりはある意味象徴的だ。「私は勝負事なんて許されずお人形遊びをしてた」として男性の中で勝負することの感想をインタビュアーが聞けば、ベスは「チェスは勝負事?」と意外な質問を逆になげかける。勝つことだけが目的ではなく美しいのだと。しかしその言葉には興味を示してもらえない。「64のマス目が世界のすべて。その中にいれば安全なの。自分の手で制御できる。先も読めるし傷ついても自分の責任……」とベスは話す。
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チェスを通して多くの人と出会い、ベス世界は華々しく変わっていくが、孤独さは養護施設の時と変わっていないように思える。彼女が成長するなかで、どこに明るさや関わりを見出していくのか?
最終対決はロシア。プロのチームがあり、20年間アメリカ人が勝っていないロシアでベス・ハーマンがどんな戦いを見せるのか、物語は全7回だが、わくわくしイッキ見してしまうほどだ。