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【進化するオフィス】フリーアドレス化を機にあえて増床!「執務エリアゼロ」のオフィス

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【進化するオフィス】フリーアドレス化を機にあえて増床!「執務エリアゼロ」のオフィス
【進化するオフィス】フリーアドレス化を機にあえて増床!「執務エリアゼロ」のオフィス 全 5 枚
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 フリーアドレス化を機にオフィスを縮小するケースが多いなか、あえて増床に踏み切った企業がある。大阪のIT企業、株式会社ターン・アンド・フロンティアだ。

フリーアドレス化を機に1.5倍のフロアへ移転


 同社がオフィスをリニューアルしたのは昨年夏。人員増で固定席が不足する状況になり、フリーアドレス化を検討していたタイミングで、コロナ禍によりテレワークへ移行。同時期に入居していたビル内に、それまでの1.5倍の広さのフロアの空きが出たという。現状のフロアをそのままフリーアドレス化しても、会議スペースをいくつか用意しただけの空間になってしまうだけとの判断から、あえて広いフロアへ移転。わずか数ヵ月でリニューアルを終えた。

 ビル3階の新たなフロアは、221平方メートルの空間に5つのミーティングスペースと2つの会議室を備える。また、それとは別に従来から来客用の会議スペースとして利用していた約60平方メートルの5階フロアも引き続き利用している。

テーブルとソファーを設置したスペースや、ガラス張りの会議室も用意されている


 大坂の同地域のオフィス家賃相場は、坪単価で1.2万円程度と東京都心に比べると低いものの、フロア拡大によって家賃は約4割上昇した。しかも、IT企業である同社は、業務そのものは全員テレワークで進めることも可能だという。実際に、社員・役員合わせて17名のメンバーのうち、出社しているのは半数以下。昨年の緊急事態宣言下では3、4人程度だったそうだ。

 それでも増床に踏み切った理由について、同社代表の大久保氏はこう話す。「テレワークでコミュニケーションが希薄になっていく状況を避けたいという危機感がありました。新しいアイディアやサービスは雑談の中から生まれることも多いので、リラックスしながらコミュニケーションを取れる場所を社内に確保し、『カフェに行くぐらいなら出社しよう』と思ってもらえる空間をめざしています」

執務エリアのない「コミュニケーションのための空間」


 このオフィスの大きな特徴は、デスクや椅子の並んだ一般的な執務エリアが一切用意されていない点だ。施工業者からも「執務スペースのないオフィスは初めて」と言われたという。まず目を引くのが、中央に設置された大きなテーブル。ここは人が集まりやすく、“誰かと話したときはとりあえずここに座る”といった使われ方をされることが多いそうだ。

テーブルの奥行きも広く、作業スペースをしっかり確保できる


 靴を脱いで上がるソファースペースは、リラックスしながら話せることが魅力。チーム内の会議を行うときや、休憩などでよく利用される。

広々としたソファースペースは土足禁止


 さらに、集中したい場合は窓際の席やソファーとテーブルの席を利用するなど、それぞれのニーズやその日の仕事内容に応じて自由に使い分けできる。

 内装にもさまざまな工夫が光る。建物が古いために設置されている耐震用の柱もそのひとつだ。従来はこの柱の先がデッドスペースになっていたそうだが、そこに窓際席を用意してスペースの区切りとして利用したことで、インテリアとしての存在感が生まれた。また、低めだった天井は、あえて抜いてライトを設置。広さを出すとともに、モダンでおしゃれな雰囲気に仕上げている。さらに、コンセントの数も大幅に増やし、どこでも作業がしやすい環境を実現したという。

耐震用の柱をインテリアとして生かしている


クラウドサービスを活用し、円滑な業務を実現


 テレワーク下でスムーズに業務を進めるため、クラウドサービスを積極的に活用。会社の代表番号にかかってきた電話は、固定電話をスマホで受けることのできるツール「ソフトフォン」を使って事務部門の社員が対応する。必要に応じて任意の相手への転送も行える。

 契約書には「ドキュサイン」を使用し、これまで紙で郵送していた請求書は顧客にアンケートを実施したうえで、約8割はPDFでの送付に切り替えた。さらに、勤怠管理システムの「IEYASU」を使い、Slackと連携することで専用チャンネルから出勤・退勤や休憩開始などの打刻をしたり、各社員の出社状況を確認したりできるようにしている。

 業務データもすべてクラウドに置き、会社支給のPCや個人のスマホからアクセスしている。スマホアプリについては、二段階認証や多要素認証を必ず設定するなどのセキュリティ対策のルールを設けているそうだ。

 コロナ終息後については、毎日出社するスタイルに戻る可能性は低いものの、実際に集まって会話することから生まれるものは重要という観点から、完全なテレワークに切り替えることも考えていないという。かなり思い切った選択にも思える同社のケースは、オフィスを業務のための場所ではなく、完全なコミュニケーションのための場としてとらえた新たなスタイルといえそうだ。

《酒井麻里子》

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